オタクノ作る時間

外に出ることを好まない学生による、映画やノベルゲームの批評を主とした非営利ブログです。

007シリーズ初心者が年代順に観て感想を書く! 80年代編

当ブログでは007シリーズ初心者である筆者が年代順に作品群を観て感想を書いている。この記事では80年代の作品群の感想を書くので、良かったら読んでいってほしい。それ以前の作品群の感想は過去記事を参照してくれ。

 

lemuridae.hatenablog.jp

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12.『007 ユア・アイズ・オンリー

1981年のシリーズ第12作。宇宙にまで進出しちゃった前作『ムーンレイカー』とは打って変わって『女王陛下の007』以来のシリアスな作品である。待ってました! 立て続けにコメディ路線の作品が続いた中の本格スパイ路線だったので、筆者は大歓喜。これまでで最もリアルな作品だったんじゃないかな。『ロシアより愛をこめて』よりも現実的だし、女と出会うととりあえずSEXしてたロジャーボンドが分別のあるキャラになってたのが印象的。非常に楽しい2時間でありました。

冒頭は過去作で死んでしまった妻の墓を見舞うボンドの姿が描かれる。ロジャー・ムーアの目の演技が素晴らしい。全てを物語っている。いつもは軽いロジャー・ムーアのボンドが神妙な顔をしていると、「あ…今回は本気なのかな?」と思わされた。これは、今回はシリアスにいきます!という監督の宣言だといえるだろう。ジェームズ・ボンドも歳を重ねた結果、貫禄が出てきた。ボンド夫人の墓標に晩年1969年と刻んであったから、ボンドも若く見ても40代のようだ。

本作はアクションシーンが本当に多い。開幕から飛び回るヘリコプターにしがみつく(スタントマン、すげー!)。そして序盤に描かれる007恒例のカーチェイスは確実に過去最高の出来。『ドクター・ノオ』の頃のものと比較すると、その進化に感動を禁じえない。『カリオストロの城』のようにコミカルかつ緊迫感のある素晴らしいカーチェイスだ。もうこの時点でこの映画はただものじゃないと思っていたのだが、その後には、これも007恒例の雪山でのスキーチェイスがある。そしてこっちも過去最高の出来だ。ほんとにこんな映像よく撮れたな…と感心しっぱなしである。怪我とかしてなきゃ良いが。

そして今回のボンドガールはジェニファー・コネリー風のクールビューティー。筆者の好みにドストライクである。黒髪ロングが良い…良い。上述したように今回のボンドは節操があるから、すぐにこのヒロインとそういう関係にならないのが好印象。バカ女っぽさが皆無である。画面に映るだけで嬉しいなあ…。

総論として、ハチャメチャな007にそろそろ飽きてきた頃に最高の一本。こういうのでいいんだよ、こういうので。私的には『私を愛したスパイ』を超えてロジャーボンド最高傑作である。

私的評価:★★★★★★★★☆☆ 8/10

 

13.『007 オクトパシー

1983年のシリーズ第13作。前作が完全にシリアスに振り切っていたのに対し、本作はギャグ路線なのかシリアス路線なのか中途半端である。いつもよりは真面目に話が進むのだが、笑うシーンも多少あるといった感じだ。この配分ならギャグを減らして前作のような作風にしてほしかった気がする。SEXしまくるボンドに戻って平常運転である。前作の風格はどこへやら…。しかし全体を通して考えるとシリーズでも上位に値する一本。筆者はなかなか好きな映画である。

お話は“レディーの卵”という秘宝の争奪戦を描いたもの。冒頭でボンドが登場すると、その老化を感じる。ロジャー・ムーアも007はこれで6作目、そら歳も取るよな~。そろそろ交代の時が来ている。この映画、007というより『インディ・ジョーンズ』っぽい。ロジャー・ムーアの老化によってか演出によってかはわからないが、逃げ回るシーンなどに一生懸命感が半端ないので、余裕を見せるボンドというよりは泥臭いインディなのだ。特にインドの雑踏でコミカルかつ必死にカーチェイスを繰り広げる場面は、かなり『レイダース』らしさがある。非常に楽しいのだが、本来のボンド像から離れている感もしなくはない。ま、楽しいから良いか。このへんはほんとにロジャー・ムーアならではである。晩飯に羊の頭を出されるシーンは『魔宮の伝説』だよね(笑)。

