オタクノ作る時間

主にノベルゲームについて取り上げてきた元学生のブログ

『君の名は。』 ノベルゲー好きの感想。

日本映画史に残るほどの大ヒットをしている新海誠監督最新作『君の名は。』を観てきたので感想を書く。なお、既に公開から一か月以上たっているからネタバレしてもいいだろうということで、この記事は映画の核心部分といえるところまで触れる。もし未見の人がいたら、ここでお引き取りください。それでは。

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最初に簡潔に言うと、面白かった。数々の絶賛を耳にしてかなり高い期待値で観に行ったのだけど、期待以上の面白さでした。良い意味で期待を裏切られたよ。男女の身体が入れ替わる話、という前情報しか入れて行かなかったのが良かったのかもしれない。というのもこの映画、“入れ替わりもの”というある種のシチュエーションコメディとして見ると、実はそんなに斬新でもないし、特別面白いわけでもない。“男が女の身体に入って胸を揉む”とか、“女が男の身体でトイレに行くのに赤面する”なんてシーンは同じジャンルの他作品で飽きるくらい見たし、既視感の嵐である。しかし勘違いしないでほしい。斬新さがないからといって、つまらないと言ってるわけではない。言わばそれは王道であり、約束された確かな面白さがある。王道の良さと丁寧な作画・アニーメーションで描かれる新海誠作品ならではの映像美とが重なって、序盤からかなり良い。しかしそうは言っても、この辺まではそこまで絶賛するほどの出来でもない。筆者が気に入ったのはむしろ中盤以降のたたみかけるような物語展開だ。

 

この映画、途中からジャンルが変わる。入れ替わりコメディから、壮大な時間の流れを舞台とする時空超越ファンタジー(むしろSFか?)になる。これにたまげた。良い意味で予想を裏切られた。そして思った。これは俺が大好きなタイプの映画であると。思ったんだけどこの映画、なんかノベルゲームっぽくないだろうか? 別にオープニングがそれっぽいからとかそんなつもりで言っているわけではない。しかしこれらの要素を見てほしい。

  • 歴史ある神社が登場
  • 人里離れた田舎が舞台
  • 人格交換現象
  • 時空を超える祠
  • 時間軸を超越し、主人公が悲劇的な未来を変えて大団円に
  • 主人公が2人(マルチサイト)
  • トゥルーエンドっぽいあの感じ

2000年代くらいのノベルゲームっぽくない!? 『クロスチャンネル』とか『Never7』とか『シュタインズ・ゲート』っぽくない?ん?そうでもない?

そうですか…(´・ω・`) 

まあ自分で言っといてあまり似てない気もしてきたけども…。しかし!しかしだ!筆者は2000年代くらいのノベルゲームが好きだから、なんか似てるのが嬉しかったのだ!いや、もうぶっちゃけよう。infinityシリーズっぽいから好き!(笑)。別にパクリとか言ってるわけじゃなく、『Remember11』にそっくりなんだよ、この映画。んでもって筆者は『Remember11』が好きだから、そら『君の名は。』も好きだよねって話。なんならもう、『君の名は。』をノベルゲームにして、終盤の主人公たち頑張りラッシュを、選択肢に悩むことで自分も苦労したい。そして素晴らしい映像美の彗星を眺めるあの最高のシーンを、ゲームならではのカタルシスで味わいたかった。この中盤からの展開の、ノベルゲームのトゥルーエンドを見ているような爽快感は最高でした。特にヒロインのあの“走り慣れない女の子が全力疾走する感じ”は今敏監督の『千年女優』とか『パーフェクトブルー』っぽくて好きだ。あのシーン、絶対に濱洲英喜さんが原画やってると思うんだけど、違うかな?

