オタクノ作る時間

主にノベルゲームについて取り上げてきた元学生のブログ

『この世の果てで恋を唄う少女yu-no』感想。

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この世の果てで恋を唄う少女yu-no』は、アドベンチャーゲーム史に残る傑作として名高い作品である。筆者はノベルゲーム・テキストアドベンチャーゲームに慣れ親しんでいるので、ある意味この作品は一般教養、プレイ必須のものであると認識していたのだが、pc98とセガサターンでしかリリースされていなかった(過去形)ため、今まで触れることができないでいた。しかし2017年3月16日にPSVITAPS4にてリメイク版が発売され、さらには1996年に発売されたPC-9801版が楽しめるDLCカードが初回特典として封入されているとのことで、ようやくオリジナル版をプレイすることができた(リメイク版でも良いんだけど、やっぱりオリジナルからプレイしたいので)。

しかし念願叶ってプレイした『この世の果てで恋を唄う少女yu-no』ではあったが、筆者にとっては非常に退屈なゲームであった。どれくらい退屈だったかと言うと、普段はどれだけ退屈なゲームでも一応最後までプレイする筆者がクリアする前に投げてしまったほどだ。だからこの記事はクリアすらしていない ゆとりゲーム世代の誹謗である。うーん、さすがに20年前のゲームは古過ぎたか…。

まずこのゲーム、主人公に好感を持てない。目上の人にもタメ口だし、全体的に態度が悪い。悪いやつではないんだけど、割と自分勝手なので、見ていてイライラする。主人公との共感ができなければ楽しめないタイプのシナリオなので、この時点で筆者にとってはかなりのダメージであった。

そしてヒロイン勢にも魅力を感じられず、もとがアダルトゲームということもあるのだが、貞操観念が乱れまくってるキャラは理解不能で、唐突かつ不自然なエロシーンに辟易し、なんだか全部が気持ち悪い。特にライターさんの力が入っていると思われる主人公の義母のキャラに(絵柄が古いということも相乗効果で)全くもって魅力を感じられなかったため、彼女に関するルートは本当に苦痛だった。

 

 

※ここからネタバレあり

 

 

本作を象徴するゲームシステム、並行世界を具現化した「A.D.M.Sシステム」はフローチャート上に任意のタイミングでセーブを行い、他ルートでの記憶を引き継いだまま時間軸、世界軸を自由に行き来するというシステム。このシステムが画期的である(あった)ことは筆者も認めるところで、20年前によくやったものだと感心した。

しかしさすがに荒削りで練られておらず、かなり不便である。画面クリック総当たりという、言ってしまえば面倒なシステムに(分岐がわかりづらい)、フラグ建て必須のこのシステムを追加していることで、ゲームの難易度が非常に高くなっている。何度もセーブとロードを繰り返すこと自体がこのゲームの要であることは理解できるのだが、その面倒さを超えるほどの魅力をシナリオが持っていないため、単純に苦痛でしかないわけである。しかもシナリオ上は記憶を引き継いでいるはずの場面でもゲーム上は何事もなかったように進行してしまうので、没入感は低い。同様の構造を持つものとしては『極限脱出ADV 善人シボウデス』なんかのほうが完成度が高かったように思う。

なんいうか、システムの古さゆえの操作性の悪さとか、全体的な時代感。そういうものを苦手としてしている筆者のようなプレイヤーのためにリメイクされたんだから、そもそもそっちをプレイするべきだったわけである。だがもういいや…疲れたよ…もうゴールして良いよね…?

