オタクノ作る時間

主にノベルゲームについて取り上げてきた元学生のブログ

『VA-11 Hall-A』オススメのゲーム、ヴァルハラを紹介!

Thank you for reading this page!

この記事は飲み物とおつまみを用意してリラックスした状態で読んでください。

準備は出来ましたか? それでは どうぞ楽しんで!

 

f:id:Lemuridae:20180127174855j:plain(C)2014-2017 SUKEBAN GAMES LLC

 

いろんなテキストアドベンチャーゲームを遊んでいると、筆者は時折興味深いアプローチをしているものに出会うことがある。それはオーソドックスな選択肢形式じゃないというだけでなく、ゲームという媒体でしか表現できないものだったり、映像化不可能なものだったりと様々だ。そして筆者はこのたび、それらとはまた違った新しいものを見つけた。

今回紹介するのは、ある意味この手のジャンルに飽きてしまっているような筆者が新鮮味を感じることができた、一風変わったテキストアドベンチャーゲーム『VA-11 Hall-A: Cyberpunk Bartender Action(ヴァルハラ サイバーパンク バーテンダー アクション』だ。

 

この一風変わったゲームを開発したのは、なんとベネズエラの人たち。しかも大手の資本の元で製作されたものではないインディーズゲームだというので驚きだ。スケバンゲームスという、名前だけで日本に親しみを持ってくれていることがよくわかる開発元によるもので、海外で反響を呼び、2017年の11月16日にやっと日本に上陸したタイトルなのである。

 

ジャンルはサイバーパンクバーテンダーアクションとされていて、これだけ聞くとピンとこないだろう。実際にプレイした筆者に言わせると、このゲームはアクションゲームではなくテキストアドベンチャーゲームビジュアルノベル・ノベルゲームである。なんだ、じゃあジャンル名は誇大広告じゃないか……と思われるかもしれないが、おっと、ちょっと待ってほしい。たしかにアクションゲームではないが、オーソドックスなノベルゲームとは違う、独特なゲーム的な要素が特徴となっているため、ただのノベルゲームだとあなどってはいけない。サイバーパンクバーテンダーなゲームなのだ。f:id:Lemuridae:20180127181853j:plain(C)2014-2017 SUKEBAN GAMES LLC

 

サイバーパンクバーテンダー……このゲームは2070年代の近未来を舞台にした作品なのだが、やることはバーでお客さんに接客をするだけ。つまりあなた(主人公)はバーテンダーだ。それって面白いの?サイバーパンクな世界なら暴れまわりたいよ! などと思われるかもしれないが、このゲームの魅力は、そういった通常ならアクション物などの題材になる(『ブレードランナー』とか『AKIRA』とか)未来の世界を、その片隅にある場末のバーという非常にミクロな視点から垣間見れるところにある。人間の言葉をしゃべる犬から娼婦のガイノイド、水槽の脳までといった個性的すぎる客を接客しながら、このゲームの世界では当然・普通の会話が特に解説もなく進んで行く。そしてそれらについていちいち詳細が説明されないぶん、かえって読み手の想像力を刺激してきて、魅力的な世界を感じ取れると思う。

f:id:Lemuridae:20180127182858j:plain(C)2014-2017 SUKEBAN GAMES LLC

 

繰り広げられるテキストは、基本的にはバー VA-11 Hall-Aにやってくる常連さんとの他愛のない世間話(下ネタ多め)。その内容に対して、だから何?と言われればそれまでなのかもしれないが、『パルプ・フィクション』的な楽しさがあると言えばいいか、とにかく読んでいて退屈しない(同年代の会話に対してつまらねーこと喋ってんなーと思う筆者が)。また、客に提供するカクテルによって物語展開が変わるという、ほかに類の見ない新鮮なシステムになっていて、バーテンダー体験ができるし没入感も損なわないし、非常に楽しいものだった。世代を問わず懐かしさを感じるドットのグラフィックと音声ではない電子音が良い雰囲気を創りだしていて、プレイヤーが任意に選択してジュークボックスで流せる音楽は最高の出来

だから、めちゃくちゃ面白い!やめ時がない!といった感じのゲームではないが、なんというか、逆に永遠にプレイできる気がする。褒めようと思えばいくらでも褒められるゲームだけど、批判しようと思えばいくらでも批判できるゲームでもあって、要するに万人ウケしそうではないが、ハマる人はハマると思う。ある意味雰囲気ゲーかもしれないが、とりあえず筆者はこのゲームが好きだ。

 

