オタクノ作る時間

主にノベルゲームについて取り上げてきた元学生のブログ

007シリーズ初心者が年代順に観て感想を書く! 70年代編

世界一有名なスパイ映画、『007シリーズ』を観たことがない!そんな状態から抜け出さなければならないと唐突に思い立ち、当ブログではシリーズ全作品を年代順に観て感想を書いている。既に60年代の作品の感想は書いているのでそちらは過去記事を参照!この記事では70年代の作品の感想を書くので、暇な人は読んでみてくれ。では。

 

lemuridae.hatenablog.jp

lemuridae.hatenablog.jp

lemuridae.hatenablog.jp

lemuridae.hatenablog.jp

 

7.『007 ダイヤモンドは永遠に

1971年公開のシリーズ第7作。ショーン・コネリーの復帰作にして、彼のジェームズ・ボンド卒業作である。どうやら前作のジョージ・レーゼンビーのボンドが不評だったことによる1作限りのカムバックだったようだ。前作を見た時は2代目ボンドもなかなか良いと思ったのだが、本作を見るとやっぱりショーン・コネリーこそがボンドだよな~と思ってしまった。安心感が桁違いである。

前作の一件でボンドがブチギレしている冒頭を見て、どうやら役者が変わっても話は続いているらしいということが分かった。…ということはボンドは何歳になるのだろう? 本作ではショーン・コネリーがちょっと老けた感じがするので、キャラとしてのボンドの老化が心配になってきた。まあ次作からはまた役者が変わるわけだが。

見どころはエレベーター内での格闘シーン。ここは生々しいリアルな攻防が描かれてて本当に素晴らしい。狭い場所での取っ組み合いはボンド映画の見せ場だと再認識した。それからラスベガスでの警察とのカーチェイスも、それまでの007映画のカーチェイスとはまた違ったもので非常に新鮮だった。

総論として、残念ながらマンネリ感が強い。なんというか、いつもの007という感じだ。確実に楽しいわけだが、ショーン・コネリーの最後の作品なんだし、もっと集大成感を出してほしかった。それからそこそこシリアスに話が始まったかと思いきや、ホモの殺し屋・月面車での追いかけっこ・カリオストロ的ワイヤーアクション・謎の新体操女・衛星ビーム兵器など、わけが分からないシーンが多い。そういうところがいつもの007なわけであり、マンネリの原因なわけである(笑)。

私的評価:★★★★★★☆☆☆☆ 6/10

 

8.『007 死ぬのは奴らだ

1973年のシリーズ第8作。ロジャー・ムーアによる3代目ジェームズ・ボンドのデビュー作である。ロジャー・ムーアは彼なりのボンド像を始めから全開で出しているところが2代目ボンド、ジョージ・レーゼンビーと対照的だ。役者の交代と共にボンドのキャラクターが変わっているので(葉巻派に転向してるし)、最初のうちは「こんなのボンドじゃねえ!」と思いながら観ていたんだけど、30分くらいで「これはこれでありかな…」という気がしてきた。いつまでもショーン・コネリーの物まねをしているわけにはいかないしね。印象としては、ロジャーボンドは軽い感じだ。

この映画、もう本気でふざけている。ギャグ映画なのか…?と何度も混乱した。イメージでいえば『インディ・ジョーンズ魔宮の伝説』に近い。むちゃくちゃなシリーズの中でも、さらにギャグ成分が多いのだ。なんでも未来予知できるタロットカード、異常な磁力の腕時計、ブルース・ブラザーズ並みにハチャメチャなボートチェイス、ワニの上を疾走するボンド…これらのシーンには真面目に大笑いした。なんやねん(笑)。さながら『クレヨンしんちゃん』である。今にして思えば、『女王陛下の007』はバカ映画化していくシリーズの軌道修正を果たそうとしていたのかもしれない。あ、一応誤解の無いように言っておくが、バカ映画ってのは別に侮蔑の意味で言ってるわけじゃないぞ。

結論、これからロジャー・ムーアが彼なりのボンド像を見せてくれそうで楽しみである。しかし彼の演じるボンドは全然強そうに見えないのが残念だ。全然迫力がない。前作のエレベーターでの取っ組み合いみたいなシーンはしばらく見れない気がする。

私的評価:★★★★★★☆☆☆☆ 6/10

 

