オタクノ作る時間

主にノベルゲームについて取り上げてきた元学生のブログ

『AIR』 クリアしたので感想を。酷評注意

 ※この記事はAIRが好きな人は読まないでください

 

Keyの名作テキストアドベンチャーゲーム、『AIR』をクリアしたので感想を書く。最初に書いておくが、ここから先に書くことは全て筆者の個人的な感想である。筆者としてもこの記事を読んで作品のファンが不快な思いをするのは本意ではないので、この作品が好きな人はこの記事を読まないでほしい。

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筆者はこのゲームと同じライターさんが手掛けた『CLANNAD』が嫌いだったため、おそらくこの『AIR』も自分には合わないだろうと、プレイするのを避けていた。しかし、もしかしたら『CLANNAD』以外の作品は楽しめるかもしれない。一本だけでKey作品を見限るのはもったいない。そう考え、さらに今年になってPSVITAに移植されたこともあったので、食わず嫌いをやめて購入してみた。つまり今回は『CLANNAD』の時のような高騰した期待はなく、楽しめたらいいな~くらいの気持ちでプレイしたのだ。そして悟った、筆者にはKey作品は合わない。水と油だ。もう二度とプレイすることはないだろう。というか、『CLANNAD』の時は自分が嫌いだったとはいえ、評価する部分や作品のクオリティの高さに納得できたのだが、この『AIR』に関しては評価されていることが理解できない。『AIR』に比べたら『CLANNAD』ですら100点だ。今までプレイしたノベルゲームの中でもワースト3に入るつまらなさである。

 

作中登場するヒロインは全員、精神年齢が異様に幼い。そしてライターさんの考える彼女たちのギャグ的な “可愛い天然セリフ” がすべて寒い。萌え要素もここまで来たら気持ち悪い域に達している。行動原理が理解不能なので、彼女らに感情移入することは不可能。したがってプレイヤーは長時間のプレイ時間を、ひたすら言動も思考もおかしい理解不能のヒロインと過ごす羽目になる。これが非常にきつい。しかもそれぞれのヒロインに用意されたシナリオは全て、理不尽な理由によって悲劇に合う、ただそれだけの内容である。人の死とか病気を泣かせのために使っている製作側の意図が見え見えで興ざめする。描かれる悲劇に必然性を感じないのだ。さらには一つ一つの描写が全て説明的で冗長、語り口も壊滅的に下手である。“主人公やヒロインの母親はこんなにもヒロインのことを想っているのです!”ということを一方的に延々と書いてあるだけの文章が多すぎる。たとえばヒロインの母親が「あんたのために何日も家の前で土下座してきたったわ」みたいなことを言うシーンがあるのだが、本当に相手のことを考えているのなら、こんなふうに相手が引け目を感じるようなことは言わないだろう。この辺も超絶的に下手だな~と思った。さりげない描写で愛情を感じさせるように工夫してほしい。親子愛をテーマにしたかったのはわかるが、非常に表層的でペラペラ、こんなので泣けるわけがない。特にラスト辺りはキャラクターが完全にライターさんの思い描くストーリーの駒として動かされている感じがして、全然生きているように見えなかった。最低だよ。

 

また全体通して謎のファンタジー要素が多く、リアリティラインがどのあたりまで引かれているのかが分からない。だから、いわゆる奇跡的な展開が起こっても、驚けばいいのか、それとも黙ってそれとして受け入れればいいのか悩まされる。ようは話に乗れないのだ。人と仲良くなると体が病んでいくという、理由も原因もわからない運命を抱えたヒロインとの命を懸けた恋愛。そんな字面だけの悲劇を見せられても、頭の中は常にクエスチョンマークである。そしてその原因が平安時代?の頃の自分たちが呪いをかけられ、その呪いが輪廻転生を経て現代にも残っていたからとだいうことがわかるのだが、そのことが明かされるのは中盤を超えて終盤に差し掛かる前くらいなのだ。そこまでが前ふりなの?長すぎるだろ!ずっとわけがわからないまま読み進めるしかなかった。 輪廻転生の話なんだから、現代と過去を交互に見せれば、現代でも展開に置いてけぼりにされないようにできたと思うのに…下手だな~。