 

その後、お互いの名前を忘れてしまってからの終盤の流れは少し長すぎたような気もしたけれど、それも許容範囲。ラストを盛り上げるためには良かったと思う。そしてこのラストが良かった。主人公たちが大人になってから突然、新海さんの過去作『秒速5センチメートル』っぽい雪の降る歩道橋とか、ジブリの『海がきこえる』みたいに駅ですれ違ったりする描写が出るから、ああ…やっぱ新海作品らしく切なく終わるのね…と思っていた。しかしなんとこの映画、ラストで2人は結ばれるんだよね。ああ、良かった。主人公の男の子がヒロインに話しかけようと勇気を振り絞るシーンで、新海さんの過去作でそれができなかったキャラクター達を見ていたから、もう思わず画面に向かって「がんばれ!」って声を出しそうになったよ(笑)。彼の作品を点ではなく線で追っている人にはたまらないラストでした。やっと前進したね。

 

まとめ。

というわけで凄く面白い映画でした。筆者はみんなが評価してるものを叩きたくなるキモい高二病の部分があるけど、今回はみんなと同じく絶賛です。今年は『シン・ゴジラ』といい『君の名は。』といい、東宝が凄いなあ…。なんか邦画の未来が明るい気がしてきた。そして年末のスターウォーズのスピンオフ『ローグ・ワン』も面白そうだし、2016年ベスト映画は決めるのが難しくなりそうだ。

というわけで、読んでくれてありがとう! あでぃおすぐらっしあ~。

『code_18』 クソゲーを紹介。

世の中にはクソゲーというものがある。悲しいことだが、どれだけ作り手側が情熱を持っていても、技術が志しに見合わなかったり、作り手側が面白いと思うことが世間の感性とズレているとクソゲーになってしまう。しかし許せないのは、作り手側が手を抜き、きちんと自分の仕事をこなさなかった結果に生まれるクソゲーだ。今回紹介するのはそんなどうしようもないクソゲー、『code_18(こーどえいてぃーん)』だ。

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『code_18』は2011年のクソゲーオブザイヤー据え置き部門次点という不名誉を持つ正真正銘のクソゲーだ。筆者はそういうゲームを遊んでみようとは全く思わない人間なのだが、このゲームは例外だった。このクソゲー、なんと筆者が大好きなテキストアドベンチャーゲームのシリーズ、infinityシリーズの最新作として発売されたのだ。

infinityシリーズとは打越鋼太郎さんと中澤工さんが手がけたテキストアドベンチャーゲーム群のことである。同じ時間を繰り返すループ世界を題材としたシリーズで、『Never7』『Ever17』『Remember11』という3作品がある。開発していたメーカーが倒産したことでこのシリーズは2005年に終焉を迎えるんだけど、それから6年の時間が経ち、とあるメーカーが版権を手に入れて続編を制作した。それが罪深き『code_18』である。

そういうわけで、このクソゲーにはシリーズを手掛けたメーカーや過去作のスタッフは関係していない(数名関わってるけどメインは関わってない)。生みの親のあずかり知らぬところで生まれ、シリーズを汚したのである。だから筆者もシリーズの作品だとは認めていないというか、そう思いたくない。

そもそもinfinityシリーズは伝統として、〜er 素数 〜 of infinity というタイトルがつけられていたのに(Never7 -the end of infinity- など)このゲームはこの法則を無視。タイトルからして作り手側のシリーズへの愛情のなさが露呈している。しかしシリーズのファンとしては、一応シリーズ最新作を騙っているからにはプレイしなければいけない気がした。このゲームはシリーズファンには避けては通れない いばらの道であり、凍てつく夜だったのである。クソゲーだと重々承知しながらもプレイする悲しさよ…。しかし懐には優しく、中古で250円でした(笑)。

 

で、このゲームの感想をつらつらと書こうと思う。クリアしたのは随分前なんだけどね(笑)。なお、このクソゲーのタイトルで検索してもらったら、面白おかしくそのクソさを紹介しているサイトはたくさんある。この記事は明らかにそれらに劣るし、恐ろしいことに筆者がプレイしたpsp版はXBOX360版よりはまだマシな出来なんだそうな。というわけで、クソさを笑いたい人は他のサイトをご覧ください。それでは…。

