オタクノ作る時間

外に出ることを好まない学生による、映画やノベルゲームの批評を主とした非営利ブログです。

『この世界の片隅に』 今さらながら感想を。

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昨日、異常なまでに評判の良いアニメーション映画『この世界の片隅に』を観てきた。今や世評も定まり、一部では昨年度ナンバーワンの評価もされているこの映画。筆者の期待値も上がりに上がっていたのだが、結果 期待を裏切られることもなく非常に楽しむことができたため、今回はその感想を書くことにする。なお、公開から既に数ヶ月たっているので、もうネタバレしても良いだろう。この記事にはネタバレが含まれるため、未見の人はここで帰ってほしい(というかほぼ、見た人向けのページである)。

 

それでは…

実はこの映画、評判が良いのは知っていたんだけど、劇場はスルーして円盤の発売を待とうと思っていた。というのも、上映館数があまり多くないこともあり、筆者としては、ちょっと遠出しないと観ることができないのだ。それに戦争映画って観賞後に落ち込んでしまうしな〜と思ったりして、なかなか重い腰をあげる気にならなかった。だけども数日前、この映画の監督を務めているのが、あの二丁拳銃ガンアクションアニメ『ブラックラグーン』と同じ、片渕須直さんであるという事実を知り、その作風の広さに驚愕するとともに興味を惹かれたため、劇場に足を運んでみた。結果、今まで観に行かなかったことに後悔し、同時に劇場で観ることができて良かったと思った。

 

この映画って、本当になんか独特な作品だと思う。今まで観てきたどの戦争映画とも違って、なんというか、ほのぼのしてるし、コメディだし、ゆるい。主人公の すずさん はほわ〜っとしてて可愛いし、なんか戦時中版けいおん!って感じ。すずさんの、大状況にいながらもマイペースさを持ち続け、それゆえに世の中を客観的に見ている感じが、自伝漫画における水木しげるみたいだな〜と思いながら観ていたら、中盤で腕を失ってしまうシーンがあって、本当にビックリした。失った手が、利き手かそうでないかで凄い差が生まれるんだな~と。想像力を奪われるということは残酷なことである。

 

凄いな~というか、本当に敬意を抱かざるを得ないのが、この映画で描かれる人たちがみな、どれだけ悲惨な状態でも、今現在を精一杯楽しんでいるところ。能天気というかなんというか、押しつけがましさがないぶん、より視聴者に委ねてくる部分が多い。道端の片隅にある雑草をあんなに楽しそうに料理してるシーンなんて見たことなくて、笑っちゃいけないんだろうけど笑ってしまう。クソまずい米の炊き方をしたり、嫁ぎ先の苗字を知らなかったり、二言目には「あちゃ〜」って言って頭をかいてるゆるい女の子が、時代という大きなうねりの中で追い詰められ、片隅にすら居場所を与えられない世界の残酷さと、奪われるものの悔しさ。敗戦という言葉の重さと、筆者とほぼ同い年の女の子が頑張る姿、その強さ、女性の強さに何度も泣かされました。何気ない日常から見える世界の姿と、決して涙を見せなかった主人公を、あのゆるいほのぼのした女の子を、地べたに這いつくばらせて泣かせるあのシーンは、ああ!やめてくれ!ってなって、筆者はボロボロ泣いてしまった。

 

実際に すずさん みたいな人がいたのかはわからないけど、非常にリアリティがあり、キャラクターのその後が知りたくなる良い映画だった。見る前は重苦しい映画なんだろうと思っていたけど、実際には(重いシーンもあるものの)テンポよくゆるいシーンが続く見やすい映画でした。二時間越えというアニメーション映画としては長い上映時間も苦ではない。確実に日本映画史に残る一本だと思うので、必見である。空襲や大砲の爆音の怖さは劇場ならではのものだと思うので、筆者は公開している間にもう一度は観に行こうと思う。

 

というわけで、読んでくれてありがとう。