オタクノ作る時間

外に出ることを好まない学生による、映画やノベルゲームの批評を主とした非営利ブログです。

『犬神家の一族』まだ観たことない人に贈るDS版の感想

日本で最も有名なミステリーって何だろう? 名探偵コナン金田一少年? 筆者と同じくらいの世代、もしくは現役の高校生などはそう思うかもしれない。だけどおそらく、ある一定以上の年齢の方や、ミステリー小説・映画が好きな人ならこう答えるだろう。

犬神家の一族

これこそが最も有名なミステリー作品であると。知っている人、観たことがある人にはインパクト抜群の大作である。

 

f:id:Lemuridae:20180329141837j:image↑犬神家と言えばコレ。ちなみに脚はお髭のモビルスーツ

 

そして『犬神家の一族』を観たことがない人であったとしても、タイトルくらいは確実に知っているだろうし、湖面から見えるさかさまの脚――あのシーンを知らない人をモグリと言っても許されると思う(スケキヨを知らないなんて日本人じゃない!……は言いすぎかもしれないが真剣にそう思う)。要するに『犬神家の一族』は、日本という国において世代を問わず認知されている、素晴らしい、もはやカルチャーアイコンと化している大傑作なのである。だからみんな一度は作品に触れてもいいんじゃないかと思うのだが……

……上述したように、筆者と同じような世代は、実際に映像化されたものを目にする機会はあまりないし(子供の頃、2006年にリメイク版がやってたのと、五年ほど前に稲垣吾郎がドラマでやってたくらい?)、小説を読んでいる人も多数ではないと思う。筆者の場合は映画を見まくる人だったので、1976年に映画化された市川崑版で触れたわけであるが、普通の人は内容を知らなくてもやむ無しだろう。

 

しかし筆者としてはやっぱり全ての世代に『犬神家の一族』を見てもらいたいし、知ってもらいたいし、そして見るべき価値のある面白い作品であると思っている。だからここまで読んでいただいて

「よし、わかった! じゃあ小説を読んでみるよ! 映画を見てみるよ!」

と思っていただけたなら、もうこの記事からいなくなっていただいて結構なのだが

「えー、そんな古い小説、読む気しないわ~……。古い邦画も苦手」

という人が大多数であると思う(筆者の周りの同世代の反応からこう思いました)。

 

そこで、そこでだ。非常に前置きが長くなってしまったが、そんな人たちに今回オススメするのが、今回紹介する、2009年にフロムソフトウェアから発売された任天堂DS用ソフト『犬神家の一族』なのだ。

f:id:Lemuridae:20180329123240j:image

これならゲームだし最近のものだし(といっても十年近く前になってしまったが)、DS用のソフトだから、なんだかんだでみんなプレイしやすいと思う。DS、一つくらいは持ってません? 筆者はライトを持ってます(古い)。持っているならぜひともプレイしてもらいたいと思う。というわけで、以下にこのゲーム版犬神家の魅力・利点を述べていく。長いけど、もうちょっと読んでください!

 

……では。

このゲームは横溝正史原作を忠実にアドベンチャーゲーム化したものであり、そのストーリーの上質さは折り紙付きのもの。読み進めるたびに驚愕の展開が常にプレイヤーを待ち受けていることを保証するし、保証できる最高のものだ(だって最高のミステリー小説まんまだもん)。筆者も改めてこのゲーム版で物語に触れて、本当に良くできた話だなと感心した。日本特有の風俗や戦後の日本という背景、舞台が絶妙に親和していて、「日本のミステリー」という言葉がこれ以上に似合うものはなかなかもう生まれないと思う。

 

