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オタクノ作る時間

バイトと学校を除くとほぼ引きこもってる学生のブログ。主に映画の感想とノベルゲーの紹介。週一更新から不定期に移行。

『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』ネタバレ抜きで感想を。

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スター・ウォーズシリーズ初の実写スピンオフ映画、『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』を早速観てきたので感想を書く。最初に書いておくが、この記事はネタバレを避けているけれど、“どんな作風だったか・シリーズとしての位置づけはどうか”という部分は多少触れる。そして前情報くらいのネタバレ(公開前に分かってた範囲)も含むので、予備知識を一切入れずに本編に臨みたい人は、ここでお引き取りください

 

れでは、ローグワンの感想を以下に…

結論から言おう。この映画、最高に面白かった。もう2時間テンション上がりっぱなしでどうしようかと思った。というわけで、もうここで書いちゃいます。

スター・ウォーズ』が好きなら迷わず劇場に行け!

…うん、それに尽きる。遠い昔、遥か彼方の銀河系の世界観がきちんと広がるし、みんなが期待していた、エピソード3とエピソード4の間の補完が見事に果たされている。さらにはそこにとどまらず、旧三部作で主人公ルークたちが背負った“新たなる希望”の重さを明確にもしてくれる。素晴らしかった! この作品を見てからエピソード4を見ると、今まで以上に強い思い入れで物語を楽しめるだろう。

そしてこの映画はスピンオフだから、いわゆるスターウォーズの歴史においてその名を残した英雄たち(ルークやハン・ソロなど)が主人公ではない。しかし歴史において名を刻んでいなくても、誰に知られることもなく散っていった名もなき人たち(この映画の主人公たち)の勇気があったから、ルークたちがその希望を継ぐことができたのだと教えてくれる。結果として、シリーズ全体がより重厚になったんじゃないだろうか。本編で描くには重すぎるから、スピンオフという媒体をうまく生かした映画だと思った。

 

ローグワンは完全にファンによるファンのための映画になっていて、それはもうジョージ・ルーカスの手を離れた時点でわかりきってたと思う。スターウォーズが大好きな新進気鋭のクリエイターたちが作った第二世代のスターウォーズだから、ファンによるファンのための仕掛けがこれでもかというほど仕込まれていて、だからファンが観ると最高に楽しい。驚きの仕掛けがたくさんあるし、過去シリーズとの繋がりも自然で(なんとクローン・ウォーズの要素もある)ダース・ベイダーがスクリーンに映るだけでテンションは最高潮。そしてこれは実際に自分の目で確かめてほしいんだけど、ビックリするような人も出てくるから楽しみにしてほしい。エピソード7ではほとんど触れられなかった新三部作との繋がりも見れるし、まさにスターウォーズ!という感じだ(意味不明)。ドニー・イェンの棒術も堪能できるし、言うことなし。みんな、エピソード4を復習してから観に行こう!

 

というわけで、即席で書いた感想でした。みんなが早く見てくれないとネタバレできないよ~(ノД`)・゜・。

科学ADVシリーズ第1段『カオスヘッド』を紹介【ネタバレなし】。

 ※紹介するゲームは一部、18歳以上対象のものを含みます。

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プレイステーションヴィータ用ソフト『CHAOS;HEAD DUAL』をクリアしたので感想を書く。実はこのゲーム、様々なハードに移植さえているうえに、筆者自身もPSP版とXBOX360版で既に体験済みであった。なので今回はゲームの感想に加えて、筆者が知りうる限りのハード別の比較なんかも書こうと思う。なお、ネタバレを抜きにするためにストーリーの深いところにまでは言及しない。だからこのページは、まだこのゲームに触れたことがない人向けになると思う。このページを見て『カオスヘッド』に興味を持ってもらえたらうれしい!

 

カオスヘッドデュアル』は妄想科学アドベンチャーCHAOS;HEAD NOAH』とそのファンディスク CHAOS;HEAD らぶChu☆Chu!』の2本を収録したPSVITA用ソフトである。それでは、以下に『CHAOS;HEAD NOAH』と『CHAOS;HEAD らぶChu☆Chu!』の感想を書こう。

 

CHAOS;HEAD NOAH』

 

CHAOS;HEAD NOAH』は渋谷を舞台に、キモオタの高校生 西條拓巳が「ニュージェネレーションの狂気」と呼ばれる連続猟奇殺人事件に巻き込まれていく姿を描いたサイコサスペンスである。ゲシュタルト崩壊夢遊病・乖離性二重人格・集団ストーカーといった精神的に追い詰められる要素を多く含み、それらが執拗かつ詳細に描かれるテキストは、読む者の心に重くのしかかる。このテキストだけでも十二分に追い詰められる内容なのだが、もちろん視覚からくる直接的な残酷表現(グラフィック)にも力が入っていて、生理的な嫌悪感も満載。主人公が世間から隔絶された引きこもりであり、なおかつ「妄想」をテーマにしていることから来る“誰にも助けてもらえない”という閉塞感や絶望感、どこまでが妄想でどこからが現実なのかわからなくなる恐怖演出を楽しもう。

このゲーム、非常に独特な魅力を持ったゲームであるため、唯一無二の作品と言える。だからギャルゲーだと思って気軽にプレイすると大変な目に合うということは、ここにちゃんと書いておきたい。同ジャンルであり続編の『カオスチャイルド』とも似て非なるものであり、こちらのほうが主人公が孤独かつ閉塞感がある。特に、BGMをあまり使用せず、“人々の囁きや・環境音・PCの駆動音” といったノイズを強調する音響演出が、孤独感を尋常じゃなく盛り上げてくるのが凄い。たまには劇薬に触れてみたい人や追い詰められる恐怖に浸りたい人はぜひともオススメである

…と書いたが、追い詰められる恐怖に浸りたい人なんて、まあいませんわな(笑)。もう大体わかっていると思うが、このゲームはプレイしていて非常にしんどい。本当にひたすら精神的に追い込まれる話だから、非常に人を選ぶ内容になっている。筆者自身も今でこそ好きなゲームの一つになっているけど、初見の時は「誰得だよ…」と思った。よっぽどのマゾじゃないと喜べないだろ…と。しかし安心してほしい。本作は終盤に進むにつれてヒロイックな展開になっていくので、読後感が意外に爽やかだ。わりとイライラさせられるシーンも少なくないので難しいかもしれないが、最後までたどり着ければそれなりに満足できると思う。

…とはいえやっぱり、自分が好きでも他人に勧めるべき内容ではない。しかしこのゲームは傑作『シュタインズ・ゲート』などと世界観を共有する科学アドベンチャーシリーズの第一作であるため、シリーズ全体を通して楽しみたいのであれば、決して避けて通ることは出来ない。それに続編にあたる『カオスチャイルド』が本当にガチでマジの傑作なので、本作はプレイしておいたほうが良いと思う。つまりカオスチャイルド』を楽しむためにプレイするのがオススメです

 

CHAOS;HEAD らぶChu☆Chu!』

CHAOS;HEAD らぶChu☆Chu!』は『カオスヘッド』のファンディスクである。“典型的なギャルゲ”の要素を(ギャグとして)過剰なまでに詰め込んだゲームになっており、凄惨な本編とのギャップがプレイヤーを笑わせてくれる。サイコサスペンス的な方向で壊れたヒロイン達と、まさかのラブコメを楽しむことができるので、重苦しい本編を終えた後にプレイすると最高に笑えるし、救われる(笑)。また、ユーザーインターフェイスや音楽、ポップな演出などにも力が入っており、ファンディスクとしての完成度も非常に高い。さらには “ファンディスク”と銘打ちつつも、実質的にはカオスヘッド 完結編』とも言えるほどしっかりしたストーリーが展開される。だから本編、あるいはシリーズのファンであるならば、必プレイの一本だ。筆者はこのたび初めてCHAOS;HEAD らぶChu☆Chu!』をプレイしたのだが、何度も爆笑したし、非常に楽しかった。本編を愛せるようになって、キャラにも愛着を持てるようになってからプレイするべきだろう。ただ15時間ほどで終わってしまうのと、個別ルートのボリュームが少ないのは残念である。

筆者は萌えアニメなどを気持ち悪がってるタイプの人間だったのに、いつの間にかこういうゲームをニヤニヤしながらプレイする人間になっていたなあ…( ̄▽ ̄)

 

最後に『CHAOS;HEAD NOAH』のハード別の違いを筆者が知っている限り書く。

 ↓ 左からPSVITAXBOX360PSP

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まず最大の違いは、XBOX360版とPSVITA版が18歳未満お断りなのに対して、PSP版とPS3版は誰でもプレイ可能である。なのでもちろん18禁バージョンと全年齢バージョンには表現の違いがある。具体的に言うと18禁バージョンにある残酷・ゴア表現が全年齢版ではカットされているのだ。だから内容的には18禁バージョンが無修正かつノーカットにあたるので、筆者としては18禁バージョンをお勧めする。全年齢版では過激表現のカットによって話が分かりづらいうえに、そういう表現が苦手な人がプレイできるほどマイルドになってもいない。つまり中途半端な規制なので、わざわざ残酷なこのゲームを遊んでみたいと思った人であれば、迷わず18禁バージョンをプレイするべきである。あ、もちろん18歳に達してない人はダメだよ?(笑)

