オタクノ作る時間

主にノベルゲームについて取り上げてきた元学生のブログ

『かまいたちの夜2』クリア後の感想。

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先日、PSP用ソフト『かまいたちの夜2 特別篇』をクリアしたのでその感想を書く。しかしまずはその前に、前作である『かまいたちの夜』に対する筆者のスタンスを軽く述べておこう。前作『かまいたちの夜』は筆者にとって無二の特別なゲームであり、ノベルゲームという媒体の可能性を信じさせてくれた特別なゲームだった。プレイヤーが、自分の手で推理をしなければ被害者がどんどん増えていくという閉鎖空間におけるサスペンス体験はゲームならではのものであり、小説でも映画でもなし得ないエンターテイメントは筆者にとって非常に衝撃的なものだったのだ。ましてやこのゲームはまだまだサウンドノベルという媒体が確立していなかった頃の作品。というか、この作品がサウンドノベルを確立したのである。昨今のノベルゲームも全て『かまいたちの夜』の影響を受けていると断言できるし、そしてそのどれもが原点を越えているとは思えない(マルチサイトやフローチャートを用いたものなど、進化形は生まれたが)。大げさにいうと、初めて作品世界に干渉できるエンターテイメントがノベルゲームという形で成立したのだと思った。まさに原点にして頂点である。

で、今回取り上げる、その続編の『かまいたちの夜2』はどうか? 結論として、こちらは平凡なホラーサウンドノベルになってしまっているという印象だ。プレイする前から賛否両論であるということは知っていて、ある程度ハードルを下げて臨んだつもりだったのだが、覚悟していた以上に微妙な出来であった。

確かにプレイを開始してしばらくの間は、前作に比べて格段に進化した演出やお馴染みのシルエットなど、非常に楽しめていた。前作と同じ最高の音楽と、読ませることが上手い演出。ダラダラと紙芝居を見せられるだけのノベルゲームもたくさんプレイしているから、やはりチュンソフト製のテンポの良さというか、基礎のレベルの高さには唸らされた。

しかしメインなる「わらべ唄篇」を終える頃にはもうガッカリしていた。密室サスペンスの要素は薄いし、容易に特定できる真犯人には拍子抜け。前作のような緊張感はないし、前作での醍醐味、「プレイヤーが物語に介入している感」が全然しなかったのだ。本当に、話を読んでいるだけというか、自分の手で被害者を減らしている感がしない。これでは平凡なノベルゲームである。『かまいたちの夜』という冠でこの出来は非常に残念だった。

前作と同じテイストを避けたことは良しとしよう。吹雪の中のペンションから、江戸川乱歩横溝正史っぽい孤島を舞台にしたのも良かったと思う(雰囲気は抜群)。前作がサスペンスだとするとこっちはスプラッタ、視覚的な残虐表現や生理的嫌悪感をかきたてられる演出は見事である(本気で気持ち悪くなる)。ただ、テイストの変化を抜きに考えても、前作の高みには決して達していない。退屈なシナリオが多くて、夢中になったシナリオはごく僅かであった。しかもその大半がギャグシナリオだというのも、この手のジャンルとしては致命的ではないだろうか。要するに、シナリオが良くない。

 

実プレイは約15時間。腹を抱えて笑えるギャグはあるが、ホラーゲームでギャグが一番楽しめたって、それはダメだろう。妄想篇や惨殺篇など、本編とは関係ない部分のほうが面白かったし、かまいたちの夜として失敗していると思う。音楽良し、演出良し、システム良し、シナリオ悪し。独創的な続編形態など、作り手さんの意気込みは買うけれど、あまり良いゲームとは思えなかったなぁ…。

 

などなど、偉そうに書いたが、値段ぶんは楽しめた。決してクソゲーではないが、前作と比べると残念なゲームである。