秘宝を賭けたカジノでのギャンブルとか、敵のボスとの晩餐会とか、静かな駆け引きも光る本作。中盤に本作の謎に包まれたヒロイン、オクトパシーが登場するまではシリーズでも満点級に楽しんでいたのだが、そのあとはちょっと退屈。ワニの変装をして潜入するボンドとか、電鋸ヨーヨーとか、シリーズ中期っぽいギャグ要素がはっちゃけきれてないバランスで登場するので余計に感じる。まあワニには笑わせてもらったけども。

それからソ連タカ派将校の陰謀とかが描かれるのだが、この辺は安っぽい。中盤までの謎めいた魅力がなくなり、お宝争奪戦が終わると退屈になってくる。ストーリーはイマイチだ。しかしこの後、列車の上で殴り合ったり(どうやって撮った!危険!)飛行機にしがみついたり、と見どころ満載のド派手なアクションが待っているので楽しめるハズだ(ちょいちょい合成丸出しのシーンがあるけど)。あと特筆すべきは、銃撃シーンにスピード感があるところ。昔の映画って一撃必殺的によく狙って銃撃するから物足りないのだけど、この映画は今風にスピーディーに撃ちまくるのが楽しい。階段の手すりにスライディングしながらアサルトライフルを連射するシーンはジョン・ウー映画っぽくてかなりカッコよかった。

総論として、ダメなところもあるがシリーズ上位の一本。なんか007というよりは『インディ・ジョーンズ』風だけどね。シリーズとしてどんどん平均点が上がってきているのが嬉しい限りである。

私的評価:★★★★★★★★☆☆ 7/10

 

番外編.『ネバーセイ・ネバーアゲイン

1983年のシリーズ番外編。この映画は権利の問題がいろいろとあって既存のシリーズとは別に製作された映画である。だからお馴染みの音楽や冒頭のガンバレル・シークエンスを見ることは出来ない。とはいえショーン・コネリーが『ダイヤモンドは永遠に』以来にジェームズ・ボンドを演じているので、ここにも感想を書こうと思う。まあ、正シリーズではないということだけ頭に入れといてくれれば良いかな。

映画が始まってもお馴染みの音楽が流れないのが寂しいが、オープニング曲がかかりながら映画が進行し、ましてやアクションシーンが見ることができるのはこの映画だけだろう。お約束破り(お約束を使えなかったからだが)はなかなか新鮮である。意外だったのは、10年ぶりにボンドを演じるショーン・コネリーをもったいぶらずにすぐに見せてしまうところ。ぱっと顔出しするので、なんだか拍子抜けする。2代目ボンド ジョージ・レーゼンビーの顔見せの時は影だけ映したりして期待を煽っていたのに…。まあ、それほどコネリーボンドがお馴染みの存在だということかもしれない。

しかしショーン・コネリーよ、あなたは老けすぎた。『ダイヤモンドは永遠に』の時ですら老化を感じていたのに、その10年後にカムバックするのは無理があった。いや、もちろんコネリーボンドが見られるのは本当に嬉しいのだ。しかし引き際というものがある。さすがに身体がなってないし、病院での取っ組み合いなんかも、もう少し若ければ見ごたえ抜群になったのに…と思わざるを得ない。

見所はシリーズ初(シリーズ作品ではないが)のバイチェイスと、こちらはお馴染みサメとの格闘シーンだ。バイクのシーンは非常にカッコよくて、とくにトラックの下を車体を傾けて通過するシーンは最高に燃える。スタントマンさん大活躍である。しかしこのシーンもジェームズ・ボンドのテーマを流すことができたらさらに燃えたと思う。そういうところは仕方ないが残念である。そしてサメとのシーンはこのシリーズお馴染みではあるが、今回は本物のサメの存在感が半端ない。というかあれ、どういう風に撮影したのだろう?人間のかなり近くまでサメが迫ってたけど、危なくないのか…? 一匹に追われてると思っていると数匹に囲まれていたとわかるシーンなんて、ほんとにゾッとした。怖い怖い…。

この映画、実はシリーズ第4作『サンダーボール作戦』のリメイクなのだが、筆者は『サンダーボール作戦』がシリーズで一番好きでは無かったりする。だからこの映画にもあまり乗れなかった。非常に残念だ…。なんで『サンダーボール作戦』なの?『ロシアより愛をこめて』とかにしてほしかったよ! それに『サンダーボール作戦』最大の見せ場の水中戦があまりなかったのはなぜ…?