そして当たり前の話だが、据え置き機であるXBOX360版は大画面でプレイすることができるうえに、解像度が最も高い。ハイビジョンかつドルビーデジタルにも対応しているから、最もリッチなゲーム体験ができると思う。しかしこのXBOX360版にはシステム面に致命的な欠点がある。二周目以降の既読スキップの速度が異様に遅いのだ。これによって周回プレイが非常に面倒になっているので、筆者はあまりお勧めしない。どうしてもテレビでプレイしたい人には反対しないが…。

次はPSP版だが、こちらはゴア表現が規制されているものの、XBOX360版の後に発売されたこともあり、システム面が快適化されている。スキップ速度が快適なレベルにまで向上したし、その他の部分にも細かな快適化が施された。しかし筆者は初見がこのPSP版だったため、それでも操作性が悪いと思った。というのもPSPはハードの性能上、UMDの読み込みの長さと騒音がなかなかに煩わしい(これらの点はDL版とかなら問題ないと思う)。

PS3版は申し訳ないがプレイしていない。しかし聞いた話では、規制済みのバージョンが大画面でプレイできるそうだ。同じく据え置き機であるXBOX360版と違ってスキップ速度も快適であり、非常にカッコいいオープニング映像が追加されてもいる。表現規制の問題はあるが、大画面でプレイしたいのであれば選択肢としてありだと思う。解像度や音響も申し分ないはずだ。

最後にPSVITA版。こちらはXBOX360版をベースに、PS3版のオープニングやスキップの快適化、ショートカットなどを追加してある。PSVITAのソフト自体がディスク媒体ではなくカードリッジなので、スキップ速度はおそらく最速。二周目以降のスキップ待ち時間が非常に短くなって快適だった(初見とそうでないという差はあるものの、PSP版はクリアまで40時間、PSVITA版は23時間だった)。筆者的にはPSVITA版をお勧めするのだが、PSVITA版は、立ち絵が切り替わる際に処理が遅れるという大問題も発生している。実は筆者もこれが原因でなかなかPSVITA版に手を出せなかった。Amazonレビューなんかでも問題視されていたからだ。しかし擁護しておくと(他のゲームを酷評してるのに致命的なバグを擁護するのもどうかと思うが)個人的にはそんなに気にならなかった。というのも、立ち絵とテキスト表示が遅れても、音声は問題なく流れるので、一時停止で待たされるわけではないからだ。とはいえまあ、良くないことには変わりないが(ちなみにCHAOS;HEAD らぶChu☆Chu!』のほうは何の問題もないので心配なし)。

要するに、PSVITA版がオススメです!

 

というわけで『カオスヘッド』の紹介でした。読んでくれてありがとう。

 

 

 科学ADV第2段↓

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科学ADV第3段↓

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科学ADV第4段↓

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007シリーズ初心者が年代順に観て感想を書く!ダニエル・クレイグ編

当ブログでは007初心者の筆者がシリーズの作品を年代順に観て感想を書いている。今までは70年代、80年代と年代別にページを分けて書いていたんだけど、前の記事からは俳優別にページに分けて感想を掲載した。そのほうが分かりやすいと思ったからだ。とういうわけでこのページではダニエル・クレイグの007の感想を取り扱う。ネタバレを含んでいるので注意してほしい。

 

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21.『007 カジノ・ロワイヤル

2006年のシリーズ第21作にして初のリブート作。6代目ボンドを演じるダニエル・クレイグの007デビュー作でもあり、それまでの作品群とは設定の異なる新たなシリーズの出発点として、007となった直後の若きジェームズ・ボンドが描かれる。いわゆる前日譚、エピソードゼロというやつである。ダニエル・クレイグの演じるボンドは金髪で青い目が特徴的な、歴代でも異色のボンドだ。007になりたてという役どころもあるのだろう、まだまだ粗暴で余裕がない。個人的にボンドのイメージ像と異なるダニエル・クレイグだったが、リブートされたボンドとしてみるとなかなか良い。プーチン大統領のような怖い顔立ちも、有り余る筋肉も、若くて粗暴なボンドにピッタリである。これはこれでありというやつだ。

この映画、普通に面白かったのだが、これって007か?と何度も首をかしげさせられた。前日譚ということで今までの“お約束”はほとんど登場しないし、何よりボンドが孤独すぎる。物語の中でまだ出会っていないために、マニーペニーやQといったお馴染みのキャラクターが出てこないのだ。そしてハイテクなガジェットも全然登場しない。う~ん、それならせめて派手なカーチェイスくらいは欲しかったなあ。パルクールとかは別に007で見たいものじゃないし。

この映画はシリーズのリブートとして荒唐無稽な要素を排除し、シリアスな物語にしたかったのだろう。確かにそれは上手くいっていて、全編に渡って格式高い緊張感が保たれている。しかし残念なのが、それと比例して007らしい楽しさが少ないこと。派手なドンパチは少ないしアクションが非常に暴力的である。そして何より不満だったのがタイトルにもなっているカジノのシーンだ。別に何のイカサマもトリックもない普通のポーカーをけっこう長い間見せられる。おしゃれでかっこいいんだけど、もうちょっと緊張感がある駆け引きや心理戦が見たかった。ましてやギャンブルに負けて腹を立て、ナイフを持って暴力的な手段に訴えようとするダサいボンドなんて見たくない。いつでも紳士なのが筆者の中のボンド像なので、ちょっと本質から外れている気がした。ピアース・ブロスナンのシリーズを観た時も、それまでの007とは違うような気がしていたのだが、本作を見るとあっちはちゃんと007だったんだな~と思う。

総論として、まったく新しい007である。冒頭のシークエンスからのオープニングへの入り方やマティーニとの出会い、ラストの締め方なんかは前日譚ならではの魅力があり、新シリーズの始まりとしては成功作と言えるだろう。これからのダニエルボンドに期待させてくれる。しかし一方で、前日譚ゆえの“お馴染み”の喪失や生々しい拷問シーン、あまりにも人間臭すぎるボンドなんかは見たくなかったかな。なんだかんだで自分は過去シリーズへの思い入れが強いのだと自覚した次第である。

私的評価:★★★★★★★★☆☆ 8/10

 

22.『007 慰めの報酬

2008年のシリーズ第22作。シリーズ初の直接的な繋がりを持つ続編であり、前作『カジノロワイヤル』直後の物語が描かれる。前作と本作のセットで一つの物語が完結する構成だ。う~ん…なんというか、作品単体で楽しむことができるのがこのシリーズの良いところだと思っていたので、この前後編構成はあまり嬉しくなかった。確実に前作の話を知っておかないと楽しめないと思う。

冒頭は前作の直後から始まる。いきなりめちゃめちゃカッコいいカーチェイスが始まって大興奮。さらにタイトルシーンが映像も曲も最高にオシャレかつカッコよくて、叫びそうになった。必然的にこれからどんなスペクタクルを見せてくれるのだろうと期待は高まる。しかし本作は最も楽しめるのがこの冒頭のシーンで、それからはどんどん尻すぼみになっていくシリーズ最低の出来であった。

この映画、筆者は嫌いである。この映画のジェームズ・ボンドはいつも怖い顔をしていて、なんでも暴力で解決しようとする。なにかあったらすぐにブチギレて殴り込みすることしか脳がない。 ピンチの時でもいつも冷静で、ぱっと機転を利かせて危機を逃れるのがボンドなのに、この映画ではとりあえず敵を殺すだけである(もはや作中でも上司にたしなめられるほどに)。しかも何かと言うとすぐに死んだ恋人のことを引きずってうじうじするし、酒に酔いつぶれるし、もはやそこに英国紳士の姿はない。話自体もボンドとボンドガールそれぞれの復讐を描いたもので、ず~と暗い顔をしている。別にジェームズ・ボンドの人間性とか弱さとか求めてないんですけど!って感じだ。旧シリーズのボンドみたいに、“死んだ奥さんの話をされるとちょっと悲しい目をする”くらいで良かったのに、べらべらと自分の弱さを語るんじゃあない。確かに『消されたライセンス』もボンドの復讐の話だったが、あっちはまだスマートさがあったぞ。

秘密兵器やボンドカーが登場しない。贅沢な酒や食事パーティがない。かっこつけて煙草や葉巻を楽しまない。女と遊んだりしない。全ての女が一目で惚れる憧れのジェームズ・ボンドは『慰めの報酬』にはいない。その魅力がダニエル・クレイグのルックスに終始する等身大のヒーローを描いた作品に、007という冠をつけないでほしかった。というかそういうことをやりたかったのならどうして前作のラストで“007誕生!”みたいな終わらせ方をしたんだ?