 

そして何より酷いのが、メインヒロインは過去から連なる運命の呪いに多少あらがったものの、悲劇的なラストを迎えるところだ。結局は運命に流されるままで終わるのである。生まれ変わったらそれでハッピーなの?違うだろ。この理不尽さで感動させようという意図だったとすれば、それは泣かせ方として最低だ。というか、そんなんじゃ泣けない。千年近い時を超えた物語なんだから、その永い時をずっと耐え続けたヒロイン達の一貫した想いが残酷な呪いを打ち破る話が見たかった。苦難を経て逆境を乗り越えるのがこの手のゲームの醍醐味だと思うのだが…。まあ『AIR』のキャラクター達はみんな魅力がなく、思い入れもないから、『CLANNAD』の時みたいに胸糞悪い思いはせずに済んだのだけど。どうなろうが知ったこっちゃないのである。

 

まとめ。

今までプレイしたノベルゲームの中でもワースト3に入るクソゲーである。無駄に長いので途中で何度も投げ出しそうになったが、なんとかラストまでたどり着けた。正直、金と時間を返してほしい。良かったのは音楽と声優さんくらいだ。あとまあ正直に言えば、西村ちなみさん演じる神奈と井上喜久子さん演じる裏葉の微笑ましい掛け合いは好きかな。だからこの掛け合いが見られる過去編だけは楽しめなかったこともない。しかし『CLANNAD』のリベンジとしてプレイしたが、『CLANNAD』のほうが百倍面白かった。というか、あっちは喜怒哀楽、様々な感情を味わわされたが、こちらはひたすら退屈なだけである。これからプレイしようと思っている君、やめとけ。オープニング曲『鳥の詩』を聞くだけのほうが確実に良い。全体的に曲は素晴らしいから。

というわけで、読んでくれてありがとう!

 

 クラナドの感想↓

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劇場版の感想↓

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007シリーズ初心者が年代順に観て感想を書く! 60年代編

世界一有名なスパイ映画、『007シリーズ』を観たことがない!そんな状態から抜け出さなければならないと唐突に思い立ち、これからシリーズ全作品を年代順に観て感想を書く。まずは60年代の作品から。

 

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1.『007 ドクター・ノオ

1962年公開の記念すべき007シリーズ映画化第1作。冒頭から自分を狙う敵を銃口越しに射撃するシークエンスと、お馴染みのテーマ曲を確認することができる。既にその後のお約束は出来ていたようだ。

007ことジェームズ・ボンドを演じるのは当時32歳のショーン・コネリー。画面に映る姿をひとたび目にすれば、彼のセックスシンボルたる理由がすぐにわかる。なんというか、今の32歳にあの色気はない(笑)。彼の演じるボンドは非常にセクシーで、女の口説き方やセリフ回しなんかはめちゃくちゃカッコいいわけだが、いろいろ隙だらけである。寝室に毒蜘蛛を仕掛けられただけで大汗かいたり、割とあっさりと敵に捕まってしまうのに驚いた。

この映画、シリアス路線なのかギャグ路線なのかいまいちよくわからない。クールなセリフ回しやカッコいいカーチェイスがあると思いきや、忍者の様に竹で呼吸しながら水中に隠れるシーンなど、笑ってしまう場面も少なくない。それに話の骨格自体が、“アメリカのロケット打ち上げを邪魔する謎の博士を倒す”という、SFなのか何なのかよくわからないものだ。「博士のいる島にはドラゴンがいる!」なんてことを登場人物たちに大真面目に話されては、観ていてこの上なく困惑する。これってB級映画なのか…?と。

結論、古さは感じるが退屈ではない。トンデモ兵器や敵のボス ドクター・ノオのキャラクターなどが楽しいし、孤島に潜入というスパイ映画の基礎が確認できた。原点に触れるという意味では良かったと思う。ただ古い映画が苦手な人にはオススメしないかな。脱線するが、ブルース・リーの『燃えよドラゴン』ってこの映画が元ネタなのかな?ドクター・ノオの義手パンチとか、孤島の感じなんかが似ている気がしたが…。