9.『007 黄金銃を持つ男

1974年のシリーズ第9作。前作に引き続き、かなりはっちゃけた内容になっている。正直、そろそろシリアスで緊張感のある007が見たくなってきた。さすがに笑わせようとし過ぎじゃないか? 前作のギャグ用員、ペッパー保安官がまさかの再登場を果たした上に、両津勘吉並みのハチャメチャ警官ぶりを発揮。そして彼らが爆走させる車が宙を舞うシーンで間抜けなSEが入ってたので、これはもう確信犯なのだとわかった。

中川「せ、先輩だ…」

ってカットを途中で入れても違和感ないと思う(笑)。

この映画、出演している役者さんたちがみんな良い。あのクリストファー・リーが本作の敵役 “黄金銃を持つ男” を味のある素晴らしい演技で演じているし、(『スター・ウォーズ』が好きな筆者は、冒頭で「ドゥークー伯爵、若過ぎ!?」とかなりの衝撃を受けた)本作のボンドガールは当社比で最も可愛い(常にビキニ姿なのも目の保養になる)。それから『ハワード・ザ・ダック』のような小人さん、アクションがキレキレの女子高生、上述したペッパー保安官など、役者さんの個性が色濃く出てるキャラクターが楽しい。

結論、クリストファー・リーが “サーカス出身の紳士的な殺し屋” という陰がありながらも愛嬌のあるキャラクターを見事に演じていて、それだけで楽しめる。だけどそろそろシリアスなのが見たいかな。本作はさすがにボンドが情けなさ過ぎるのが嫌だ。力士に負けるボンドなんて見たくないというか、どうやら筆者はロジャー・ムーアのボンドがあまり好きではないようだ。なんというか、彼のボンドは格闘シーンがショボい。途中の『燃えよドラゴン」みたいな武道大会のシーンなんかは、ショーン・コネリーだったら見所になってたと思う。

結局、乳首が3つあるって設定は何のためにあったんだ?

私的評価:★★★★★★☆☆☆☆ 6/10

 

10.『007 私を愛したスパイ

1977年のシリーズ第10作。英ソの原子力潜水艦が突然行方不明になるという事件が発生。利害の一致から協力関係になった英ソは、事件解明のためにそれぞれ自国最高のエージェントを派遣する。英国最高のエージェント ジェームズ・ボンドは、ソ連最高の女性エージェント トリプルⅩと共に黒幕を探すのだった…というストーリー。製作されたのは1977年、冷戦の緊張緩和によってこのような話が生まれたのかと思うと興味深い。

最初に書いてしまうが、この映画は非常に面白い。今ひとつパッとしない前作や前々作と比較すると頭一つ抜きんでている。正直『007は二度死ぬ』以降のシリーズは作業的に観ている部分が少なからずあったのだが、この映画は最初から最後までずっと惹きつけられてしまった。期待していたシリアスな路線とは全く違ったが(笑)。

冒頭は『女王陛下の007』のような雪山でのスキーチェイスから始まる。いきなりアクションから始まるのが良い。ここでボンドが雪山の断崖絶壁からパラシュートで脱出するシーンがあるのだが、パラシュートがド派手なユニオンジャック柄で笑った。ジェームズ・ボンドよ、お前は素性を隠す気があるのか…?

その後、この冒頭のシークエンスでボンドに返り討ちにされたソ連の刺客が今作のボンドガールの恋人だったという事実が判明する。そしてこのボンドガールというのが上述したソ連の女性エージェントである。もうお分かりだろう、反目しあう2人が共に窮地を乗り越えながら互いを理解していく、という話だ。この、すぐに喧嘩を始めるドタバタコンビが世界を股にかけて大冒険するバディームービーのような趣が素晴らしく、ロジャーボンドの軽さがストーリーに上手く機能していて良い。喧嘩するほど仲がいい状態というか、互いに素直になれないシーンが可愛くて仕方ないのだ。この味はロジャー・ムーアじゃないと出せなかっただろう。

全体を通すと『ゴールドフィンガー』に近い。かなりバカバカしいんだけど、クールさは損なわれていないのだ。前作がふざけ過ぎ感があった中、本作はそれと同じか、あるいはそれ以上に はっちゃけたシーンが多いのだが、露骨に笑いを狙いに行っていないといえば良いのか、とにかくそこまで間抜けじゃない。しかしジョーズという名の、某巨大鮫を想起させる殺し屋が登場するのだが、こいつだけはもうわけが分からない。鉄の歯で標的を噛み殺すというとんでもないキャラクターで、素手で車を引き裂くわ、鉄の鎖を噛み切るわ、撃墜するヘリに乗っていても死なないわ、ホオジロザメをも食い殺すわ、基地ごと爆破しても生きてるわ、というターミネータばりの不死身のキャラである。結局最後まで生きてるんだが、こいつは何だったなんだ?(笑)もはや間抜けというか何というか…どーゆうコンセプトやねん!筆者のツボにはまって、出てくるだけで嬉しかった。