まずこのゲーム、何がダメって、システムがダメだ。音声とテキストが同期せず遅れて表示されるし、結構な頻度で処理落ち。また場面転換の際に曲と音声とテキストが止まる・誤字脱字の山など、基本からなってない。こんなの最後までプレイできねーよと頭を抱えていると、これらの不具合はメモリーカードへのメディアインストールで改善された。うん…まあ回避方法は用意されてるけどさ…pspのノベルゲームで処理落ちってどうよ。UMDが常に爆音を立てている。他のシリーズ作品はシステムがものすごく快適だしメディアインストールなんかしなくてよかったぞ…。

またこのゲーム、ヒロインが複数いるのに攻略の順番は最初から決まっている。つまり一本道、分岐なしである。まあ誰でもいいようなキャラしかいないから別にいいけど、選ぶことができないとは、もはやゲームですらない。ただ読むだけだ!

さらに、テキストを読んでいたら時系列が突然飛んだり、暗転なしで唐突に翌日になってたり、ボタンを押すと間髪入れずに場面転換してたり、なぜかキャラの視点が変わるときに画面全体がモザイクみたいな処理をされたりといろいろヤバい。マジでなんなんだよ…。

 

上述したように、基本的には笑えないタイプのクソさの宝庫。しかし、そこからさらに作り手側の手抜きは加速する。そして手を抜き過ぎた結果、爆笑シーンが生まれた。

厳格な家庭で育てられたヒロインが文化祭に家族を呼ぶシーンがある。シナリオではヒロインはメイド服を着てるはずなのに、なんと立ち絵は制服のまま。しかしシナリオはメイド服を着ている体裁のまま進む。いつもと同じ制服姿のヒロインに主人公が見惚れたりしてて、さすがに笑った。しかも立ち絵に留まらず、イベントCGでも制服のまま。なんでやねん…。立ち絵は百歩譲って許してやろう。ほんの少しの場面のために新しい立ち絵を用意するのは大変だしね(こんな擁護をさせるなバカ!)。しかしイベントCGくらいちゃんとメイド服姿にしてやれよ! そしてその制服姿のヒロインを見て、ハレンチな格好だと赤面するヒロインの祖父。全然ハレンチじゃねーよ。

また、ほんの少しの場面のために新しい立ち絵を用意するのは大変だと上述したけど、だからといってこのゲーム、汎用性の高い立ち絵をちゃんと用意しているわけでもない。何も考えずにメインヒロインの私服姿の立ち絵にバッグを持たせるから、メインヒロインは屋内にいても寝室にいてもずっとバッグを持っている。あのさあ…バカなの?

また、主人公がとあるヒロイン宅で夕食を食べるシーン。大家族に彼氏と勘違いされて居心地の悪い思いをするという定番のシーンなのだが、こちらも大家族なのに一人分しか立ち絵が用意されていないので、閑散とした食卓に大家族の声だけが響き渡る。軽いホラーだよ。あと、眼鏡を外してキスをするシーンで眼鏡が外れてなかった(笑)。

 

ここまで書いたことで、このゲームがどれだけヤバいか、どれだけ作り手にプロ意識がなかったのかがわかってもらえたと思う。しかしここで書いておきたいことは、ちゃんと仕事をした人もいるということ。クソゲーだったけど、声優さんの芝居は良かった。それに、筆者が知っている声優さんだけでも、石塚運昇さん、野中藍さん、小林沙苗さん、後藤邑子さんといった豪華なメンツが集まっている。こんなゲームに出演してくださったキャストたちに敬礼。それから音楽や主題歌もロックっぽくてカッコよかったかな。

あと肝心なシナリオに関してだけど、まあ面白くはないけど特別つまらなくもない。要はわざわざプレイすることもない感じだ。infinityシリーズは閉鎖空間からの脱出・プレイヤーを華麗に欺くトリックが売りのシリーズだったけど、この『code_18』は普通の(つまらない)ギャルゲーである。学園ものであり、シリーズのテーマであるループ要素も終盤まで絡んでこない。

読み終えて思ったことは、わざわざinfinityシリーズとして発売する必要はなかったんじゃないかということ。過去作のキャラとかが一切でてこないしね。しかしシナリオ以外のシステム面やグラフィックが相当に手抜きというか、ちゃんと仕事をしていないので、このゲームにおいてシナリオを叩く気にはなれない。まあ40点くらいのシナリオである。

 

というわけで『code_18』を紹介させていただきました。プレイするなよ?

