オタクノ作る時間

外に出ることを好まない学生による、映画やノベルゲームの批評を主とした非営利ブログです。

『ダンケルク』感想。ノーラン最新作をさっそく観てきた。

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クリストファー・ノーラン監督は『ダークナイト』での大成功を受け、もはや、少しでも映画が好きな人なら避けて通れないほどの話題作を撮る現代の巨匠となった。そんなノーラン監督の最新作『ダンケルク』を、筆者も当然のように観てきたので、ここにその感想を書くことにする。なお、映画を観終わるまではネタバレ抜きで感想を書こうと思っていたのだけど、この映画は史実を基にしたものみたいだから、事実を知っている人にはネタバレもクソもないわけである。そして映画の内容自体もストーリーが主体なわけでもないから、今回はがっつりネタバレを含んだ感想文を臆面もなく掲載することにする。ここの演出が良かった 、とか、音響が〜とかハッキリ書いちゃうので、そういうのを知りたくない人は読み進まずにここでこのページを閉じてください。それでは…

 

筆者は現実の史実 ダンケルクの戦い についてまったく知識がない状態でこの映画を観た。知っていたことといえば、ナチスドイツに包囲された連合軍の脱出劇だという大雑把なあらすじくらいだ。そんな状態で見たこの映画は、筆者にとっては、戦争映画であると同時にホラー映画だった。銃撃音や爆発音、悲鳴などが見事な音響で現実そのもののように流れてきて、本当に筆者の周りを銃弾が飛び交っているみたいだった。そしてそれが視界いっぱいに広がる画面と混然一体となったときに、実際にそこにいるかのような錯覚を体感できた。これは恐怖以外の何物でもない。そして見た人にはわかる、穴をふさぐあのシーン、あれはもう本当に怖かった。

本作はノーラン映画独特の、観念的かつ説明的なセリフで展開される人間ドラマや映画的演出が廃されたリアルタッチの作品であり、淡々と、しかし緻密に描かれた戦災描写が視聴者に恐怖を与える。驚いたのは、敵であり、迫り来るナチスドイツの兵士の姿がまったくと言っていいほど映らないこと。だからスピルバーグの『激突!』みたいに、無機質な天災に襲われているような、あるいは悪魔に襲われてるかのような恐怖感が、全編を通して重くのしかかっている。そしてそれをハンスジマー作曲の、重低音で視聴者を不安にする音楽がほとんどずーっと流れ続けて補強する。本作はその音圧が非常に重要な構成要素とになっているので、絶対に劇場で観るべきだと思う。特にふっとその音圧がなくなるシーンの安堵感はすごかった。この音楽の使い方は『ダークナイト』でのジョーカー登場シーンの不協和音や『インターステラー』での神々しいパイプオルガンの使い方なんかと非常に似ていて、筆者は、ああ、これはノーラン映画だなぁと思った。この音圧はIMAXカメラを用いた、細部にまで焦点があった精密な映像と共に、あまりノーラン映画らしくない本作でノーラン感を味わえる重要な要素だと思う。ノーラン映画の映像体験はやはりIMAXでなければ堪能できないわけだ。

 

描かれる戦場の姿は地獄そのものといった感じで、水責めのシーンが多く、息が苦しくなる映画だが、残虐描写自体(内臓ドバーとか)はぜんぜんない。その辺が本作にも影響を与えた傑作『プライベート・ライアン』との違いであるわけだが、筆者は本作も充分に恐ろしかったというか、ライアンと同様に、絶対に戦争に行きたくないなと思った。そして同時に、人を助けるということは勇気と危険を伴うものであるけれど、非常に尊いんだなとも思えた。個人的にはノーラン監督の映画の中でも上位に値する非常におもしろい映画だったので、公開しているうちにあと何度か見ようと思う。

映画館に(とくにIMAXシアターが良し)行くことで戦場の恐怖体験ができる本作は、全ての人にオススメです。いつものノーラン映画みたいに長くないのもまた良し!

 

というわけで、読んでくれてありがとう。