それでもアクションシーンが良ければここまで最低の映画にはならなかったはずなのだが、この映画はそこも上手くいっていない。たしかにアクション自体は迫力満点なのだが、やたらと画面を揺らすわ、カット割りを細かくするわで、何をやっているのか全然わからないし、見づらい。ダニエル・クレイグ渾身のアクションも見えなければ何の意味のないではないか。もったいないな~…。

総論として、007とは何かを思い出させてくれた作品。マンネリを打破するために製作陣が施してくれた仕掛けがことごとく気に入らなかったので、筆者にとってはシリーズ最低の一本になってしまった。う~ん、例えばリアリティを追及するためとはいえ、“ゴジラが放射熱線を吐かない”・ルークがうじうじしててライトセーバーを使わない”・“ルパンが一切ふざけない”なんて改変は許されない思う。本作がボンドにしたことはこれらと同じくらい本質を否定したものだと思ったんだけどなあ…。まあ本作ラストでガンバレルのシーンがあったし、これで遂にダニエルボンドは007となったのだろう(前作のラストでなったと思ったのに!)。次作の『スカイフォール』ではいつものボンドを見れることを期待している。

私的評価:★★★☆☆☆☆☆☆☆ 3/10

 

23.『007 スカイフォール

2012年のシリーズ第23作にしてシリーズ50周年記念作品。傑作の呼び声も高く、歴代最高の興行成績を記録した007でもある。筆者が好きな映画評論家やコラムニストも、こぞって絶賛していたので、非常に楽しみにしていた映画だ。しかし実際に観終わった感想としては、この映画は駄作だと思う。本作を見て確信したのだが、筆者はダニエル・クレイグの007シリーズを楽しめないタイプの人間であるようだ。どう頑張っても昔の作品群とは別物として観ることはできないから、観ていてイライラしてしまった。まあ、すべてが自分の責任ではあるが。

まずストーリーが悪い意味でツッコみどころ満載である。確かに旧シリーズからツッコみどころ満載だったのは認める。しかしあっちはエンタメ全開かつ荒唐無稽なので気にならなかった。楽しいシーンがたくさんあるから笑って許せたのだ。では『スカイフォール』はどうか? こっちは全編に渡りカッコつけてシリアスぶってるくせに、何から何までおかしい。登場人物の全員がアホすぎて見ていて呆れる。何がシリアスだよ、バカ脚本じゃねーか。そのアホさは旧シリーズの夢のある秘密兵器のアホさを遥かに越えている。こうやって批判すると「そういうふうに重箱の隅をつつくようなこと言って何が楽しいの?」とか言われるのは目に見えてるが、こんだけツッコみどころ満載でノイズの多い物語に熱中することは、申し訳ないけど筆者にはできない。それから、アルコール中毒で復帰テストにも合格できないような落ちぶれたボンドなんて見たくないわ!

まあでも冒頭のアクションからオープニングまでの流れは百点満点ではある。主題歌のSkyfallもめちゃくちゃ盛り上がって(この映画で一番)楽しませてくれるし、ここだけでも金払った価値はあった。それからアクションも光をうまく使ってシルエットだけ映したりして、アートっぽくてカッコよかった。壊れた電車に飛び移って、乱れたスーツを正すシーンなんかは最高にクールだよね。ラストのホーム・アローンみたいな篭城戦のつまらなさ以外、アクションを総じて楽しめたことに関しては、前作から格段の進化である。

総論として、がっかりさせられた一本。ちょくちょく挟まれるシリーズのオマージュとかは楽しいんだけど、そういうのは本筋がしっかりしてるから良いのであって、そこだけやられても喜べない。仏作って魂入れずというやつだ(使い方まちがってる?笑)。まあそれでも『ゴールドフィンガー』のボンドカーが現れ、あの音楽が流れるシーンはテンション上がったけどね(全然活躍しないのでまたガッカリしたけど)。それからやっといつもの部屋にM、マニーペニー、そしてQが揃ったわけだが、“そして007は始まる…”エンドを三作連続でやるのは勘弁してほしい。詐欺だろ。

私的評価:★★★★★★☆☆☆☆ 6/10

 

24.『007 スペクター』

2015年のシリーズ第24作にして、今のところのシリーズ最新作。今後どうなるかはまだ分からないものの、とりあえずダニエル・クレイグによるシリーズの完結作でもあるらしい。ああ、遂にシリーズ全作を観おわってしまった…楽しい時間だったな~。

それではこの『スペクター』がどうだったのかを書こう。うん…そうだな~、イマイチだったかな。いやがおうにも期待が高まるタイトルとプロットのわりには、今一つ盛り上がらなかったという感じだ。前作ラストにて遂に一同に会したボンド・マニーペニー・Q・Mという黄金メンバーと『カジノ・ロワイヤル』『慰めの報酬』『スカイフォール』にて暗躍した闇の組織(しかもタイトルでスペクターだとわかる!)の戦い。こう書くだけで、もう傑作になる要素しかないと思っていたのだ。実際それはある程度うまくいっていて、尋常じゃない緊張感で行われるスペクター幹部の会合のシーンなんかは非常にゾクゾクさせてくれた。あのシーン、スペクターがさながらイルミナティ三百人委員会のような不気味さと強大さを感じさせてくれて最高だった。

しかしそれも練られていない脚本と、前作の迫力がどこに行ったのかわからないショボいアクション(特に敵のアジトを脱出するとこは酷すぎる)によって台無しにされてしまう。もしこの映画が2時間以内の上映時間だったら、その場の興味の持続で楽しかったと思う。だけど2時間30分近くも使って重厚な雰囲気や絵作りをしている割には登場人物がバカばっかりで、なんていうか単純に退屈なんだよね。シリーズ最長の上映時間によって、見事に中途半端な作品になってしまった。『ダークナイト・ライジング』と同じ匂いがする。

そして映画のタイトルから確実に登場すると予想していたブロフェルドが登場し、その正体がボンドの義兄弟だったという、やたらとミニマムスケールの展開(セカイ系かよ)に驚愕する。とってつけたように負傷して、いつものブロフェルドの容姿になるシーンを見て、なんだかな~と思った。もともと間抜けなキャラだったけど、今回は間抜けのベクトルが違うだろ…。父親を巡る愛憎劇というテーマも、前作で描かれた母親を巡る愛憎劇と大した差がなく、新鮮味に欠ける。そして、ヘリを銃撃してKOという呆気なさすぎる決着に震えよう!

総論として、結局最後までダニエル・クレイグのボンドは好きになれなかったという感じだ。まあそれでも彼の作品群の中では本作が一番007っぽいけどね。ボンドカーとか出てくるし。それから『ロシアより愛をこめて』オマージュ(あるいは『私を愛したスパイ』?)の列車の中の取っ組み合いは楽しかったです。冒頭の“死者の日”もテンション上がったね。

私的評価:★★★★★★☆☆☆☆ 6/10

 

ダニエル・クレイグ作品の総論。

ダニエル・クレイグによる新生007シリーズは良くも悪くも従来の作品群と全然違うので、視聴者が007というタイトルに何を求めているかが問われると思う。筆者はダニエル・クレイグによるジェームズ・ボンド像が受け入れられなかったので、シリーズで最も“これじゃない感”のする4本だった。こういう“モノづくり”においては、いつも「新しいことをしたいクリエーター」と「いつものを見たい老害視聴者」が対立してると思う。そして今回、筆者は老害だったわけだ。それまでの007を否定されたような気がして、何なら怒りを覚えたシーンも少なくない。でもまあ、『カジノ・ロワイヤル』は良い映画だと思う。筆者に言わせると、このシリーズ的なボンドは『カジノ・ロワイヤル』だけで十分なんだよね。ボンドになるまでは『カジノ・ロワイヤル』で描き切ってるし、『スカイフォール』の落ちぶれたボンドなんて誰得だよって感じ。最後に一つだけ言いたいのは、楽しめなくて残念だった!

007シリーズ初心者が年代順に観て感想を書く!ピアース・ブロスナン編

当ブログでは007初心者の筆者がシリーズの作品を年代順に観て感想を書いている。今までは70年代、80年代と年代別にページを分けて書いていたけど、ここからは俳優別にページに分ける。そのほうが分かりやすいと思うしね。とういうわけでこのページではピアース・ブロスナンの007の感想を取り扱う。良かったら読んでいってほしい。

 

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17.『007 ゴールデンアイ

1995年公開のシリーズ第17作。ピアース・ブロスナンによる5代目ジェームズ・ボンドのデビュー作である。この映画、本当に心の底から楽しむことができる大傑作である。ちょっとそれまでのシリーズ作品とは別格の面白さだ。冷戦が終わり、また前作から6年の時が経ったこともあるのだろう。ここに新時代の007が誕生した。

ピアース・ブロスナンの演じる5代目ジェームズ・ボンドはスマートな男前で、スーツが良く似合うスタイリッシュで現代的なボンドである。印象としてはティモシー・ダルトンをよりクールにした感じだ。5代目ボンドはアクションがキレキレで、格闘シーンや銃撃シーンの迫力は歴代随一。スピード感のある銃撃戦を見ていると、007もついに今の映画のテンポになったのだな~と思った。その進化ぶりには文字通り歓喜するばかりである。