結論、オススメの一本である。オープニングが音楽・映像共に今までで一番カッコいい。そして007ならではのアクションシーン(秘密兵器やボンドカーなど)が多いうえ、様々なロケーションが楽しめるという点で、旅映画としても良質だと思う。70年代作品では今のところベストだ。

私的評価:★★★★★★★☆☆☆ 7/10

 

 11.『007 ムーンレイカー

1979年のシリーズ第11作。アメリカからイギリスに輸送中のスペースシャトルムーンレイカー」が突如ハイジャックされる事件が発生。事の真相を解明すべく、英国情報部はジェームズ・ボンドを派遣した…というストーリー。なんと本作の舞台は宇宙!ジェームズ・ボンド、遂に宇宙進出である。なんだか『スター・ウォーズ』の影響を感じさせる一本だった。

飛行機から落下する冒頭のシークエンスでいきなりワクワクさせられる。このシーン、いつものチープな合成には見えなかったが、どうやって撮影したのだろう? まさか本当に落下してるわけではないよな…。映像技術が発達してない頃の映画だからこそハラハラさせられた。

敵の配下に変な日本人がいるのが面白い。フランス風の建物の中で一人だけ着物を着ているので、めちゃくちゃ浮いている。なんとも言えない顔が笑いを誘うこの男が剣道着と竹刀を身に着けてボンドを待ち構えているシーンで爆笑した。なぜにその恰好、その武器? せめて日本刀を持てよ(笑)。しかしガラス工芸品を豪快に割りながら対決するシーンは意外に面白い。

そしてまさかの前作から続投する不死身キャラ、ジョーズ。本作ではなんだか可愛いキャラになっているのに笑った。女の子に恋しちゃったり、満面の笑顔を見せてくれたりと、全作とはまた違った面を見ることができる。ボンドとは意外な形で決着がつくので、これまた必見である。

舞台は宇宙だと上述したが、ずっと宇宙にいるわけではない。序盤から中盤までにかけてはヴェニスの街並みやリオデジャネイロの祭りを堪能できる。正直、これらのシーンが雰囲気含めて非常に良かったため、宇宙に行くのはやめてほしかった。というか宇宙に行くまではシリーズでも上位の面白さだったのだ。

結論、これを言うとこの作品を全否定することになってしまうわけだが、007に宇宙要素は要らない。中盤までは楽しかったのに、宇宙に行ってからのラスト30分ほどは本当に退屈だった。宇宙でビームを撃ち合う絵面は007に求めてない。ドアロック解除の音が『未知との遭遇』と同じだったシーンを見て、この作風が、いわゆる当時のSFブームに便乗した結果だと理解した。007には007の良さがあるんだから、流行に乗らなくてもいいのにな。しかしここまで全否定している宇宙のシーンだが、時代を考えると非常にリアルである。『007は二度死ぬ』の宇宙シーンは失笑もののお粗末さだったが、こちらはなかなかの現実味がある。そのように素晴らしいからこそ、この宇宙描写は別の映画で見たかった。

私的評価:★★★★★☆☆☆☆☆ 5/10

 

70年代作品の総論。

ショーン・コネリーからロジャー・ムーアに交代した70年代。ボンドはロジャー・ムーアによって親しみやすい軽いキャラクターとなり、ストーリーもどんどんと荒唐無稽になっていく。続けて一気に観ているからというのもあるだろうが、なんというかそろそろマンネリ化していっている気がした。その中で突出して面白かったのが『私を愛したスパイ』。これはジョーズが象徴するようなバカバカしいシーンも多いのだが、それまでの要素がきれいに集約されていて、シリーズの中盤の集大成だと思う。というかそれ以外は別に言うこともないかな…。敢えて言うなら、『死ぬのは奴らだ』と『ムーンレイカー』はふざけ過ぎです。

 

そういうわけで、読んでくれてありがとう。80年代作品の感想も書くので、そのときはよろしく。