オタクノ作る時間

主にノベルゲームについて取り上げてきた元学生のブログ

『劇場版 CLANNAD』 巨匠が手がけるギャルゲ原作映画を紹介。

 当ブログではゲームソフト『CLANNAD』をかつて酷評したが(過去記事参照)、この『劇場版クラナド』は原作を好まない筆者でも(いろんな意味で)非常に楽しむことができた。

原作はこちら↓

lemuridae.hatenablog.jp

 

この映画はドレッドノート級の異色作であり、今後二度と現れないタイプの映画であると断言できる。ではなにがそんなに異色なのか。監督の人選が異色なのである。

 

あのクラナドを巨匠 出崎統監督が映画にしたのだ!

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 出崎統監督を知らない人のために軽く紹介しておこう。出崎監督はアニメ興隆期から死の瞬間まで生涯現役で数多くのアニメーションを手掛けたアニメ界の伝説だ。鉄腕アトムあしたのジョー、ベルばら、コブラブラックジャックエースをねらえ! などでその才能を発揮し、後に出崎演出と呼ばれる革命的なアニメーション演出を生み出した。例を挙げると、印象的な力強い止め絵あしたのジョーのラストはあまりにも有名)・アニメでありながら透過光や逆光を描く(オペ前に照明の光を受けるブラックジャック)・繰り返し3回PAN(弾丸サーブを打ち返す)などだ。これらの演出はアニメの画面を力強くし、当時流行っていた劇画をアニメーション化することに成功した。筆者は出崎監督の演出スタイルは宮崎駿と真逆だと思っていて、要は少ない作画枚数でもアニメーションは面白くできると証明したのだ(どちらが優れているというわけでなく)。

個人的にはルパンの初期テレビスペシャルやスペースコブラブラックジャックOVAなどが出崎統監督の作品では好きだな。めちゃくちゃカッコいい。

 

 で、そんな力強い演出を得意とする出崎統がギャルゲー『CLANNAD』を監督したのだ。原哲夫荒木飛呂彦が少女漫画を描くようなものだぞ。適材適所って言葉があるだろ(笑)。筆者はいったいどんな映画になるんだよと死ぬほど楽しみにしていて、原作をクリアする前からDVDを購入していたのだ。そしてクリア後に視聴した。うむ、予想どおりすごい映画になっているぞ(笑)。

 

 冒頭から透過光が多用されていて、萌えアニメと出崎演出の融合という珍しいものを見れて歓喜

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© VisualArt's/Key/東映アニメーションフロンティアワークス

 

桜の下でヒロインに出逢って止め絵!花びらが渦巻いたりとなんとも力強いクラナドだ(笑)。なんか全体的に演出が昭和なのである。だが意外に(というと失礼だけど)悪くなく、画面自体の持つパワーが半端じゃなくて見ていて楽しい。約80時間もの原作を90分でまとめるという無茶ぶりに応えるために、前半からルパン三世チェイスシーンのような疾走感で話が進む。笑ったのは親友である春原が喧嘩するシーン、出崎演出により喧嘩ってレベルじゃない暴れっぷりである。

どりゃあーーー!(あしたのジョーかよ?笑)

それからヒロインが主人公の横を走り抜けるシーンで三回繰り返しPAN。これがトランザムやデビルバットゴーストに見えて笑った。いや、それパンチとかに使う演出でしょ?(笑)

 またキャラクターたちも出崎流にアレンジされている。メインヒロインが妙に明るくなっていたりと違和感があって、特に智代の舎弟と化した杏には もはや爆笑した。指揮棒ふってるだけのヒロインもいたし合気道を極めた公子さんも笑い要素に。そんな感じなので監督には失礼すぎるが、前半は完全にイロモノ的な目で見て笑っていた。しかし後半くらいからは個人的に原作で不満だった部分が改良されていく。あれ?普通に良くなってきたぞ…。

 劇場版のオリジナルシーン、落ち込んだ主人公を支えるために高校時代の友人たちが集まるくだりなんかは筆者がまさに原作で見たかったものだし、原作では嫌いだったキャラが映画版では漢になっていた。そして肝心のラストが原作とは異なるのだが、筆者は断然映画版の方が好きだな。さすが出崎統監督というかなんというか、バカにしてすいませんでしたという感じだ(やっぱり昭和なギャグとかは笑ってしまうのだが)。大幅な話の変更や圧縮が行われているものの、ある程度納得できる改変が目立つ。過剰になると予想していた透過光 逆光も春の桜並木の華やかさにあっていて映像的に見応えのある良いものだった。要するに原作と別物として考えると少々演出が古臭いものの楽しめるんじゃないかな? 手放しで褒められるものではないが良いところもたくさんあって好印象である。ただ90分ではさすがに無理があったなとは思う。詰め込み過ぎだ。

 

出崎ハーモニー×クラナドの印象的なシーン↓

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 © VisualArt's/Key/東映アニメーションフロンティアワークス

 

 一部で酷評されている映画らしいが、他にも京都アニメーション制作で原作に忠実にテレビアニメ化されたんだし、これはこれで楽しんだら良いと思う。不思議な化学反応が起きてる面白い映画だよ。なんというか、出崎演出によって日常を描いているのに非日常的な映像になっているのが見どころだな。まあ原作が好きな人はそういう改変が嫌なんだろうな〜。気持ちはわかる。 

 

しかしDVD買って良かったと思える面白い映画でした。なんとまさかのお気に入り映画になりました。メグメルがかかるオープニングとか凄く好きだ。

というわけで読んでくれてありがとう。

 

 画像は全て 劇場版「CLANNAD」 DVD コレクターズ・エディション より。