インディーズのゲームだから長くは遊べないけれど、新品でも定価は三千円くらいなので、手軽に手に取ってみてほしい。まだ残っているのかわからないけど、店舗で購入すると初回特典のサントラCDとコースターがついてくるので、早めに購入したほうがいいと思う。ゲームもそうだけど、筆者はこのサントラを非常に気に入っている(欲を言えばもっと収録してほしかったけど)。そして思いがけず百合要素も多い作品となっているので、その手のものが好きな人には強くお勧めする。

 

発売日には購入していたのに記事を書くのが遅れてしまったうえに短めになってしまったが、以上でこのページを終わろうと思う。ヴァルハラは筆者的にはかなりオススメの一本なので、興味を持ってくれた人は買ってみてほしい(まわしもんじゃないよ)。以上、読んでくれてありがとう。

 

VA-11 Hall-A (ヴァルハラ) - PSVita

VA-11 Hall-A (ヴァルハラ) - PSVita

 

 

『誰かがあなたを愛してる』隠れた名作恋愛映画を紹介。

新年明けましておめでとうございます。平成30年、西暦でいうと2018年になりました。このブログも立ち上げてからもうすぐ2年になるんだなと、妙に感慨深い心持ちでおります。

 

…とまあ、このブログをいつも見てくれている人への挨拶は終わりにして、このページの趣旨を説明しよう。わたくし、正月に買いだめしていたDVDを視聴しておりましたところ、まさかまさかの隠れた名作を発見。あまりに面白かったために連続で二回視聴するほど気に入ったので、この映画をもっと広めたいと思い、ここにその魅力を書かせてもらうことにしました。そんなに筆者がハマってしまった映画が-- 

 

誰かがあなたを愛してる デジタル・リマスター版 [DVD]

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この映画だ。1987年の香港映画で、香港からきた女優志望の主人公と、ニューヨークの中華街で最底辺の暮らしを送る粗暴な男を軸に進む物語である。この手の映画によくあるように『誰かがあなたを愛してる』というのは日本が独自につけた邦題。原題は『秋天的童話』といい、秋の童話という意味らしい。そしてこの映画は原題が示す通り、秋の雰囲気を満喫できる素敵な恋愛映画なので、邦題の意味がわからん!…となってしまう可能性もあったのだろうが、この手の邦題にしては珍しく、ちゃんと意味があって、これはこれですごくいい。意味不明でダサい邦題がはびこっている中、筆者はこの邦題は素晴らしいものだと思う。

主演は『男たちの挽歌』で筆者を含む世の男たちの頭を、いろんな意味でおかしくしてしまったチョウ・ユンファ。時期的にも挽歌の頃の映画なので、なんといっても若々しい(といっても30越えてるが)。チョウ・ユンファはアジアの大スター俳優として現在も有名だが、個人的に、最盛期はこの映画が制作された、80年代後期から90年代初期にかけてだと思う。バイオレンス映画の印象が強いが、コメディやヒューマンドラマにもよく出ていて、その演技は幅広い。そしてもちろん、その演技力はこの映画でも遺憾無く発揮されていて、それがあまりに素晴らしいものだから、筆者は本作が『男たちの挽歌』と並んで、彼の演技の最高傑作だと思った。この『誰かがあなたを愛してる』、筆者は恋愛映画なんてあまり見ないんだけど、どハマりしてしまったわけだ。

 

さて、何がそんなに良かったのかというと、この映画はとにかく徹頭徹尾丁寧に作られていて、優しくて、切なくて、穏やかな気持ちになれるのだ。この頃の香港映画って、ある種漫画的なところが魅力だと思っていたんだけど、こんなに丁寧で巧みに心理描写が積み重ねられているものもあるんだなと驚かされた。派手な銃撃戦や過激な描写、衝撃のどんでん返しが待っているわけではないのだが、ダメダメだけど実直で、静かな優しさを持っているチョウ・ユンファ演じるキャラクター、サンパンの主人公を見る目が愛おしくて、切ない。彼は金持ちなわけではなく、絶世のイケメンというわけでもない。ギャンブルが癒しだと断言してしまう、女性が結婚相手になんて考えられない男なのだ。しかし落ち込んでいるときは黙って話を聞いてくれて、街に連れ出してくれて、「うまいものを食べて人生を楽しめ」なんて言って、お金もないのにツケで山盛りのチャーハンを頼んでくれる。そして本棚を買うお金がないといえば日曜大工で作ってくれたり、一人にしてほしい時はそっとしておいてくれて、だけど「何かあれば呼んでくれ、とんでいくから」と言ってくれるような、そういった当たり前なようでなかなかできない純真な思いが見ていてすごく、なんていうか、いい。こういうのを純愛っていうんだなって、胸を締め付けられるような思いになった。筆者もこういう男になりたいと、ある意味ステキな男の教科書だと思った。