私的評価:★★★★★☆☆☆☆☆ 5/10

 

2.『007 ロシアより愛をこめて

1963年公開の007シリーズ映画化第2作。前作でその存在が示唆された犯罪組織「スペクター」がボンドをイスタンブールに誘い出す。ボンドは東側の女性エージェントと接触し、罠と知りつつそこに飛び込んでいくのだが、そこにはスペクターの刺客が待ち受けていた…という緊張感のあるストーリー。

この映画は前作と違って、はっきりシリアス路線だ。ドクター・ノオのようにSF的な要素はなく、様々なロケーションでのアクションに満ちた映画である。明らかに前作より予算が増えている気がするのだが、どうなのだろう。またボンドガールと呼ばれるヒロインがストーリーの核として登場するのもこの2作目からじゃないだろうか。個人的に興味深かったのが、本作ではまだ顔が見えないスペクターのボス No.1のキャラクターだ。ペルシャ猫を撫でるボスの元祖はここにあったのかと純粋に驚いた。

見どころはスーツケースやナイフ付きの靴などのカッコいい仕掛け武器、ヴェニスの街並みを颯爽と駆けるショーン・コネリー、そしてなんといってもオリエント急行内でのアクションだ。そこで刺客と決着をつけるのだが、狭い車内での駆け引きは少し目を離せば終わってしまいそうで、常に緊張感がある。

結論、前作より面白い。イスタンブールから始まり、オリエント急行に乗り、ヴェニスで終わるというロードムービーのような趣も良い。ただ相変わらずボンドは罠にはまり過ぎな気がする。この映画、4回くらい敵に見逃してもらっているんじゃないか?(笑)もしかして007ってそんな感じなのか…。あともう一つ笑ってしまったのが、いわゆる「冥土の土産に教えてやろう!」っていうやつが長すぎること。もちろんこの映画からテンプレになっていくんだろうけど、やはり今見るとギャグになってしまっている。喋ってないで撃て(笑)。有名な話だけど、某有名SFアニメの音楽は絶対にこの映画の音楽のパクリだよね…。

私的評価:★★★★★★★★☆☆ 8/10

 

3.『007 ゴールドフィンガー 』

1964年公開の007シリーズ映画化第3作。金塊の密輸で財を成す富豪 ゴールドフィンガーの陰謀をボンドが阻止するお話。まだ3作しか観てないけれど、今のところはこの映画が一番好きだ。シリアスだった前作と異なり、1作目のようなアホな(褒めてます)映画である。そしてそれが非常に楽しい。

冒頭がまさにスパイ映画といった様相でワクワクさせられ、さらにオープニングがボーカル付きになってオシャレ感が増している。この時点で期待は相当のもの。それからいつものように出会ったばかりの女とすぐに肉体関係を持つボンド…自重しないなあ(笑)。そして5000ポンドの金塊を賭けてゴルフをしたり、ホーミング性能が異常な殺人山高帽を使うアジア人がいたり、金粉まみれで女が殺されたり、とにかく記憶に残るシーンのオンパレードである。この荒唐無稽さが良い。秘密兵器を積んだ車で戦ったり、暗闇の中で敵のアジトに潜入したりと、昔のルパン三世のようなクールさがある(もちろんルパンのほうがフォロワーなんだけどね)。アクションや敵地への潜入シーンが多いから、なんというか、筆者が007に対して抱いていたイメージに今のところ一番近い映画だった。

3作目にしてようやく悟ったのは、ジェームズ・ボンドは無敵系のキャラではなく、簡単に捕まってしまったりするキャラだということ。窮地を乗り越える系のキャラなのね。観るまでは油断も隙も無いキャラだと思ってたんだけど、そうでもなくて、相手がゴルゴ13とかだったら何度も死んでるような気がする…。

結論、今のところ一番好きな007だ。笑顔でボンドを圧倒する山高帽男の存在感が異常である(笑)。バカバカしくて非常に楽しい。凄くクールでオシャレな映画なので、大満足である。そしてまだ3作目だけど、もうショーン・コネリー以外のボンドは受け入れがたいかもしれない。

