オタクノ作る時間

主にノベルゲームについて取り上げてきた元学生のブログ

『季節を抱きしめて』PSP版を紹介。

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前作『ダブルキャスト』には大いに楽しませてもらったので、続いてプレイした『季節を抱きしめて』を紹介する。

1998年にSCEから発売されたフルボイス・フルアニメーションのアドベンチャーゲームのシリーズ、それが『やるドラ』である。『やるドラ』とは“みるドラマから、やるドラマへ”というキャッチフレーズから来ていて、上述したようにフルアニメーションであるために従来のテキストアドベンチャーゲームとは一線を画す豪華な演出を売りとしていた。

今回プレイしたのはその『やるドラ』の2作目、プレイステーション用ソフト『季節を抱きしめて』を2005年にプレイステーションポータブル用に移植したものである。

 

 このゲームは、アニメーションで描かれる物語の要所要所に選択肢が出てきて、その選択によって物語が分岐していくゲームだ。これだけを聞くとチャプター付きのDVDと変わらないと思われるかもしれないが、ちゃんと頭を使わないとグッドエンドにはたどり着かないようになっているため、昨今横行するただ読むだけのテキストアドベンチャーよりはよっぽどゲームしているのが面白い。

 

4月から大学に入学した主人公は、予備校に通っていたころから“友達以上、恋人未満”のトモコと新しい生活を送っていた。そんなある日、桜の木の下で倒れていた不思議な女子高生と出会う。初恋の相手“麻由”にそっくりな彼女に心揺れる主人公。謎めいた少女の秘密が明かされるとき、3人の関係は変わってしまう…。

 

季節を抱きしめて』は春の桜の下で揺れ動く感情を描いたラブストーリー。98年のゲームということもあって、スマホもなければネットもない(一応あるけど)時代の話なのが個人的には見どころだ。明らかに今とは違うファッションだったりと、全体の90年代感が面白い。筆者は90年代恋愛アニメの空気感が好みで、ジブリの『海がきこえる』なんかが大好きなのだが、このゲームにも共通するものを感じた。『季節を抱きしめて』というタイトルに偽りなく、とにかく“春”を感じさせてくれるところが本作の最も優れたところだと思う。月に夜桜、花見に新入生の新生活と、春要素を惜しげもなく見せてくれる。プレイしていると春の匂いがしてくるほどだ。さらに主題歌の『季節を抱きしめて』は春の出会いと別れを感じさせてくれる名曲である。このゲームの全てが集約されていると言える。

アニメーションはTV版のエヴァっぽい作画というか、メインヒロインが惣流アスカに瓜二つ。また“友達以上、恋人未満”のトモコを三石琴乃さんが演じているが嬉しい(三石さんの声が若い!)。90年代末のアニメが好きな人は必プレイだ。おそらく当時最高のスタッフが集まっていると思われる(IGの西久保さんとか)。

 

楽しくプレイしたわけだが、『ダブルキャスト』ほどのパンチはない。両作ともに記憶喪失のヒロインが登場するのだが、『季節を抱きしめて』のヒロインの正体には色んな意味で驚くこと間違いない。また主人公にはあまり好感を持てなかったりもする。このあたりが評価が分かれるところだと思う。個人的には修羅場シーンの尋常じゃない緊張感が好きだが上述したヒロインの件と主人公の件は減点対象だ。

季節的にもまさに今がピッタリのゲームなので、春の匂いと甘酸っぱいラブストーリーを楽しみたい人にはお勧めです。

 

季節を抱きしめて

季節を抱きしめて