また香港映画でありながら、その舞台はニューヨークである。全編ニューヨークロケの映像は日本人の筆者が見てもノスタルジーがあって、主題歌を含む音楽もノスタルジックで浸ることができる。秋の紅葉の街での純真な二人の穏やかな関係は、見ていてほっこりするとわかっていただけるだろう。また、そんな二人のすれ違い--お互い言わなくていいことを言ってしまって、一言多くなってしまって--そんなことからくるすれ違いなんかも非常にリアルだ。主人公の女の子にもチョウ・ユンファ演じるサンパンにも、どちらにもこの上なく感情移入できるから、この映画の場面場面を思い出すだけでいろんな感情が込み上げてくる。

男なんて、誰もが安易に夢を語る。それを応援してくれる女の人もいれば、そんなのごめんだっていう人もいると思う。だからこそ、この映画のラストのエモーショナルな展開と、その完成度、その納得度は、筆者の中でこの上なく良いものだった。ラストまで見て、この映画は筆者の中でまさに隠れた名作!の仲間入りをしたのだ。

 

…と、いうわけで、香港映画『誰かがあなたを愛してる』を紹介させていただきました。清々しいほどの絶賛をさせてもらったが、これ、感想とかをネットで調べてもあまり見つからないんだよね。だからもっとみんなに見て欲しいと思う。今なら通販で千円以下で円盤が買えるし、最寄りのレンタルショップにはなかったけど、レンタルビデオでもあるかもしれない。自信を持ってオススメするので、騙されたと思って見てみてほしい。

 

というわけで、読んでくれてありがとう。今年もよろしく!

『ひぐらしのなく頃に粋』ひぐらし初心者向けの感想。

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有名作『ひぐらしのなく頃に』のほぼ全てのシナリオを収録したプレイステーションヴィータ用ソフト『ひぐらしのなく頃に粋』をプレイしたので、その感想を書く。なお、いつもは感想を書く時は、そのゲームのパッケージ版を購入しているのだけど、このソフトは開発メーカーの倒産などの憂き目にあったために、ソフトを新品で手に入れることが困難である(困難というか、中古や新古品しかないので高い割に公式に金が入らない)。だから今回はやむなくダウンロード版を購入。現物主義の筆者としては残念だが、ちゃんと公式さんに金を払っているということはここに書いておきたい。

 

それでは本題に入ろう。『ひぐらしのなく頃に』は、冗談抜きで、最も幅広い世代に認知されている稀有なノベルゲームだと思う。実際に起きてしまった事件などへの影響を取りざたされたことも記憶に新しいし、タイトルを聞いた人の大半が、惨劇を描いた話だと知っているに違いない。そして筆者が実際にプレイした感想としては、この言葉に尽きる。

有名になるだけのことはある!

うん、面白い。特に序盤のホラー感はたいしたもので、横溝正史江戸川乱歩が好きな、言ってしまえばこの手のジャンルに飽きてしまったような筆者でも、緊張感を感じて手に汗握ることができた。怖い。閉鎖的な場所における血なまぐさい因習や、湿気を感じる恐怖。ネットがなく、グーグルアースがなかった頃の地図にない村は雰囲気抜群で、知っているあの人が…!という、スティーブン・キング的なモダンホラーの要素もあり、何度もぞ〜っとさせられる(褒めてます)こと間違いなしだ。想像するだけで嫌になる生理的な要素(そこにそれを入れますか〜)とか、痛覚的に痛さを感じる表現も多くて、だからそういう要素が苦手な人にはオススメできないが、まあ普通にホラー映画が観れる人なら大丈夫だろう。本作はホラーと同時にミステリーでもあり、その謎について書くことはネタバレになるのでしないが、序盤の出題編は特によくできていると書きたい。

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↑これ、起動した瞬間に画面に出るのでネタバレではないです(笑)

 

なのでプレイし始めて30時間くらいは、最高だぜ!…なテンションで大満足だったのだが…この『ひぐらしのなく頃に粋』(ひぐらしのなく頃に』ではなく、「ひぐらしのなく頃に粋』であることに注目)は、筆者のようなひぐらし童貞には注意が必要である。実はこのゲーム、致命的な欠点がたくさんある。本作は様々なメディアに展開した「ひぐらしの完全版」的な位置付けにあるため、言ってしまえば新参向けの配慮がない。100時間を超えると聞く大ボリュームは全てフルボイスで手抜きがなく、人気シリーズの集大成としての役割をきちんと果たしているわけだが、逆に言うと新参者がこの完全版から入ると火傷してしまう可能性も高いのだ。実際、筆者も火傷した…。

 