印象的だったのは本作の宿敵を演じるショーン・ビーンだ。筆者は『メタルギアソリッド』が大好きなのだが、この映画のショーン・ビーンリキッド・スネークの元ネタなんじゃないかな。存在感といい演技力といい、敵として不足なしだ。元々は相棒だったという設定も、愛憎入り混じる関係性がストーリーを盛り上げてくれる。ピアース・ブロスナンショーン・ビーンが並ぶと、本当に信じられないくらいカッコいい。そしてもちろん2人の戦いはたまらない。また、Mが女の人に変わったことにも驚いた。目力や迫力が半端なく、上司として良いキャラをしている。ボンドの実力を認めながらも馬が合わない感じが上手く出ていて、これからの2人の絡みに期待したい。

総じて最高に面白い一本。大迫力のアクションシーンや魅力的な宿敵、そしてSEXしながら相手を殺す歴代でも最高にイカれた悪女 ゼニア・オナトップ(名前がもう面白い)という凄まじい要素に満ちている。戦車で街中を爆走するといったとんでもないシーンがありながらもストーリーの緊張感が損なわれることはなく、常にシリアスさが保たれている。言うまでもなくピアース・ブロスナンのボンドもカッコいい。文句のつけようがないが、あえて一つ不満があるとすれば、新しくなり過ぎてなんか007感がしない。バカ映画らしさと冷戦の空気、それが007だったんだろう。その要素がないから、この映画は007というよりはリュック・ベッソンの『レオン』とか『メタルギアソリッド』(逆だけど)っぽく、007の名前だけ使った別のスパイ映画に見えなくもない。まあ、それも上手く進化したということなのだろうが…。というか音楽が同じ人だからだろうけど、レオン感がほんとに半端ない。この映画が大好きだけど、音楽は今までの人に担当してもらいたかった。

私的評価:★★★★★★★★★★ 10/10

 

18.『007 トゥモロー・ネバー・ダイ

1997年公開のシリーズ第18作。前作『ゴールデンアイ』を超えて、個人的に最高傑作である(映画としての完成度は前作のほうが高いと思うけど)。全編がアクションの宝庫であり、さらにボンドガールに香港映画界の大物 ミシェル・ヨーを迎えたことで最高に楽しめるアクション映画に仕上がった。退屈する暇を与えないジェットコースタームービーである。そしてシリーズの中の位置づけとしては、冷戦時代に囚われ、常に何となく古い印象を漂わせていたシリーズが現代においても成立することを示した重要な一本だと思う。完全に新世代の007として完成されているのだ。ただ、そうなるともはや別物感は否めない。アメリカ映画的なアクション大作である。しかし007としてどうとかいう問題を差し引いて考えても、この映画はなかなかの逸品ではないだろうか? 少なくとも筆者は今までで一番楽しんだ。

今回のストーリーはスティーブ・ジョブズみたいなメディア王が悪役で、その題材に時代を感じた。ああ、現代における007なんだな~。東西対立がなくなっても、まだまだ世界には脅威が残っている。時代と共に悪役は移り変わり、これからはテロリストが主な悪役になるのだろうか。

本作の魅力としては、上述したように香港映画界の大物 ミシェル・ヨーがボンドガールであるというところが挙げられる。その美貌と役どころは非常に良いキャラをして、ボンドに追っ手をまかせて抜け駆けするシーンなんかは、さながら峰不二子である。もちろん『グリーン・デスティニー』の時のようなカンフーアクションもたっぷり見せてくれる。ボンドに負けない強さを持ったボンドガールは非常に斬新で、ただ守られるだけのお姫様ではなく対等なパートナーといった感じが非常に良かった。その真骨頂がバイクでのチェイスシーンで、ここでは2人が手錠で繋がれた状態で香港映画のようド派手なアクションを繰り広げる。息が合うのか合わないのかよくわからないふたりの掛け合いは非常に楽しかった。

また今回のボンドカーはいつもより大活躍である。遠隔操作できるように進化した車は楽しい機能がたくさんついていて、その大立ち回りはシリーズ随一の名シーンではないだろうか。本作での立ち振る舞いを見て、ピアース・ブロスナンのボンドが本当に好きになった。現代的でありながらもショーン・コネリーのタフさとロジャー・ムーアユニークさを兼ね備えたハイブリッドなボンドだと思う。カッコいいし。

総論として『私を愛したスパイ』を現代の題材と映像技術で作り直したような映画だった。新時代の007であり、非常に面白い作品である。しかしそれまでの007感はないな~。ま、それが進化というものだろうが。

私的評価:★★★★★★★★★★★ 11/10

 

19.『007 ワールド・イズ・ノット・イナフ

1999年のシリーズ第19作にして、20世紀最後の007。前作、前々作が文句なしの傑作だったのに対して、この映画は「勿体無い」という一言に尽きる惜しい内容だった。まず、ストーリーがここで紹介するのも難しいような複雑なものになっていて、前2作と比べてなんだか理解しづらい。おそらく純然たるアクション大作になった前作、前々作に重厚な人間ドラマを足したかったのだとは思うが、残念ながらそれが成功しているとは思えない。物語の肝心な部分がセリフで説明されるだけなので説得力に欠け、せっかく集めた豪華俳優陣や魅力的な設定も上手く機能していないのだ。この物語の核となる誘拐事件が描かれていないから、敵側のキャラクターの心情が理解できなかった。

一方、ストーリーに対してアクションは前作のような派手さはないものの、充分に楽しむことができた。冒頭のボートチェイスからのオープニングテーマへの導入は非常にワクワクさせてくれるし、ド派手なだけじゃない抑えたアクションがシリアスなストーリーと相まってなかなか良い。そしてそれらにジェームズ・ボンドのテーマを流すタイミングが上手く、否応なく燃えさせられる。一連のアクションシーンをカッコよく見せるピアース・ブロスナンは大したものであり、ルックスのカッコよさに加えて、主演三本目にして完全にボンドの役を掴んでいる。個人的には最高のジェームズ・ボンドだと思っている。

総論として、ピアース・ブロスナンの007の中では傑作までもう一歩な惜しい一本。やりたかったことはわかるんだけどな~。しかし『ゴールデンアイ』から登場した新任のMとボンドの絆のようなものを感じられたのは良かったし、ラストは笑わせてもらえる痛快な終わらせ方だった。ダメだとは思わなかったから、まさしく“惜しい”という言葉が当てはまる、普通に面白い映画である。

私的評価:★★★★★★★★☆☆ 8/10

 

20.『007 ダイ・アナザー・デイ

2002年の記念すべきシリーズ第20作にして40周年記念作品。またピアース・ブロスナンによるジェームズ・ボンドの卒業作でもある。その内容は、この映画が記念作品だということを頭に入れてから見れば納得のものだろう。ティモシー・ダルトンピアース・ブロスナン以降のスタイリッシュな雰囲気からショーン・コネリーロジャー・ムーアがふざけまくってた頃のようなバカ映画の雰囲気に回帰し、シリーズの集大成的なお祭り映画が生まれた。最新のVFXやCGなどをふんだんに用いて作られた荒唐無稽な映画で、ツッコみどころを挙げだすときりがない。まさしく、在りし日の007が帰って来た!という感じだ。しかし筆者はそんなことは知らなかったので、初見でぶったまげてしまった。ええ…またあの路線に戻るの…?ってな感じである。

この映画、冒頭がなんと北朝鮮から始まる。いやはや、冷戦後の脅威は北朝鮮というわけですか、なるほど。いきなりとっ捕まって拷問されているところでオープニングに入る。北朝鮮流の拷問を受けるボンドを見ることになるとは…。そしてオープニング曲を歌うのはなんとマドンナである。やたらとカッコいいオープニングであるが、この映画の内容に合ってるかは微妙である。しかしまあ、豪華だし良いか。

それからは光学技術で透明に見える車に乗って暴れまわったり、宇宙からビームを撃って38度線を焼き尽くしたり、電撃パンチマンがいたりと何でもありである。歴代作品のオマージュと見受けられるシーンが散在していて、それらを探したりするのは楽しい。筆者が好きな『オクトパシー』のワニスーツも見ることができて大満足である。ああ、やっぱりこの作品はそういう路線に回帰したかったのね。ピアース・ブロスナンショーン・コネリーが使ってたジェットパックを見て「懐かしい」とか言ってたけど、やっぱりあの頃と同一人物なようだ。もうお爺ちゃんだろ(笑)。

それでも中盤くらいまでは一応現実的に言える範囲で話が進むのだが、後半からはガラッと変わって、本当にアニメのようなバカげたシーンが続出する。満載のCGも時代的にその質に厳しいものがあり、もはや真面目に観ることは出来ない。しかしここでこの映画を叩くこと、それはもうシリーズ全体の否定であると思う。だって昔の作品もこんな感じだったし。007ってこんなんだったよな~と、ある種の笑顔で見ることは出来る。しかし今の時代に全力でバカ映画をやられると、さすがに面食らってしまう。おいおい…と。

総論として、お祭り映画としては良いが…といった感じだった。『ゴジラ FINAL WARS』とか『エスケープ・フロム・L.A.』とかが楽しめる人にはオススメである。個人的には『ゴーン・ガール』のロザムンド・パイクと『男たちの挽歌』シリーズのケネス・ツァンが出演してたのが嬉しかった。それからピアース・ブロスナンさん、お疲れ様です。

私的評価:★★★★★★★☆☆☆ 7/10

 

