オタクノ作る時間

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『エイリアン: コヴェナント』感想<ネタバレ注意>

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巨匠リドリー・スコット監督の最新作、『エイリアン: コヴェナント』を観た。もうすぐ80歳にもなるお爺ちゃん(失礼)が撮った作品とは思えないパワーのある映画で、見どころ満載!な一方、問題点も多々あるなーというのが個人的な感想だ。しかし筆者は『エイリアン: コヴェナント』をけっこう気に入ったし、観た人と語り合いたくなるタイプの映画だったので、今回はこの作品について書くことにする。

なお、ネタバレを含むので未見の方は読まないでほしい。

 

『エイリアン: コヴェナント』は、前作『プロメテウス』の続編で、リドリー・スコット監督が過去の自身の名作『エイリアン』の世界観を広めるべく製作している前日譚だ。この試みが成功しているのか失敗しているのかは筆者には判断できないが、事実として、宇宙を舞台にした吸血鬼映画的なホラーだった映画は神話的・哲学的なテーマを持ったものへと姿を変えた。正直、怪物映画だったのもがどうしてこんなに深いテーマを持つに至ったのかはよくわからないが、もしかしたらリドリー・スコット監督も、弟を亡くされたり 、自身が歳をとったことで、人間とか生命といったものに向き合わなければならなくなったのかもしれない。そう思うとリドリー・スコットという人物を見つめているようで興味深い。

さて、それでは『エイリアン: コヴェナント』の内容についてだ。前作が良くも悪くもエイリアン然としていなかったのに対して、今作はタイトルからもわかるようにしっかりエイリアン映画であると言えると思う。ゼノモーフがスクリーンで暴れまわるし、往年のBGMやタイトルの出方などで、シリーズを追っているファンはニヤッとできる。しかし(この文章を読んでいる人は本編を見ているとして書くが)本作の主人公は人間ではなくアンドロイドであり、ミルトンの失楽園的な物語だった。筆者は映画評論家の町山智浩さんが、ダークナイト評など、これまで折に触れて失楽園について語ってくれていたので、この映画のテーマや展開になんとかついていくことができたが、非常に宗教的かつそれに対しての知識を要するこの映画は、日本人の一般客層には理解するのが難しいものになっていたと思う。

端的にいうと前作は人間が自分たちを想像した神を殺す物語だったが、本作は人間の作り出したアンドロイドが、自ら創造を行うことで神になろうとする話。神殺しやサタン的な発言など、筆者はこの展開はなかなか好きだった。アンドロイド デヴィッドがマッドサイエンティスト的に人体実験を行っていく狂気のイカレ具合は数ある映画の中でも屈指の出来だったと思うし、演じる俳優さんも見事の一言。NARUTOの保護者になる前の大蛇丸的な純粋悪感が人の奴隷としてのアンドロイドという背景と合わさって、なかなか魅力的なキャラクターになっていたと思う。特に好きだったのは冒頭のデヴィッドとウェイランドの会話シーン。デヴィッドが「私は死なない」と言うとウェイランドがムッとしてて、逆にウェイランドがデヴィッドのピアノ演奏にケチをつけるとデヴィッドがムッとしてて、お互いに器が小さいというか、子供みたいな喧嘩をしているので笑ってしまった。微笑ましいともいうが。

しかしやたらと長い笛のシーンとか、前作でもイライラした、全然プロフェッショナルではない宇宙船クルーのバカな行動には辟易するリドリー・スコット監督は脚本には全く興味がないのか? 展開のための馬鹿キャラクター描写は物語の深刻さを著しく損なうのでやめてほしい。また肝心なエイリアンについてもよくわからないことも多いし、結局1作目に繋がらないことに非常にガッカリした。リプリーみたいな魅力的なヒロインはいない(主人公たるデヴィッドは好きだが)し、脚本やキャラクターに関してはダメダメといったところで、取り扱うテーマや映像表現に耽溺しようとするとバカな脚本やキャラがそれを邪魔してくる。うーん、勿体無い。

あとエイリアンが完全にCGになったことで迫力は凄まじく減った。筆者はCGが嫌いじゃないし、シン・ゴジラがフルCGでも何も文句を持たなかった人間だが、今作のエイリアンに関してはCGを使わないで欲しかった。なんだか重さがないというかなんというか、とにかく軽いしネトネト感もない。怖くない。これではいかん。もうエイリアン要素抜きにしてブレードランナー的なアンドロイドの話にしたほうが良かったんじゃないかと思えてきた。もちろん、エイリアンが画面に登場するとテンションは上がるのだが。

 

酷評にも頷けるが、デヴィッドのマジキチぶりとゴア表現、テーマ的なものは大好きだったので、長所もあれば短所もあり、といったところが筆者の評価だ。間違いなく前作よりは面白かったと思うのだが、どうだろう? エンジニアと人間とアンドロイド、この3つの種族の傲慢で世にも恐ろしいエイリアンが産まれたのだという展開はなかなか良かった(エンジニアの星がギーガーっぽくなかったのはガッカリだったが)。だから筆者はこの映画、なかなか好きである。

 

どうでもいいけど今回のポスターは、日本語のエイリアンって文字も含めてかなり好きだ。