具体的にいうと、他のルートを読んで世界観などを理解していることが前提のルートに初見で飛ばされてしまったり、またそのルートが追加されたものなのかということもわからなくなっているのだ。事実として筆者も、初見でいきなり「染伝し編」という番外編に飛ばされてしまい、流石に何かおかしいと思ってやり直さなければならなかった。そこでネタバレを恐れつつ調べてみると、どうやら物語を楽しむには、ある程度順を経てルートを選ぶ必要があるとのこと。だから結局、新参者は攻略サイトに頼るはめになる。ボリュームがあまりに多いため、既にアニメや他の媒体でひぐらしに触れている人に向けたショートカット機能があるにはあるのだが、これはもちろん新参者には利用できないので、筆者のような人たちは延々と攻略サイトを見ながら適切な順番で話を読んでいかなければならない。これはゲーム性を付与しようとした結果、めんどくさくしかなっていないということだろう。まあ、筆者は自力で頑張ったのだが(その結果、わりと順番はバラバラに…)。

 

そしてメインのライターさんが書いた本編の他に、その後、他のライターさんが書いた追加シナリオが収録されているのだが、これを読み進めなければ次のメインシナリオが解放されない。この構成がいちばんまいった。番外編の完成度とか面白さを抜きにしても、せめてメインのルートを読み終えてから解放されるシステムにしてほしかったと強く思う。『スター・ウォーズ』で例えるなら、途中でいちいちクローン・ウォーズや反乱者たち、番外編小説を読まさせられる感じだ。 しかもこの追加番外編シナリオが総じてあまり面白くないうえに、もともとは小説や漫画などといった一本道でしかない話を、無理やりノベルゲームにしているために、バッドエンドに繋げるためだけの意味のない選択肢や、ほとんど話が変わらない別ルートを読まなければならなかったりする。『ひぐらしのなく頃に』というお話は面白いんだけど、『ひぐらしのなく頃に粋』という完全版コンシューマーソフトに関しては、ノベルゲームの悪いところが詰まり過ぎている。これは誇張抜きでそうで、立ち絵のバリエーションが少なかったり、まれに音声が再生されなかったり、SEがやたらショボかったり、追加ルートの絵があまりにも既存のそれと違っていたりと粗が多い。

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↑特にこの『宵越し編』はダメなところが詰まっていて、やたらと山場のない話が長くて、絵が独特で意味のない選択肢が多くて、ここでホントに投げ出しそうになった。

 

まとめると『ひぐらしのなく頃に粋』は

  1. ある程度順番にプレイすることが想定されているシナリオなのに、そんなことはお構いなくルート分岐する
  2. ボリュームを増やすために、ほとんど違わないシナリオを複数やらされる
  3. オープニングでネタバレ
  4. 追加イベントCGが従来の絵と全く違う

という、以前このブログで紹介したノベルゲームの悪いところがなかなか多く詰まっているソフトである。だから筆者は初めてひぐらしに触れる人は、まずは原作をやるなりアニメを見るなり漫画を読むなり、とにかく原作者、竜騎士07さんが手掛けたメインのシナリオを楽しむべきで、シリーズすべてを網羅したくなるほどハマったときにこのソフトを買うべきだと思う。

 

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竜騎士07さんが手掛けたシナリオだけなら高得点をあげられるゲームだったと思うんだけど、他のライターさんが手がけた、南井さんが主人公のシナリオとか、正直けっこう退屈でした。それに竜騎士さんが手掛けたシナリオにも、うーん…というところもあって、とあるキャラクターのクズさにイライラしたり、「男のヒステリーはみっともない」とは私の愛するルパン三世の言葉なのだが、主人公がなかなかヒステリックに叫び倒してイライラしたりもした。

ということで実は、65時間プレイしたところでやめてしまいました。根気が続かなかった…。なので、ここまで読んでもらってそれはないと思うのだが、実は今回、筆者はこのゲームをクリアしていない。だけど少なくとも40時間くらいは楽しんだんだから、これはつまらなかったと言っているわけではないのだ。例えるなら、序盤は面白かった漫画みたいな感じで、途中からなんとなく読まなくなったからって、序盤が面白かったということは否定しない。ただ、ちょっと長すぎて休憩が欲しくなったというか、一時的な中断で…クリアしたらまた感想記事を書くかもしれない。…いろいろ残念な作品だ。ま、これ全て、筆者の感想なんですけどね。

 

ここまで、なかなかに批判させてもらったが、筆者は『ひぐらしのなく頃に』が好きです。面白かったです。これは面白かったからこその不満なのです。酷評のつもりじゃあないんだよ…?

 

 

 およそ半年後、クリアした際にも書いたのでよろしければこちらも……

lemuridae.hatenablog.jp