ピアース・ブロスナン作品の総論。

冷戦後もシリーズは成立するということを示し新たなスタンダートとなったピアース・ブロスナンの007は平均点が非常に高い。名作とそうでないものの差が激しい他の俳優のものと比較すると、いちばん安心して観れる作品群だと思う。これはもちろん筆者が平成生まれでCG全盛時代に生きてきたからだろう。しかし考えてみてほしい。60年代に始まったシリーズが90年代生まれの若者を虜にすることができるようになった進化は、単純に素晴らしいものではないだろうか。ただ逆説的に、一新されたことによってそれまでの空気がなくなったことも否めない。同じようにバカやってる『ダイ・アナザー・デイ』も、やっぱりあの頃の007にはなっていなかった。というわけで、そのジンクスをダニエル・クレイグがどう破ってくれるのか楽しみにしつつ、この記事を終えようと思う。

読んでくれてありがとう。

007シリーズ初心者が年代順に観て感想を書く! 80年代編

当ブログでは007シリーズ初心者である筆者が年代順に作品群を観て感想を書いている。この記事では80年代の作品群の感想を書くので、良かったら読んでいってほしい。それ以前の作品群の感想は過去記事を参照してくれ。

 

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12.『007 ユア・アイズ・オンリー

1981年のシリーズ第12作。宇宙にまで進出しちゃった前作『ムーンレイカー』とは打って変わって『女王陛下の007』以来のシリアスな作品である。待ってました! 立て続けにコメディ路線の作品が続いた中の本格スパイ路線だったので、筆者は大歓喜。これまでで最もリアルな作品だったんじゃないかな。『ロシアより愛をこめて』よりも現実的だし、女と出会うととりあえずSEXしてたロジャーボンドが分別のあるキャラになってたのが印象的。非常に楽しい2時間でありました。

冒頭は過去作で死んでしまった妻の墓を見舞うボンドの姿が描かれる。ロジャー・ムーアの目の演技が素晴らしい。全てを物語っている。いつもは軽いロジャー・ムーアのボンドが神妙な顔をしていると、「あ…今回は本気なのかな?」と思わされた。これは、今回はシリアスにいきます!という監督の宣言だといえるだろう。ジェームズ・ボンドも歳を重ねた結果、貫禄が出てきた。ボンド夫人の墓標に晩年1969年と刻んであったから、ボンドも若く見ても40代のようだ。

本作はアクションシーンが本当に多い。開幕から飛び回るヘリコプターにしがみつく(スタントマン、すげー!)。そして序盤に描かれる007恒例のカーチェイスは確実に過去最高の出来。『ドクター・ノオ』の頃のものと比較すると、その進化に感動を禁じえない。『カリオストロの城』のようにコミカルかつ緊迫感のある素晴らしいカーチェイスだ。もうこの時点でこの映画はただものじゃないと思っていたのだが、その後には、これも007恒例の雪山でのスキーチェイスがある。そしてこっちも過去最高の出来だ。ほんとにこんな映像よく撮れたな…と感心しっぱなしである。怪我とかしてなきゃ良いが。

そして今回のボンドガールはジェニファー・コネリー風のクールビューティー。筆者の好みにドストライクである。黒髪ロングが良い…良い。上述したように今回のボンドは節操があるから、すぐにこのヒロインとそういう関係にならないのが好印象。バカ女っぽさが皆無である。画面に映るだけで嬉しいなあ…。

総論として、ハチャメチャな007にそろそろ飽きてきた頃に最高の一本。こういうのでいいんだよ、こういうので。私的には『私を愛したスパイ』を超えてロジャーボンド最高傑作である。

私的評価:★★★★★★★★☆☆ 8/10

 

13.『007 オクトパシー

1983年のシリーズ第13作。前作が完全にシリアスに振り切っていたのに対し、本作はギャグ路線なのかシリアス路線なのか中途半端である。いつもよりは真面目に話が進むのだが、笑うシーンも多少あるといった感じだ。この配分ならギャグを減らして前作のような作風にしてほしかった気がする。SEXしまくるボンドに戻って平常運転である。前作の風格はどこへやら…。しかし全体を通して考えるとシリーズでも上位に値する一本。筆者はなかなか好きな映画である。

お話は“レディーの卵”という秘宝の争奪戦を描いたもの。冒頭でボンドが登場すると、その老化を感じる。ロジャー・ムーアも007はこれで6作目、そら歳も取るよな~。そろそろ交代の時が来ている。この映画、007というより『インディ・ジョーンズ』っぽい。ロジャー・ムーアの老化によってか演出によってかはわからないが、逃げ回るシーンなどに一生懸命感が半端ないので、余裕を見せるボンドというよりは泥臭いインディなのだ。特にインドの雑踏でコミカルかつ必死にカーチェイスを繰り広げる場面は、かなり『レイダース』らしさがある。非常に楽しいのだが、本来のボンド像から離れている感もしなくはない。ま、楽しいから良いか。このへんはほんとにロジャー・ムーアならではである。晩飯に羊の頭を出されるシーンは『魔宮の伝説』だよね(笑)。

秘宝を賭けたカジノでのギャンブルとか、敵のボスとの晩餐会とか、静かな駆け引きも光る本作。中盤に本作の謎に包まれたヒロイン、オクトパシーが登場するまではシリーズでも満点級に楽しんでいたのだが、そのあとはちょっと退屈。ワニの変装をして潜入するボンドとか、電鋸ヨーヨーとか、シリーズ中期っぽいギャグ要素がはっちゃけきれてないバランスで登場するので余計に感じる。まあワニには笑わせてもらったけども。

それからソ連タカ派将校の陰謀とかが描かれるのだが、この辺は安っぽい。中盤までの謎めいた魅力がなくなり、お宝争奪戦が終わると退屈になってくる。ストーリーはイマイチだ。しかしこの後、列車の上で殴り合ったり(どうやって撮った!危険!)飛行機にしがみついたり、と見どころ満載のド派手なアクションが待っているので楽しめるハズだ(ちょいちょい合成丸出しのシーンがあるけど)。あと特筆すべきは、銃撃シーンにスピード感があるところ。昔の映画って一撃必殺的によく狙って銃撃するから物足りないのだけど、この映画は今風にスピーディーに撃ちまくるのが楽しい。階段の手すりにスライディングしながらアサルトライフルを連射するシーンはジョン・ウー映画っぽくてかなりカッコよかった。

総論として、ダメなところもあるがシリーズ上位の一本。なんか007というよりは『インディ・ジョーンズ』風だけどね。シリーズとしてどんどん平均点が上がってきているのが嬉しい限りである。

私的評価:★★★★★★★★☆☆ 7/10

 

番外編.『ネバーセイ・ネバーアゲイン

1983年のシリーズ番外編。この映画は権利の問題がいろいろとあって既存のシリーズとは別に製作された映画である。だからお馴染みの音楽や冒頭のガンバレル・シークエンスを見ることは出来ない。とはいえショーン・コネリーが『ダイヤモンドは永遠に』以来にジェームズ・ボンドを演じているので、ここにも感想を書こうと思う。まあ、正シリーズではないということだけ頭に入れといてくれれば良いかな。

映画が始まってもお馴染みの音楽が流れないのが寂しいが、オープニング曲がかかりながら映画が進行し、ましてやアクションシーンが見ることができるのはこの映画だけだろう。お約束破り(お約束を使えなかったからだが)はなかなか新鮮である。意外だったのは、10年ぶりにボンドを演じるショーン・コネリーをもったいぶらずにすぐに見せてしまうところ。ぱっと顔出しするので、なんだか拍子抜けする。2代目ボンド ジョージ・レーゼンビーの顔見せの時は影だけ映したりして期待を煽っていたのに…。まあ、それほどコネリーボンドがお馴染みの存在だということかもしれない。

しかしショーン・コネリーよ、あなたは老けすぎた。『ダイヤモンドは永遠に』の時ですら老化を感じていたのに、その10年後にカムバックするのは無理があった。いや、もちろんコネリーボンドが見られるのは本当に嬉しいのだ。しかし引き際というものがある。さすがに身体がなってないし、病院での取っ組み合いなんかも、もう少し若ければ見ごたえ抜群になったのに…と思わざるを得ない。

見所はシリーズ初(シリーズ作品ではないが)のバイチェイスと、こちらはお馴染みサメとの格闘シーンだ。バイクのシーンは非常にカッコよくて、とくにトラックの下を車体を傾けて通過するシーンは最高に燃える。スタントマンさん大活躍である。しかしこのシーンもジェームズ・ボンドのテーマを流すことができたらさらに燃えたと思う。そういうところは仕方ないが残念である。そしてサメとのシーンはこのシリーズお馴染みではあるが、今回は本物のサメの存在感が半端ない。というかあれ、どういう風に撮影したのだろう?人間のかなり近くまでサメが迫ってたけど、危なくないのか…? 一匹に追われてると思っていると数匹に囲まれていたとわかるシーンなんて、ほんとにゾッとした。怖い怖い…。

この映画、実はシリーズ第4作『サンダーボール作戦』のリメイクなのだが、筆者は『サンダーボール作戦』がシリーズで一番好きでは無かったりする。だからこの映画にもあまり乗れなかった。非常に残念だ…。なんで『サンダーボール作戦』なの?『ロシアより愛をこめて』とかにしてほしかったよ! それに『サンダーボール作戦』最大の見せ場の水中戦があまりなかったのはなぜ…?

