オタクノ作る時間

主にノベルゲームについて取り上げてきた元学生のブログ

『ダブルキャスト』PSP版を紹介 (ネタバレ抜き)

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名作と名高い『ダブルキャスト』をプレイしたので、ネタバレを極力避けて紹介しよう。1998年にSCEから発売されたフルボイス・フルアニメーションのアドベンチャーゲームのシリーズ、それが『やるドラ』である。『やるドラ』とは、“みるドラマから、やるドラマへ”というキャッチフレーズから来ていて、上述したようにフルアニメーションであるために従来のテキストアドベンチャーゲームとは一線を画す豪華な演出を売りとしていた。

今回筆者がプレイしたのはその『やるドラ』の1作目、プレイステーション用ソフト『ダブルキャスト』を2005年にプレイステーションポータブル用に移植したものである。

 

このゲームは、アニメーションで描かれる物語の要所要所に選択肢が出てきて、その選択によって物語が分岐していくゲームだ。これだけだとチャプター付きのDVDと変わらないと思われるかもしれないが、ちゃんと頭を使わないとグッドエンドにはたどり着かないようになっているため、昨今横行するただ読むだけのテキストアドベンチャーより、よっぽどゲームしているのが面白い。

 

夏休みを直前に控えたある夜、大学生の主人公は先輩たちに強引に酒を飲まされ、ゴミ捨て場で酔いつぶれてしまう。やがて目が覚めると見知らぬ女の子に介抱されていて、話を聞くと彼女は記憶喪失であるという。自分の名前以外は何もわからないという正体不明の女の子を不審に思いつつも、なし崩し的に家に泊めることになり、2人の奇妙な同棲生活が始まるのだった。

夏休みが始まると、主人公の所属する映画研究部は映画製作を始める。遂にそれまで部室に封印されていた、いわくつきの脚本が使われることとなったのだ。しかし噂のある脚本だけに、誰も主演女優を演じようとはしない…。

そこで白羽の矢が立ったのは、例の記憶喪失の女の子 赤坂美月であった。映画撮影や同棲生活を通じて2人の距離は狭まっていくのだが、撮影が始まると同時に主人公の身の回りで奇妙なことが起こり始める。そう、まるで彼らが撮る映画の脚本のように…。

 

本作の魅力はズバリ、ハイクオリティのアニメーションで描かれるヒロインの赤坂美月にある。90年代ヒロインらしい元気な女の子で、後藤圭二氏の可愛らしい絵の力もあって、今の時代でもというか、今だからこそ本当に魅力的なヒロインになっている(少なくとも筆者にとっては)。アニメーションで可愛い仕草をガンガン見せてくれるのが非常にうれしいのだ。ヒロインとの距離がどんどん狭まっていき、互いに意識しだすところなんかは本当にニヤけてしまう…ああ、羨ましい。

 

 

 

 

 

 

 

⚠︎ここから微ネタバレ

 

 

 

 

 

 

 

 …とここまでギャルゲーのように書いたが、このゲームはサスペンスホラーゲームである。上述の可愛いヒロインとシリアスなサスペンスのギャップが記憶に残る不気味さを持ち、現在と過去が巧妙に絡んでいる事件の真相と犯人の動機を知るには、様々なキャラクターから真意を聞きだす必要がある。そのためプレイヤーはバッドエンドを避けながら、何度も繰り返しプレイすることを求められるのだ。視覚的に、精神的に追い詰められていく演出が上手く、じわじわと怖い。舞台である夏の雰囲気も抜群に出ているため、夏の夜にプレイすると楽しそうだ。

音楽に関しては梶浦由記が担当しており、記憶にのこるものが多数。特にエンディング曲『door』はクリア後に清々しい一曲。また声優さんたちも豪華で、脇役に至るまで見事な演技である。ヒロインは特に良い。高品質なアニメーションを担当したのもプロダクションIGとあって納得。というかこうやって書いてると一流たちが集まって作ったゲームなんだなと思う。

 

ただPSP版は問題ありだ。読み込みが多くてアニメーションが止まってしまったり、なによりUMDがカシャカシャうるさい。まあこれに関してはハードの問題なので仕方ないけれど。なので、できればプレイステーション版をプレイしてほしい。中古ならすごく安いので。

 

ダブルキャスト

ダブルキャスト