私的評価:★★★★★★★★★☆ 9/10

 

4.『007 サンダーボール作戦

1965年公開のシリーズ第4作。犯罪組織スペクターが原子爆弾を強奪、それと引き換えに1億ポンドを要求してきた。英国情報部は原子爆弾を捜索する サンダーボール作戦を実行、007たるジェームズ・ボンド原子爆弾の捜索に向かうのだった…というストーリー。前3作と違って画面がシネスコサイズになったことで見やすくなった。また前作と異なり、再び『ロシアより愛をこめて』のようなシリアス路線に戻っている(とはいえギャグっぽいシーンもあり、脊椎牽引装置で殺されかけるボンドには爆笑した)。

本作の特徴はシリーズ初の水中戦だろう。銛を発射する水中銃が大活躍する珍しい映画で、酸素ボンベをつけながら水中を駆けまわるボンドは、なかなか見ごたえがある。また人喰い鮫との攻防など、水中独自の緊迫感が良く出ている。水の中って、見ているだけで苦しいからね。ゲームの水中ステージも謎の怖さがあるし。

全体を通して派手なアクションが満載で良いのだが、前作『ゴールドフィンガー』の荒唐無稽な楽しさの後に観ると退屈する。良い意味でアホなシーンがないのが残念だった。良いところいえば、女性陣がエロいのと、敵の女を盾にするボンドの悪党ぶりかな。

結論、あまり書くこともない。前作、前々作が非常に面白かっただけに期待外れだった。この映画、130分あるんだよね。他のは大体2時間ジャストか110分くらいだったから、もう少しスリムにしてくれればもっと良かったかも。それはそうと、スペクターの幹部やストーリーの要所要所に日本人が登場するのが興味深い。当時の日本は高度成長期だし、勢いがあったんだろうな。

私的評価:★★★★☆☆☆☆☆☆ 4/10

 

5.『007は二度死ぬ

1967年公開のシリーズ第5作。米ソの宇宙船を捉える謎の飛行物体を捜索するため、その発射台の存在が疑われる日本へと007が派遣される…というストーリー。前4作でもちょいちょい日本が出てくるな~とは思ってたけど、なんとこの映画の舞台は日本! まさか浴衣を着て団扇で涼むジェームズ・ボンドを見る日がくるとは思わなかった…。

ボンドが日本に上陸するとアサヒビールのネオンが映し出される。そして内通者との待ち合わせ場所は国技館。ほんとにボンドが東京にいる!と、思い知らされる場面である。筆者のような世代には、生まれる遥か前、1960年代の街並みがありのままに描かれているところがまず面白い。60年代の日本の魅力を様々な角度から堪能させてくれる。そして当時のありのままの日本に加えて、欧米から見た日本のイメージも両立しているのが良い。おかしなシーンは多々あるんだけど、今となってはそれも不思議な魅力になっていると思う。

この映画はたぶん『ゴールドフィンガー』以上のバカ映画だろう。もう漫画みたいな話だ。日本の火山口にスペクターの秘密基地があったり、そこを制圧するのも日本の忍者部隊だ。忍者部隊だよ? もう手裏剣とか投げ出したときには笑っちゃったぜ。髪形を変えたり着物を着たりして日本人に変装するボンドなんかも、どう見ても日本人とはかけ離れてて、笑わないほうがおかしい。というか身長188センチのショーン・コネリーが当時の日本の街並みにいるだけで、『テルマエ・ロマエ』みたいな面白さがあるんだよね。

結論、書くことが多すぎる(笑)。だからもう、実際に自分の目で観てほしい。仕掛け満載のヘリでの空中戦とか、空撮で上から撮った格闘シーンなんかは迫力満点だ。また個人的に『砂の器』以来の丹波哲郎が、ショーン・コネリーに勝らず劣らずの存在感を発揮していたのが素晴らしいと思った。それにシリーズ通して見ても、スペクターのボスが初登場する作品だから避けては通れないと思う(ドナルド・プレザンスだったのね…)。

私的評価:★★★★★★★☆☆☆ 7/10

 