結論、ショーン・コネリーのボンドが再び見られたことは嬉しかったが、なんともイマイチな一本。強いて言えば久しぶりにスペクターの面々を見られたので60年代007感を楽しむことができたかな。あとミスター・ビーンとボンドの共演が見られるのも楽しい。そこらは良かった。しかし同じ年に2本の007映画があったというのは興味深いことだ。そしてコネリーもロジャー・ムーアも老けすぎだよ。

電気ショックゲームとか何をどうハラハラすれば良かったんだ…。

私的評価:★★★★★☆☆☆☆☆ 5/10

 

14.『007 美しき獲物たち

1985年のシリーズ第14作であり、ロジャー・ムーア主演の最後の007。まずは一言、「ロジャー・ムーアさん、おつかれさま!」と言いたい。見事なボンド像を提示してくれた偉大な三代目ボンドに拍手!『死ぬのは奴らだ』から計7作、歴代で最も多くの作品でジェームズ・ボンドを演じた功績を称えよう。

そして彼の最終作である本作は…まあまあの出来であった。残念ながらシリーズの中では上位にも下位にも位置しない平凡な一本と言えるだろう。

冒頭からいつものようにスキーチェイスが始まるのだが、これはもはや様式美。この既視感だらけのシークエンスの中で新鮮だったのが、ボンドがスノボに乗る場面。何気に今までになかった。テンションが上がる。ロジャー・ムーアは高齢からボンド役を降りることを決意したそうだが、このシークエンスを見るとそれも納得。当時は58歳だったらしく、確かにもう軽く老人の域に達している。終盤のダーティハリーに出てたイーストウッドみたいだ。老化に対してなんとも言えない悲しみを覚えているとオープニングロールが始まる。音楽が流れ始めると…スゲーカッコいい! イントロのかっこよさはシリーズ随一であった。

本作はICチップ産業の独占を図る悪役をボンドが倒す話なのだが、特徴となるのは悪役を演じるのがクリストファー・ウォーケンだというところだろう。彼の存在感のおかげで、ドナルド・プレザンスクリストファー・リーに引き続き、シリーズでも記憶に残る悪役になっているのは流石である。役どころも美味しく、人工的に作られたサイコパスという設定で、非常にキャラが立っていて良い。やはりボンドと敵対する悪役はそれなりの存在感がないといけないなと思った。しかし本作において、そんな彼の存在感を超えているのがグレイス・ジョーンズさん。筆者はこの映画で初めて知ったのだが、素晴らしい女優さんである。この映画を語る際、彼女に触れない者はいないだろう。ジョーズ以来の良敵キャラじゃないかな? 

今回はフランスが舞台で、エッフェル塔の場面などが象徴するように、フランスを堪能できる。つくづく007は旅映画でもあるなと思った。上流階級が競走馬の競売のために集まる建物が美しいフランス建築で、ここにもフランスの良さがある。そこにボンドが偽名を用いて潜入するのだが、久しぶりにちゃんとスパイしてるな〜という感じだ。

総論として、そこそこな一本。しかしこれでロジャーボンドも最後だと思うと2回見てしまった。人工地震を起こそうとするあたりからが退屈かな。前作『オクトパシー』の方が好きである。

私的評価:★★★★★☆☆☆☆☆ 5/10

 

15.『007 リビング・デイライツ

1987年のシリーズ第15作。ティモシー・ダルトンジェームズ・ボンドを演じた初めての映画である。彼のボンド像は前任者で言うとショーン・コネリーに近い。ただコネリーよりも一回り若く、スマートでもあるところが独自の魅力だろう。観るまでは想像できなかった彼のボンドだが、映画の内容そのものもあいまって非常に良い。そしてこの映画自体も、今のところシリーズ最高傑作だと思う。

本作は007ならではの秘密兵器やボンドカーが大活躍する。そして素晴らしいと思ったのが、そうでありながらもバカバカしくはなっていないところ。ふつうあれだけ荒唐無稽でありえない兵器が画面に映ると話の真剣みが削がれると思うのだが、この映画は痛快なシーンがありながらもシリアスなトーンは常に保たれている。007らしさとシリアスさの両立に成功しているのである。そして『ロシアより愛をこめて』以来の現実的な東西対立が描かれているのも見どころだ。権力闘争や国境越え、アフガニスタン侵攻といった政治的な要素が上手くストーリーにリンクしている。

個人的に驚いたのが、ボンドと同じく本作ではマニーペニーを演じる女優さんが変わっていたことだ。かなり若返っている。というか一応、このシリーズは第一作『ドクターノオ』から話は繋がってるんだよね? だとしたらキャラクター達は何歳になってるんだ…?

ヘイロー降下に始まり、走行するジープにしがみつき、真夜中にスナイピングし…とテンコ盛りな本作。最も燃えたのがめちゃくちゃカッコいいボンドカーでのカーチェイスだ。『ゴールドフィンガー』を新しく作り直したようなアクションシーンで大満足である。スキーチェイスならぬチェロチェイスには大変楽しませてもらった。総じて、ダレるところもあるが最高に面白い一本。なによりボンドがカッコよく、ヒロインが可愛い。アクションも山ほどあるし見ごたえ抜群である。

私的評価:★★★★★★★★★☆ 9/10

 

1989年のシリーズ第16作。ティモシー・ダルトンジェームズ・ボンドを演じた最後の映画である。彼のボンドはカッコよくてもっと見たいと思わせるものがあるのに、たった2本しかないというのが悔やまれる。まあ、たった1本しかないジョージ・レーゼンビーよりはマシだけど。

本作は前作に引き続きシリアスな内容である。麻薬王の凶行により親友が脚を失い、そしてその花嫁が殺されたことから、ジェームズ・ボンドが私的な復讐に走る話だ。もしかしたらシリーズで最も暗い話かもしれない(『女王陛下の007』と同じくらい)。本気で怒ってるボンドを見るのはいつぶりだろう? その容赦のない復讐劇を見ていると、ボンドは敵に回してはいけない男であると確信した。殺しのライセンスを失ってなお私刑に走る姿はなかなか珍しいものがあり、『ダイヤモンドは永遠に』以来の本気のボンドである。

個人的に今回もサメが出てくるところに「やっぱり007にはサメが必要だよな~」と思った。どうして007の悪役は敵を捕らえると、銃殺せずに何らかの動物に(サメとかワニとか)食べさせようとするんだ?(笑)さっさと殺せば脱走されずにすむのにな。

見所はたくさんのアクションシーンとブチギレてるボンドだ。とくに敵の飛行機にしがみつき、アクロバット飛行の中で飛行機をジャックするシーンは凄かった。スタントマン大活躍である。それから麻薬王の用心棒役として、めちゃくちゃ若いベネチオ・デルトロが出演していたのに驚いた。若っ!? 若いころからあんなにヤバい目をしてたのね(笑)。

総じて、面白いんだけど前作と比べると見劣りする一本。ボンドがライセンスを失ってるから、本編の大部分において孤独な戦いをしているのが注目ポイントだ。だからボンドカーなどがあまり見れないのが残念である。あと無駄に残酷なシーンが多かったのは何なんだろう?

思ったんだけど、この映画が公開されたのは1989年。1989年といえば、ベルリンの壁が崩壊した年。もう冷戦も終わったわけだが、これからはどういうストーリーになるんだろう? だってスペクターももういないんだぜ?

私的評価:★★★★★★★☆☆☆ 7/10

 

80年代作品の総論。

ロジャー・ムーアがボンドを卒業したり、ショーン・コネリーが復帰したり、ティモシー・ダルトンが新たなボンド像を提示したりと様々なことが起こった80年代。個人的は、ここらの作品群はかなり面白かったと思う。『ユア・アイズ・オンリー』やティモシー・ダルトン二部作など、正当なシリアススパイ映画が帰ってきたのが嬉しかった。そして筆者は『オクトパシー』が結構好きである。なんか楽しい。残念だったのは『ネバーセイ・ネバーアゲイン』と『美しき獲物たち』で、双方とも記念すべき作品なのに、イマイチ面白くなかったなあ…。『リビング・デイライツ』は今のところマイベストボンド映画である。ティモシー・ダルトン…なんで2本しか出てないの…?

 

以上、読んでくれてありがとう。時間がかかるかもしれないけど、全作感想を書くのでお楽しみに!

『劇場版AIR』の感想。こういう感想もあるんです!