 

というわけで、久しぶりのレトロゲーにワクワクしたのもつかの間、プレイを断念してしまった『この世の果てで恋を唄う少女yu-no』でありました。同じようなゲームなら『スナッチャー』とか『ポリスノーツ』、『御神楽少女探偵団』なんかのほうが好きだな〜。

 

ちなみに筆者は達成率50%くらいで断念しました。そこまでしかやってないくせに批判するなと言われたら、すいませんとしか言いようがない。

『カオスチャイルド らぶchu☆chu!!』ネタバレ抜きで感想を。

科学アドベンチャーシリーズ最新作『CHAOS;CHILD らぶchu☆chu!!(かおすちゃいるどらぶちゅっちゅ)』をクリアしたので感想を書く。

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このゲームは『カオスチャイルド』のファンディスクであるため、このページに来てくれている人の大半は『カオスチャイルド』のファンで、なんなら既にこのゲームをクリアしている人も多いと思う。しかしまだクリアしてない人のことを考えて、ここではネタバレ無しの感想しか取り扱わないこととする。それからこのカオスチャイルド らぶchu☆chu!!』は完全にゲームクリアむけのゲームなので、アニメしか見ていない人は買っても話が分からないと思う。アニメ版を観て興味を持った人はこのページを読んでも意味はないので、とりあえずゲーム本編をクリアしてほしい。

 

それでは…

カオスチャイルド』は筆者が大好きなゲームなので、アニメ化とファンディスク(本作)の発売がアナウンスされた時は本当にうれしかった。でもアニメ版は、放送前から1クールしかないとわかってガッカリしたり、実際に放送が始まってからもあまり出来が良くないと感じて、喜べなかった(もちろん良いところもあったのだが)。アニメ化に失敗したな~と残念に思っていた時に最後の希望として残っていたのがこの『CHAOS;CHILD らぶchu☆chu!!』で、こちらは結果的に満足のいく出来であった。ほっと胸をなでおろす思いである。

このゲーム、正真正銘のファンディスクなのだが、少しだけ続編の要素もある。だから単なる非正史ストーリーとしてではなく本編の延長線上にあるものとして楽むことができる。しかしそれもまあ、言ってしまうと蛇足ではある。『カオスチャイルド』自体が完全に本編一本で過不足なく完結していたため、続編の要素があってもこのゲームが話として必要であるとは思えない。しかしもちろん、ファンにとってはそれが必要であり、“嬉しい蛇足”なのである。もう一度あのキャラクター達に出会えただけで楽しかったし、この手のファンディスクとしてはじゅうぶん納得のいく一本だった。というか、ファンディスクとはそういうものだろう。

オープニングから良い意味で酷い(妄想爆裂)演出で笑わせてくれるし、お馴染みの阿保剛の音楽も重々しかった本編の音楽をポップにアレンジしてあり、それだけで笑える。もちろんストーリーもギャグ全開で笑わせてくるし、行き過ぎた下ネタを大真面目に声優さんたちが演じている様は、ちょっと凄いものがある。特に主人公を演じた松岡禎丞さんはその熱演でプレイヤーを全力で笑かしにかかってくるので、大したものだと思った。めちゃくちゃ笑いました。頑張り過ぎです。カオスチャイルドのキャラと“らぶっちゅっちゅ”できるシナリオは非常に楽しく、陰惨な本編とのギャップで救われる思いになる。この下ネタがこのゲームの魅力の9割である。

しかしあえて不満を言うと、好きなキャラクター達が和気あいあいとしてて笑えるものの、ちょいちょい度を過ぎてると思えるほどの変態的妄想が出てきて筆者は少し引いた。なんというか、プレイヤーそれぞれの性癖があると思うので、笑えるポイントが違うのは仕方ないと思うのだが、筆者は主人公のロリコン的妄想は気持ち悪く感じた(笑)。年上好きなので赤ちゃんプレイとかは爆笑したんですがね!