6.『女王陛下の007

1969年公開のシリーズ第6作。ジェームズ・ボンド役がショーン・コネリーからジョージ・レーゼンビーに交代。そして2代目ボンドが見られる唯一の作品である。ショーン・コネリーが見事なボンド像を示してくれたため、主演の交代は不安視していたんだけど、ジョージ・レーゼンビーのボンドもなかなか良い。セクシーさが少々足らないものの、アクションがキレキレで、特に格闘における投げ技は見ごたえ抜群である。たった一本で2代目ジェームズ・ボンドの称号をものにしただけのことはあるぞ。

この映画、前作とはまた方向性が違い、『ロシアより愛をこめて』や『サンダーボール作戦』のようなシリアス路線である。そしてシリアス路線作品の中でもより一層シリアスで、007らしからぬラストにはかなりの衝撃を受けさせられる。

全体を通して評すると、序盤から中盤にかけては最高に面白いのだが、残念ながら途中からダレてくる。というか前作の一件でボンドとスペクターのボス ブロフェルドは面識があるのに、どうしてこの映画ではお互いに顔を知らないんだ? まさか俳優が変わったからとは言うまいな…。

結論、惜しい作品だ。ボンドの格闘シーンや雪山でのスキーチェイス、そして衝撃のラストといった見どころがたくさんあるものの、プレイボーイを読みふけるボンドの間抜けな絵面が象徴するようなガッカリシーンも少なくない。一番の不満は長すぎること。2時間20分は長い。もう少しコンパクトにしてほしかった。そしてボンドカーなどの007ならではの魅力に乏しいのも残念だ。あと女王陛下が出てこないじゃん…なんでこのタイトル?って疑問も残る。しかし007シリーズにおいて欠かせない作品だと思うので、必見の一本だ。余談だが、『インセプション』の元ネタだとわかったので、そういう目的で観るのもありだと思う。

私的評価:★★★★★★☆☆☆☆ 6/10

 

60年代作品の総論。

シリーズ第1作から第6作まで観たわけだが、ようやくこのシリーズがどういう感じなのか掴めた気がする。最高に面白かったのが『ゴールドフィンガー』、バカバカしくて楽しいのが良い。そして『007は二度死ぬ』も作品の良し悪しは別にして、何度も繰り返し見たくなる楽しい映画だと思う。正直『ドクター・ノオ』を観た時は、こういうのが連続するとシリーズ制覇がつらいと思ったのだけど、『ロシアより愛をこめて』はすぐにそんな気をなくしてくれた。そして『女王陛下の007』が思ってたより面白かったから、ショーン・コネリー以降の007にも期待しようと思う。

興味深かったのが映画における日本の存在感。『007は二度死ぬ』ではもはや舞台になってしまったわけだが、それまででも白人たちの中に姿を見かけるので、日本の経済成長、そして世界において日本が認められていく過程を見た感じがする。この頃の欧米人は“東洋の神秘”を信じていたのかな。それからもはやエンターテインメントで使い古されたテンプレの原点が見られたのも感動ものだ。これからもどんどん007を観ようと思う。

 

以上、読んでくれてありがとう。時間がかかるかもしれないけど、全作感想を書くのでお楽しみに!

『インファナル・アフェア』3部作、ネタバレ抜きで紹介。

香港ノワールの大傑作『インファナル・アフェア』シリーズを観た。筆者は香港映画に対して、単純明快・少年漫画的・ツッコみどころ満載というイメージを持っていたのだけれど、このシリーズは違った。様々なキャラクターの思惑が交錯する人間ドラマが描かれた、非常に緻密な映画である。その凄さに驚くとともに個人的にも気に入ったので、今回はこの『インファナル・アフェア』トリロジーを紹介しようと思う。それでは。

 

1.『インファナル・アフェア

インファナル・アフェア [DVD]

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1作目は2002年公開のスパイもの。警察でありながら黒社会に潜入捜査している男(トニー・レオンが演じる)と、黒社会に属しながら警察に潜入する男(アンディ・ラウが演じる)の戦いを描いている。警察と黒社会、双方にスパイが潜り込んでいるという設定がすでに面白いが、この映画の良さはそのアイデア一発に終始しない。冒頭から提示される“無間地獄”という宗教的なテーマを取り込んでいることで、単なるサスペンス映画ではなく、実に深い映画になっているのだ。また全編通してアクションが少ないにも関わらず、しっかりとドラマで楽しませてくれる点は見事である。