※この記事は『AIR』が好きな人が読むと不快な思いをすると思います。

 

当ブログではゲームソフト『AIR』をかつて酷評したが(過去記事参照)、今回取り上げる『劇場版AIR』は原作が大嫌いな筆者でも楽しめる映画だった。

原作についてはこちら↓

lemuridae.hatenablog.jp

 

この映画は巨匠 出崎統が監督した2005年の劇場用映画である。原作ファンにはたいそう嫌われて黒歴史扱いされている本作だが、筆者は『劇場版CLANNAD』と同じく、非常に楽しむことができた。その理由はもちろん、原作に思い入れが一切ないからに他ならない。筆者が考えるに、この映画を楽しむために必要な条件は

  • 原作に思い入れがない or 原作が嫌い or 原作を見たことがない
  • 出崎統作品に親しんでいる or 出崎演出が好き or 出崎リテラシーがある
  • 昭和演出+萌え絵という組み合わせに笑える or カオスなものが好き

の3つだと思う。この条件のうち2つを満たしているのならば一見の価値ありだ。オススメする。また2つといわずとも、条件を1つでも満たしているのなら冒険してみる価値はある。そして条件を1つも満たしていないのなら…観るのはやめておいたほうが良い。なぜならこの映画、もう『AIR』の素材を使用しただけの別作品であり『AIR』ではないからだ(それが良い)。しかしそうは言っても一応は原作の映画化であるため、多少は原作に対する理解を要求される。だから完全な初見者にもオススメできない(出崎統が好きなら初見でも大丈夫だと思うが)。う~ん、なんとも微妙な作品である。しかし条件をすべて満たしている筆者のような奇特な人間には、この上なく面白い映画だった。

 

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この映画は原作の『AIR』とは違う、『AIR』を題材にした一本の映画として見るべきである(ただし作中の随所に見られるシーンには原作理解が多少必要)。人間不信に陥っている青年 国崎住人と、自分の死期を悟った少女 神尾観鈴のひと夏の出会いと別れを描いた物語なのだ。原作にあった輪廻転生の要素や翼人がどうこうというくだりを“観鈴が夏休みのフィールドワークの中で調べている町の伝説”という設定にしてカット。伝説として残っている翼人の悲恋物語を自分の境遇と重ね合せるという形で話を広げながらも、あくまで一人の少女と青年の物語として完結させている。

そしてこの映画における主人公 国崎住人の人物像は良い。共感できるというか、良い感じの痛々しさがある。見知らぬ少女に「本気なんか見たことない!」と激昂し、人間不信で人との繋がりを自ら断ち切ろうとする。でも本心ではそれに憧れ、断ち切ることができない。わかりやすい危うさを抱えた等身大のキャラクターである(20超えててこのキャラってのもどうかとは思うが 笑)。彼が何事にも本気で打ち込まずのらりくらりとテキトーに生きているのは、何らかの結果が出て傷づくよりも、いっそ何もしないほうが良いと思ってるからだろう。筆者も結果を恐れて何もしないタイプの人間なので、その気持ちは痛いほどよく伝わった(笑)。だけど住人は心のどこかで何かに熱くなりたいという情熱を秘めていて、観鈴はそれを見抜いたから彼を放っておけなかった。

このテーマ、そしてこのドラマ、筆者は非常に好きである。若者の危うさと瑞々しさが描かれている。自分を「好きだ」と言ってくれた少女 観鈴の“命を懸けた本気”を住人が目の当たりにするラストシーンは、はっきり言って原作の何倍も感動した。これは一人の男の成長物語なんだよ! 「本気になるのがかっこ悪い」と思っている反抗期の中学生みたいな青年が、残された命を本気で生きる少女との出会いを経て、一生懸命生きることの大変さと素晴らしさを知る。彼はラストで逃げ場をなくしたわけだが、それが大人になるということだろう。「しばらくは観鈴と一緒だろう」という安っぽくない現実的なセリフが印象的で、彼はもうその後の人生において腐ることはないと思う。『劇場版AIR』は主人公がヒロインを助ける話ではなく、主人公がヒロインに救われる話なのだ。そう考えれば、お姉さんらしくなった観鈴のキャラクターにも納得できるはずだ。

 

次は映像や演出について書こう。力強い演出を得意とする出崎監督のことだから、この映画でもめちゃくちゃなことをしてるんだろうな〜と思って見始めたわけだが、案外この題材に合っていた。なぜなら『AIR』の舞台は真夏のど田舎!出崎演出が違和感なく入り込める絶好の舞台だからだ。透過光やハーモニー処理は太陽の光として過剰な感じはしないし、それに原作からかなりファンタジー的な要素があるため、強烈な演出にも耐えうる条件は揃っていた。

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CLANNAD』の場合はわりと現実的な世界観だったから出崎演出が出るたびに爆笑していたわけだが、こと『AIR』に関しては普通に違和感なく溶け込んでいる(鬼の太鼓には爆笑したけど)。またキャラクター達は原作の好みが分かれる絵柄から万人ウケを狙える等身の高い絵柄になった上、CGで上手く表現された海や雲の流れなどの背景もクオリティが高い。上記二点から、映像美を楽しむ映画としては満点とも言える(どうして『劇場版CLANNAD』はあんな作画になってしまったんだ?)。そしてキャラ変更によって原作プレイ時には全く魅力がなかったキャラクター達を可愛いと思えた自分に驚いた。

 

と、ここまでこの上ない絶賛をしたが、それは筆者が原作が嫌いであり、なおかつ出崎統作品が好きだからである。出崎監督の『AIR』への改変を見て、「そうだよな!出崎さん!そこカットした方が良いよな!」と、好きな監督が嫌いな作品をめちゃくちゃにしているところを楽しんでいるわけであり、決して一本の映画としてそこまでよく出来ているわけではない(正直に言えばあの酷い原作よりは何倍もよく出来ていると思うが)。だからそういう感想もあるんだなぁ〜くらいで、この記事に関しては勘弁してほしい。筆者も別にアンチではないので、もう二度とKey作品を批判しないつもりだ。筆者と『AIR』の対立はここにて終了を宣言する。

というわけで、読んでくれてありがとう!

 

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007シリーズ初心者が年代順に観て感想を書く! 70年代編

世界一有名なスパイ映画、『007シリーズ』を観たことがない!そんな状態から抜け出さなければならないと唐突に思い立ち、当ブログではシリーズ全作品を年代順に観て感想を書いている。既に60年代の作品の感想は書いているのでそちらは過去記事を参照!この記事では70年代の作品の感想を書くので、暇な人は読んでみてくれ。では。

 

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7.『007 ダイヤモンドは永遠に

1971年公開のシリーズ第7作。ショーン・コネリーの復帰作にして、彼のジェームズ・ボンド卒業作である。どうやら前作のジョージ・レーゼンビーのボンドが不評だったことによる1作限りのカムバックだったようだ。前作を見た時は2代目ボンドもなかなか良いと思ったのだが、本作を見るとやっぱりショーン・コネリーこそがボンドだよな~と思ってしまった。安心感が桁違いである。

前作の一件でボンドがブチギレしている冒頭を見て、どうやら役者が変わっても話は続いているらしいということが分かった。…ということはボンドは何歳になるのだろう? 本作ではショーン・コネリーがちょっと老けた感じがするので、キャラとしてのボンドの老化が心配になってきた。まあ次作からはまた役者が変わるわけだが。

見どころはエレベーター内での格闘シーン。ここは生々しいリアルな攻防が描かれてて本当に素晴らしい。狭い場所での取っ組み合いはボンド映画の見せ場だと再認識した。それからラスベガスでの警察とのカーチェイスも、それまでの007映画のカーチェイスとはまた違ったもので非常に新鮮だった。

総論として、残念ながらマンネリ感が強い。なんというか、いつもの007という感じだ。確実に楽しいわけだが、ショーン・コネリーの最後の作品なんだし、もっと集大成感を出してほしかった。それからそこそこシリアスに話が始まったかと思いきや、ホモの殺し屋・月面車での追いかけっこ・カリオストロ的ワイヤーアクション・謎の新体操女・衛星ビーム兵器など、わけが分からないシーンが多い。そういうところがいつもの007なわけであり、マンネリの原因なわけである(笑)。

私的評価:★★★★★★☆☆☆☆ 6/10

 

8.『007 死ぬのは奴らだ

1973年のシリーズ第8作。ロジャー・ムーアによる3代目ジェームズ・ボンドのデビュー作である。ロジャー・ムーアは彼なりのボンド像を始めから全開で出しているところが2代目ボンド、ジョージ・レーゼンビーと対照的だ。役者の交代と共にボンドのキャラクターが変わっているので(葉巻派に転向してるし)、最初のうちは「こんなのボンドじゃねえ!」と思いながら観ていたんだけど、30分くらいで「これはこれでありかな…」という気がしてきた。いつまでもショーン・コネリーの物まねをしているわけにはいかないしね。印象としては、ロジャーボンドは軽い感じだ。

この映画、もう本気でふざけている。ギャグ映画なのか…?と何度も混乱した。イメージでいえば『インディ・ジョーンズ魔宮の伝説』に近い。むちゃくちゃなシリーズの中でも、さらにギャグ成分が多いのだ。なんでも未来予知できるタロットカード、異常な磁力の腕時計、ブルース・ブラザーズ並みにハチャメチャなボートチェイス、ワニの上を疾走するボンド…これらのシーンには真面目に大笑いした。なんやねん(笑)。さながら『クレヨンしんちゃん』である。今にして思えば、『女王陛下の007』はバカ映画化していくシリーズの軌道修正を果たそうとしていたのかもしれない。あ、一応誤解の無いように言っておくが、バカ映画ってのは別に侮蔑の意味で言ってるわけじゃないぞ。