あとこれも不満要素なんだけど、明らかにイベントシーンの絵師が本編の人と違うので違和感がある。そしてキャラクターに関しても、このキャラがこんなことするかな?と感じるシーンが少なくなく、絵の違いとセットでプレイヤーに“二次創作感”を感じさせてきたりもする。うーん、ちょいちょいパチ物感がするのがなんともなあ…。『カオスヘッド』のファンディスクのほうは違和感がまったくなかったのだが。

 

~まとめ~

総じて、大変楽しいファンディスクだった。『カオスヘッド』のファンディスクの不満点を解消してあって(新たな不満点もあったが)、満足のいく一本であった。ここにかいてあることには不満点が目立つかもしれないが、全然楽しいゲームなので、『カオスチャイルド』のファンは迷わずプレイしてほしい。

 

では、読んでくれてありがとう。

 

『かまいたちの夜2』クリア後の感想。

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先日、PSP用ソフト『かまいたちの夜2 特別篇』をクリアしたのでその感想を書く。しかしまずはその前に、前作である『かまいたちの夜』に対する筆者のスタンスを軽く述べておこう。前作『かまいたちの夜』は筆者にとって無二の特別なゲームであり、ノベルゲームという媒体の可能性を信じさせてくれた特別なゲームだった。プレイヤーが、自分の手で推理をしなければ被害者がどんどん増えていくという閉鎖空間におけるサスペンス体験はゲームならではのものであり、小説でも映画でもなし得ないエンターテイメントは筆者にとって非常に衝撃的なものだったのだ。ましてやこのゲームはまだまだサウンドノベルという媒体が確立していなかった頃の作品。というか、この作品がサウンドノベルを確立したのである。昨今のノベルゲームも全て『かまいたちの夜』の影響を受けていると断言できるし、そしてそのどれもが原点を越えているとは思えない(マルチサイトやフローチャートを用いたものなど、進化形は生まれたが)。大げさにいうと、初めて作品世界に干渉できるエンターテイメントがノベルゲームという形で成立したのだと思った。まさに原点にして頂点である。

で、今回取り上げる、その続編の『かまいたちの夜2』はどうか? 結論として、こちらは平凡なホラーサウンドノベルになってしまっているという印象だ。プレイする前から賛否両論であるということは知っていて、ある程度ハードルを下げて臨んだつもりだったのだが、覚悟していた以上に微妙な出来であった。

確かにプレイを開始してしばらくの間は、前作に比べて格段に進化した演出やお馴染みのシルエットなど、非常に楽しめていた。前作と同じ最高の音楽と、読ませることが上手い演出。ダラダラと紙芝居を見せられるだけのノベルゲームもたくさんプレイしているから、やはりチュンソフト製のテンポの良さというか、基礎のレベルの高さには唸らされた。

しかしメインなる「わらべ唄篇」を終える頃にはもうガッカリしていた。密室サスペンスの要素は薄いし、容易に特定できる真犯人には拍子抜け。前作のような緊張感はないし、前作での醍醐味、「プレイヤーが物語に介入している感」が全然しなかったのだ。本当に、話を読んでいるだけというか、自分の手で被害者を減らしている感がしない。これでは平凡なノベルゲームである。『かまいたちの夜』という冠でこの出来は非常に残念だった。

前作と同じテイストを避けたことは良しとしよう。吹雪の中のペンションから、江戸川乱歩横溝正史っぽい孤島を舞台にしたのも良かったと思う(雰囲気は抜群)。前作がサスペンスだとするとこっちはスプラッタ、視覚的な残虐表現や生理的嫌悪感をかきたてられる演出は見事である(本気で気持ち悪くなる)。ただ、テイストの変化を抜きに考えても、前作の高みには決して達していない。退屈なシナリオが多くて、夢中になったシナリオはごく僅かであった。しかもその大半がギャグシナリオだというのも、この手のジャンルとしては致命的ではないだろうか。要するに、シナリオが良くない。

 

実プレイは約15時間。腹を抱えて笑えるギャグはあるが、ホラーゲームでギャグが一番楽しめたって、それはダメだろう。妄想篇や惨殺篇など、本編とは関係ない部分のほうが面白かったし、かまいたちの夜として失敗していると思う。音楽良し、演出良し、システム良し、シナリオ悪し。独創的な続編形態など、作り手さんの意気込みは買うけれど、あまり良いゲームとは思えなかったなぁ…。

 

などなど、偉そうに書いたが、値段ぶんは楽しめた。決してクソゲーではないが、前作と比べると残念なゲームである。