結論、ショーン・コネリーのボンドが再び見られたことは嬉しかったが、なんともイマイチな一本。強いて言えば久しぶりにスペクターの面々を見られたので60年代007感を楽しむことができたかな。あとミスター・ビーンとボンドの共演が見られるのも楽しい。そこらは良かった。しかし同じ年に2本の007映画があったというのは興味深いことだ。そしてコネリーもロジャー・ムーアも老けすぎだよ。

電気ショックゲームとか何をどうハラハラすれば良かったんだ…。

私的評価:★★★★★☆☆☆☆☆ 5/10

 

14.『007 美しき獲物たち

1985年のシリーズ第14作であり、ロジャー・ムーア主演の最後の007。まずは一言、「ロジャー・ムーアさん、おつかれさま!」と言いたい。見事なボンド像を提示してくれた偉大な三代目ボンドに拍手!『死ぬのは奴らだ』から計7作、歴代で最も多くの作品でジェームズ・ボンドを演じた功績を称えよう。

そして彼の最終作である本作は…まあまあの出来であった。残念ながらシリーズの中では上位にも下位にも位置しない平凡な一本と言えるだろう。

冒頭からいつものようにスキーチェイスが始まるのだが、これはもはや様式美。この既視感だらけのシークエンスの中で新鮮だったのが、ボンドがスノボに乗る場面。何気に今までになかった。テンションが上がる。ロジャー・ムーアは高齢からボンド役を降りることを決意したそうだが、このシークエンスを見るとそれも納得。当時は58歳だったらしく、確かにもう軽く老人の域に達している。終盤のダーティハリーに出てたイーストウッドみたいだ。老化に対してなんとも言えない悲しみを覚えているとオープニングロールが始まる。音楽が流れ始めると…スゲーカッコいい! イントロのかっこよさはシリーズ随一であった。

本作はICチップ産業の独占を図る悪役をボンドが倒す話なのだが、特徴となるのは悪役を演じるのがクリストファー・ウォーケンだというところだろう。彼の存在感のおかげで、ドナルド・プレザンスクリストファー・リーに引き続き、シリーズでも記憶に残る悪役になっているのは流石である。役どころも美味しく、人工的に作られたサイコパスという設定で、非常にキャラが立っていて良い。やはりボンドと敵対する悪役はそれなりの存在感がないといけないなと思った。しかし本作において、そんな彼の存在感を超えているのがグレイス・ジョーンズさん。筆者はこの映画で初めて知ったのだが、素晴らしい女優さんである。この映画を語る際、彼女に触れない者はいないだろう。ジョーズ以来の良敵キャラじゃないかな? 

今回はフランスが舞台で、エッフェル塔の場面などが象徴するように、フランスを堪能できる。つくづく007は旅映画でもあるなと思った。上流階級が競走馬の競売のために集まる建物が美しいフランス建築で、ここにもフランスの良さがある。そこにボンドが偽名を用いて潜入するのだが、久しぶりにちゃんとスパイしてるな〜という感じだ。

総論として、そこそこな一本。しかしこれでロジャーボンドも最後だと思うと2回見てしまった。人工地震を起こそうとするあたりからが退屈かな。前作『オクトパシー』の方が好きである。

私的評価:★★★★★☆☆☆☆☆ 5/10

 

15.『007 リビング・デイライツ

1987年のシリーズ第15作。ティモシー・ダルトンジェームズ・ボンドを演じた初めての映画である。彼のボンド像は前任者で言うとショーン・コネリーに近い。ただコネリーよりも一回り若く、スマートでもあるところが独自の魅力だろう。観るまでは想像できなかった彼のボンドだが、映画の内容そのものもあいまって非常に良い。そしてこの映画自体も、今のところシリーズ最高傑作だと思う。

本作は007ならではの秘密兵器やボンドカーが大活躍する。そして素晴らしいと思ったのが、そうでありながらもバカバカしくはなっていないところ。ふつうあれだけ荒唐無稽でありえない兵器が画面に映ると話の真剣みが削がれると思うのだが、この映画は痛快なシーンがありながらもシリアスなトーンは常に保たれている。007らしさとシリアスさの両立に成功しているのである。そして『ロシアより愛をこめて』以来の現実的な東西対立が描かれているのも見どころだ。権力闘争や国境越え、アフガニスタン侵攻といった政治的な要素が上手くストーリーにリンクしている。

個人的に驚いたのが、ボンドと同じく本作ではマニーペニーを演じる女優さんが変わっていたことだ。かなり若返っている。というか一応、このシリーズは第一作『ドクターノオ』から話は繋がってるんだよね? だとしたらキャラクター達は何歳になってるんだ…?