そして映像面・グラフィック面も優れていて、表紙に金田一耕助が墨絵タッチで描かれているが、ゲーム画面はすべてこのようなモノクロの墨絵で表現されている(血などの表現のみ色がついているのも、シンシティみたいでカッコいい)。これが『犬神家の一族』という原作と非常によくあっていて、筆者は素晴らしいと思った。横溝正史の雰囲気をそのままにおどろおどろしく重みがあり、しかしヒロインなどはしっかり今風の絵柄にリファインしてあって、たぶん実写版よりも若い人たちに受け付けやすいんじゃないかと思う。金田一耕助も歴代の俳優さんを足して割ったような中間の顔をしていて(強いて言えば鹿賀丈史?)良い。古典を細心のコンテンツにリファインするときにありがちな「これじゃない感」はまるでなく、入門にも最適であると思う。

 

また当然なのだが、アドベンチャーゲームであるために自分のペースで進められること、キャラクター全員にグラフィックが用意してあることも良い。筆者は1976年の市川崑による映画版がとても好きなのだが、あの映画はけっこう難点もある。それは言ってしまえば筆者が悪いだけではあるのだが深刻なもので、映画というものは時間表現のものなので、どんどんぽんぽん話が展開していく。で、ミステリー物は全てそうなのではあるが、『犬神家の一族』という物語は登場人物が非常に多い上に関係性がややこしい(異母兄弟、その子供、従弟、非嫡出子など…)。だからちょっと気を抜くと誰が誰なのかなくなってしまって、話についていけなくなってしまう。

こいつ誰だっけ? えーっと、こいつはコイツの子供で、だからこいつは……ん?

この連続であり、非常に頭が忙しい。初見のゴッドファーザー並みのしんどさがあった。しかしゲーム版ならばそんな心配はない。自分がボタンを押さなければ話はこっちの頭の整理を待ってくれるし、キャラクターのグラフィックはそれぞれ特徴的に差別化が図られており、誰が誰だか理解しやすい。さらには人物相関図や登場人物の説明まで搭載されているため、我々のようなゆとりにも優しい仕様だ。原作を忠実に再現していることもあって、ある意味最も深く物語を理解できるものになっていると思う。だからこのゲーム、『犬神家の一族』を知らない人に強くお勧めする。日本のミステリーは面白い! そう思っていただけること間違いなしだ。

 

 

さて、ここまでやたらと褒めまくったが、このゲーム、いろんなところで感想を見るとなかなか叩かれている。その際挙げられているのは

  • 原作そのままやんけ
  • ゲーム性なさすぎ
  • 最も有名なミステリーをゲーム化してどうするの?

といったところである。これらは全て一理あるわけだが……悲しい。筆者はそう思った。

わからないけど、たぶんこういう感想を書いている人というのは、もともとミステリーが好きな人や『犬神家の一族』リアルタイムの年配の人なんだと思う。だからこういう感想を抱くのは当然のことなのだろう。納得する。だけどたぶん、このゲームを創った人たちはそんなことは重々承知だったんじゃないかって筆者は思う。わかってて作ってるんだと思う。なぜなら筆者くらいの世代の人間は、上述したように『犬神家の一族』を知らない。ガキ使 か にしおかすみこ のネタくらいでしか知らない。だから何が悲しいって、結果的に言うと、このゲーム版犬神家、ターゲットにしている我々世代には売れておらず、もともと犬神家を知ってる人たちしか買っていないんだろう。なぜなら筆者も映画版が好きでなければ関心を持たなかったであろうことは明白だからだ。……ゲーム化した意味ないやん。

 

というわけで、ターゲット層の我々がもっとプレイできるように、2009年のゲームを筆者は今ここで改めて強くお勧めする。たぶん新品中古を問わず2000円以下で帰るので、映画一本見るつもりで……購入してください……。アドベンチャーゲームとはいえ6時間くらいで終わるので、いい意味でテンポがいいですし……。そうすればこのゲームを創った人たちも喜ぶんじゃないかって思う(筆者の立場が謎)。 

 

というわけで任天堂DS用ソフト『犬神家の一族』を紹介しました。ここまで読んでくださった皆さん、ありがとうございます。またお会いしましょう!

 

犬神家の一族

犬神家の一族