結論、これからロジャー・ムーアが彼なりのボンド像を見せてくれそうで楽しみである。しかし彼の演じるボンドは全然強そうに見えないのが残念だ。全然迫力がない。前作のエレベーターでの取っ組み合いみたいなシーンはしばらく見れない気がする。

私的評価:★★★★★★☆☆☆☆ 6/10

 

9.『007 黄金銃を持つ男

1974年のシリーズ第9作。前作に引き続き、かなりはっちゃけた内容になっている。正直、そろそろシリアスで緊張感のある007が見たくなってきた。さすがに笑わせようとし過ぎじゃないか? 前作のギャグ用員、ペッパー保安官がまさかの再登場を果たした上に、両津勘吉並みのハチャメチャ警官ぶりを発揮。そして彼らが爆走させる車が宙を舞うシーンで間抜けなSEが入ってたので、これはもう確信犯なのだとわかった。

中川「せ、先輩だ…」

ってカットを途中で入れても違和感ないと思う(笑)。

この映画、出演している役者さんたちがみんな良い。あのクリストファー・リーが本作の敵役 “黄金銃を持つ男” を味のある素晴らしい演技で演じているし、(『スター・ウォーズ』が好きな筆者は、冒頭で「ドゥークー伯爵、若過ぎ!?」とかなりの衝撃を受けた)本作のボンドガールは当社比で最も可愛い(常にビキニ姿なのも目の保養になる)。それから『ハワード・ザ・ダック』のような小人さん、アクションがキレキレの女子高生、上述したペッパー保安官など、役者さんの個性が色濃く出てるキャラクターが楽しい。

結論、クリストファー・リーが “サーカス出身の紳士的な殺し屋” という陰がありながらも愛嬌のあるキャラクターを見事に演じていて、それだけで楽しめる。だけどそろそろシリアスなのが見たいかな。本作はさすがにボンドが情けなさ過ぎるのが嫌だ。力士に負けるボンドなんて見たくないというか、どうやら筆者はロジャー・ムーアのボンドがあまり好きではないようだ。なんというか、彼のボンドは格闘シーンがショボい。途中の『燃えよドラゴン」みたいな武道大会のシーンなんかは、ショーン・コネリーだったら見所になってたと思う。

結局、乳首が3つあるって設定は何のためにあったんだ?

私的評価:★★★★★★☆☆☆☆ 6/10

 

10.『007 私を愛したスパイ

1977年のシリーズ第10作。英ソの原子力潜水艦が突然行方不明になるという事件が発生。利害の一致から協力関係になった英ソは、事件解明のためにそれぞれ自国最高のエージェントを派遣する。英国最高のエージェント ジェームズ・ボンドは、ソ連最高の女性エージェント トリプルⅩと共に黒幕を探すのだった…というストーリー。製作されたのは1977年、冷戦の緊張緩和によってこのような話が生まれたのかと思うと興味深い。

最初に書いてしまうが、この映画は非常に面白い。今ひとつパッとしない前作や前々作と比較すると頭一つ抜きんでている。正直『007は二度死ぬ』以降のシリーズは作業的に観ている部分が少なからずあったのだが、この映画は最初から最後までずっと惹きつけられてしまった。期待していたシリアスな路線とは全く違ったが(笑)。

冒頭は『女王陛下の007』のような雪山でのスキーチェイスから始まる。いきなりアクションから始まるのが良い。ここでボンドが雪山の断崖絶壁からパラシュートで脱出するシーンがあるのだが、パラシュートがド派手なユニオンジャック柄で笑った。ジェームズ・ボンドよ、お前は素性を隠す気があるのか…?

その後、この冒頭のシークエンスでボンドに返り討ちにされたソ連の刺客が今作のボンドガールの恋人だったという事実が判明する。そしてこのボンドガールというのが上述したソ連の女性エージェントである。もうお分かりだろう、反目しあう2人が共に窮地を乗り越えながら互いを理解していく、という話だ。この、すぐに喧嘩を始めるドタバタコンビが世界を股にかけて大冒険するバディームービーのような趣が素晴らしく、ロジャーボンドの軽さがストーリーに上手く機能していて良い。喧嘩するほど仲がいい状態というか、互いに素直になれないシーンが可愛くて仕方ないのだ。この味はロジャー・ムーアじゃないと出せなかっただろう。

全体を通すと『ゴールドフィンガー』に近い。かなりバカバカしいんだけど、クールさは損なわれていないのだ。前作がふざけ過ぎ感があった中、本作はそれと同じか、あるいはそれ以上に はっちゃけたシーンが多いのだが、露骨に笑いを狙いに行っていないといえば良いのか、とにかくそこまで間抜けじゃない。しかしジョーズという名の、某巨大鮫を想起させる殺し屋が登場するのだが、こいつだけはもうわけが分からない。鉄の歯で標的を噛み殺すというとんでもないキャラクターで、素手で車を引き裂くわ、鉄の鎖を噛み切るわ、撃墜するヘリに乗っていても死なないわ、ホオジロザメをも食い殺すわ、基地ごと爆破しても生きてるわ、というターミネータばりの不死身のキャラである。結局最後まで生きてるんだが、こいつは何だったなんだ?(笑)もはや間抜けというか何というか…どーゆうコンセプトやねん!筆者のツボにはまって、出てくるだけで嬉しかった。

結論、オススメの一本である。オープニングが音楽・映像共に今までで一番カッコいい。そして007ならではのアクションシーン(秘密兵器やボンドカーなど)が多いうえ、様々なロケーションが楽しめるという点で、旅映画としても良質だと思う。70年代作品では今のところベストだ。

私的評価:★★★★★★★☆☆☆ 7/10

 

 11.『007 ムーンレイカー

1979年のシリーズ第11作。アメリカからイギリスに輸送中のスペースシャトルムーンレイカー」が突如ハイジャックされる事件が発生。事の真相を解明すべく、英国情報部はジェームズ・ボンドを派遣した…というストーリー。なんと本作の舞台は宇宙!ジェームズ・ボンド、遂に宇宙進出である。なんだか『スター・ウォーズ』の影響を感じさせる一本だった。

飛行機から落下する冒頭のシークエンスでいきなりワクワクさせられる。このシーン、いつものチープな合成には見えなかったが、どうやって撮影したのだろう? まさか本当に落下してるわけではないよな…。映像技術が発達してない頃の映画だからこそハラハラさせられた。

敵の配下に変な日本人がいるのが面白い。フランス風の建物の中で一人だけ着物を着ているので、めちゃくちゃ浮いている。なんとも言えない顔が笑いを誘うこの男が剣道着と竹刀を身に着けてボンドを待ち構えているシーンで爆笑した。なぜにその恰好、その武器? せめて日本刀を持てよ(笑)。しかしガラス工芸品を豪快に割りながら対決するシーンは意外に面白い。

そしてまさかの前作から続投する不死身キャラ、ジョーズ。本作ではなんだか可愛いキャラになっているのに笑った。女の子に恋しちゃったり、満面の笑顔を見せてくれたりと、全作とはまた違った面を見ることができる。ボンドとは意外な形で決着がつくので、これまた必見である。

舞台は宇宙だと上述したが、ずっと宇宙にいるわけではない。序盤から中盤までにかけてはヴェニスの街並みやリオデジャネイロの祭りを堪能できる。正直、これらのシーンが雰囲気含めて非常に良かったため、宇宙に行くのはやめてほしかった。というか宇宙に行くまではシリーズでも上位の面白さだったのだ。

結論、これを言うとこの作品を全否定することになってしまうわけだが、007に宇宙要素は要らない。中盤までは楽しかったのに、宇宙に行ってからのラスト30分ほどは本当に退屈だった。宇宙でビームを撃ち合う絵面は007に求めてない。ドアロック解除の音が『未知との遭遇』と同じだったシーンを見て、この作風が、いわゆる当時のSFブームに便乗した結果だと理解した。007には007の良さがあるんだから、流行に乗らなくてもいいのにな。しかしここまで全否定している宇宙のシーンだが、時代を考えると非常にリアルである。『007は二度死ぬ』の宇宙シーンは失笑もののお粗末さだったが、こちらはなかなかの現実味がある。そのように素晴らしいからこそ、この宇宙描写は別の映画で見たかった。

私的評価:★★★★★☆☆☆☆☆ 5/10

 

70年代作品の総論。

ショーン・コネリーからロジャー・ムーアに交代した70年代。ボンドはロジャー・ムーアによって親しみやすい軽いキャラクターとなり、ストーリーもどんどんと荒唐無稽になっていく。続けて一気に観ているからというのもあるだろうが、なんというかそろそろマンネリ化していっている気がした。その中で突出して面白かったのが『私を愛したスパイ』。これはジョーズが象徴するようなバカバカしいシーンも多いのだが、それまでの要素がきれいに集約されていて、シリーズの中盤の集大成だと思う。というかそれ以外は別に言うこともないかな…。敢えて言うなら、『死ぬのは奴らだ』と『ムーンレイカー』はふざけ過ぎです。

 

そういうわけで、読んでくれてありがとう。80年代作品の感想も書くので、そのときはよろしく。