ヘイロー降下に始まり、走行するジープにしがみつき、真夜中にスナイピングし…とテンコ盛りな本作。最も燃えたのがめちゃくちゃカッコいいボンドカーでのカーチェイスだ。『ゴールドフィンガー』を新しく作り直したようなアクションシーンで大満足である。スキーチェイスならぬチェロチェイスには大変楽しませてもらった。総じて、ダレるところもあるが最高に面白い一本。なによりボンドがカッコよく、ヒロインが可愛い。アクションも山ほどあるし見ごたえ抜群である。

私的評価:★★★★★★★★★☆ 9/10

 

1989年のシリーズ第16作。ティモシー・ダルトンジェームズ・ボンドを演じた最後の映画である。彼のボンドはカッコよくてもっと見たいと思わせるものがあるのに、たった2本しかないというのが悔やまれる。まあ、たった1本しかないジョージ・レーゼンビーよりはマシだけど。

本作は前作に引き続きシリアスな内容である。麻薬王の凶行により親友が脚を失い、そしてその花嫁が殺されたことから、ジェームズ・ボンドが私的な復讐に走る話だ。もしかしたらシリーズで最も暗い話かもしれない(『女王陛下の007』と同じくらい)。本気で怒ってるボンドを見るのはいつぶりだろう? その容赦のない復讐劇を見ていると、ボンドは敵に回してはいけない男であると確信した。殺しのライセンスを失ってなお私刑に走る姿はなかなか珍しいものがあり、『ダイヤモンドは永遠に』以来の本気のボンドである。

個人的に今回もサメが出てくるところに「やっぱり007にはサメが必要だよな~」と思った。どうして007の悪役は敵を捕らえると、銃殺せずに何らかの動物に(サメとかワニとか)食べさせようとするんだ?(笑)さっさと殺せば脱走されずにすむのにな。

見所はたくさんのアクションシーンとブチギレてるボンドだ。とくに敵の飛行機にしがみつき、アクロバット飛行の中で飛行機をジャックするシーンは凄かった。スタントマン大活躍である。それから麻薬王の用心棒役として、めちゃくちゃ若いベネチオ・デルトロが出演していたのに驚いた。若っ!? 若いころからあんなにヤバい目をしてたのね(笑)。

総じて、面白いんだけど前作と比べると見劣りする一本。ボンドがライセンスを失ってるから、本編の大部分において孤独な戦いをしているのが注目ポイントだ。だからボンドカーなどがあまり見れないのが残念である。あと無駄に残酷なシーンが多かったのは何なんだろう?

思ったんだけど、この映画が公開されたのは1989年。1989年といえば、ベルリンの壁が崩壊した年。もう冷戦も終わったわけだが、これからはどういうストーリーになるんだろう? だってスペクターももういないんだぜ?

私的評価:★★★★★★★☆☆☆ 7/10

 

80年代作品の総論。

ロジャー・ムーアがボンドを卒業したり、ショーン・コネリーが復帰したり、ティモシー・ダルトンが新たなボンド像を提示したりと様々なことが起こった80年代。個人的は、ここらの作品群はかなり面白かったと思う。『ユア・アイズ・オンリー』やティモシー・ダルトン二部作など、正当なシリアススパイ映画が帰ってきたのが嬉しかった。そして筆者は『オクトパシー』が結構好きである。なんか楽しい。残念だったのは『ネバーセイ・ネバーアゲイン』と『美しき獲物たち』で、双方とも記念すべき作品なのに、イマイチ面白くなかったなあ…。『リビング・デイライツ』は今のところマイベストボンド映画である。ティモシー・ダルトン…なんで2本しか出てないの…?

 

以上、読んでくれてありがとう。時間がかかるかもしれないけど、全作感想を書くのでお楽しみに!