敵の組織に潜入し、その正体がバレてしまうのではないかという怯え・不安を抱えながらも、それを誰にも明かすことのできないという圧倒的な孤独。潜入捜査する中で得た敵組織の仲間との絆、そして自分がそれを裏切り続けてきたという罪悪感、揺れ動く心。果たして本当の自分はどっちなのか。逃れることを許されない無間地獄。スパイvsスパイ、内通者vs内通者、2匹のイヌの心理戦をぜひ楽しんでほしい。

 

2.『インファナル・アフェア 無間序曲

インファナル・アフェア II 無間序曲 [DVD]

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1作目が大ヒットしたことにより翌年の2003年に公開された続編。2匹のイヌが内通者となるに至った経緯、そして彼らの運命をかき乱す黒社会の抗争を、香港返還という大きな時代の流れの中で描いた重厚なマフィア映画である。当初から予定されていたのかどうかは微妙なラインだが、この続編の製作と共にシリーズが3部作であることが発表された。そしてこの2作目は1作目よりも過去の時代を描いた前日譚になっている。

ここまでの概要でもう気づいた人もいると思うが、このシリーズは『ゴッドファーザー』の影響下にある。単体の映画に続編をつけて3部作にしたこともそうだし、2作目の話自体も『ゴッドファーザー』に酷似している。とはいえ、この作品ならではの味があるから劣化コピーとは思わないのだが。

この続編、スパイものだった前作と全然違う作風であるために初見はかなり驚いたのだけれど、これが非常に面白い。安易に前作と同じことをしなかったところに好感が持てる。それにジャンルは変われどテーマは受け継いでいるから、ちゃんと続編の意味がある。商売のためだけの続編とは格が違うぞ。また“過去編”というと、その後の展開が決まっているからイマイチ盛り上がらないというジレンマがあるけど、この映画は結末が分かっているからこその切なさが見事に描かれている。これが実に上手い。そして筆者は香港映画の役者さんって全然知らないんだけど、この映画では役者さんたちが素晴らしい演技を見せてくれて、もうファンになりそうだ。

若き日に犯してしまった罪。無間地獄の序章、全ての起点となる物語をぜひ楽しんでほしい。

 

3.『インファナル・アフェアIII 終極無間

インファナル・アフェア III 終極無間 [DVD]

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1作目のその後を描いた続編にしてシリーズの完結編。しかしこの完結編を紹介するには1作目のネタバレを避けられないため、あまり詳しくは書かないこととする。ただ大雑把に所感を書くなら、これもまた1作目や2作目と違うジャンルの映画になっていながらも、しっかりとテーマを引き継いだ面白い映画だ。特にラストはシリーズの締め方としてこれ以外になかったと思う。

シリーズ最終章、無間地獄に陥った男の最後を見届けてほしい。

 

ところで、この完結編が1作目のその後を描いているので、すなわちシリーズを時系列順に並べると2→1→3という順番になる。しかしここで忠告しておきたいのだが、このシリーズは1作目から順番に観た方が楽しめる構成になっていると思うので、初見の人は素直に1→2→3という順番で観てほしい。時系列順に観るのは少なくとも2回目からにすべきだと思う。

 

まとめ。

というわけで『インファナル・アフェア』トリロジーを紹介しました。3部作の全てがちゃんと面白いシリーズって実はかなり少ない気がするんだけど、どうかな? 面白いだけでなく、数年で3部作の全てを撮影したために、作品毎に役者が変わっていなかったり、映像技術が異なったりしていないのが嬉しい。この映画の基となったであろう『ゴッドファーザー』は大好きな映画だけど、制作年に開きがあったりギャラの問題で役者が出演してくれなかったりといろいろ制作側の問題が見えてしまって萎えるところがあったからね。

そういう意味でものすごく感動したし、楽しかった。

 

ではでは、読んでくれてありがとう!

レンタルして観てね(^^)