このゲームの最も良かったところはプレイ時間が短かったことです。興味がわいた人は『Ever17』をプレイしましょう!

以上、読んでくれてありがとう。

 

つ~か、結局タイトルの意味がいまだに分からん…。

『ルートダブル -Before Crime * After Days-』クリアしたので感想を。

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『ルートダブル -Before Crime * After Days-』をクリアしたので感想を書く(終わってしまって寂しいなあ…)。この記事ではできるだけネタバレは控えるけれど、その魅力を伝えるために少しだけネタバレをする。それが嫌な人はここまでで。

 

『ルートダブル -Before Crime * After Days-(るーとだぶる びふぉーくらいむ あふたーでいず)』は、火災事故が発生し、外界と隔絶された極限状態の原子力発電所に取り残された登場人物たちの脱出劇を描いたSFサスペンスアドベンチャーゲームだ。

まず初めに書いておこう。このゲーム、非常に面白い。総プレイ50時間以上の大ボリュームに加え、それを彩る豪華な演出、美麗なイベントCG、クオリティの高いムービーや音楽、フルボイスの声優陣の演技など、相当に丁寧に作られている大作である。かなりお金がかかっているんじゃないかな。なんとノベルゲームにしてインストール容量が5.8GBだ!

この面白さとクオリティなのに、どうしてこんなに知名度が低いのだろうと疑問を抱かざるを得ない

 

プレイヤーは記憶を失ったレスキュー隊の隊長、または事故に巻き込まれた男子高校生のどちらかを主人公に選び、原子力発電所からの脱出劇を見届けることになる。最初に選べるルートは2つ。火災事故発生後の極限状態を描いたルートアフターと、火災事故発生前の日常に異変が現れ始める様子を描いたルートビフォーだ。この2つのルートは趣がまったく異なるものになっている。前者はパニックサスペンスとして手に汗握る緊迫感のあるシナリオで、後者は いわゆるギャルゲー然とした青春ものだ。どちらから始めるかでこのゲームに対する印象が大きく変わると思う。

 

巨大な原子力発電所にて事故、発生。隔壁が下され、地下に閉じ込められた9人は、刻一刻と死が蝕んでいく世界を抜け出す術を探す。頻発する不可思議な現象。多くの謎。そして…閉鎖空間の中で発生した猟奇的な大量殺人。この極限状態から抜け出す鍵(ルート)は2つーーー。果たして生還の道はあるのか?

 

このあらすじでピンときた人は楽しめると思う。筆者はサスペンス要素の強いルートアフターからプレイしたのだが、序盤から引き込まれる素晴らしいシナリオで、これはひょっとするととんでもない傑作なのでは…?と冒頭からワクワクさせてもらった。そして終盤までダレることなく物語は加速し続け、膨大なテキストに全てのキャラクターの人生が描かれ、それらが交錯し、最終的に大団円を迎える。端的に言って素晴らしいね。

クリアして思い出に残る好きなゲームになったのだけど、実は筆者個人としてはこのゲームのキャラクターデザインはあまり好きではない(それでもクオリティの高い絵であるとは思ったけど)。しかし絵柄が好みでなくともキャラクター達はみんな魅力的だった。筆者は気が短くて、ギャルゲー的なものをプレイしていると、狙いすぎたアザとい喋り方をするキャラクターや恋愛脳のキャラクターにイライラすることが少なくない人間なんだけど、このゲームには嫌いなキャラクターが1人もいなかった。筆者の気が短い性格に加え、絵柄が好みでないことも考えると、これは凄いことである(笑)。本当にキャラクター達が魅力的だ。ドラマCDとかがほしくなるね。

 

このように、圧倒的なボリュームに張り巡らされた伏線が見事に回収される先が読めないシナリオと魅力のあるキャラクターは見事なのだが、残念ながら完璧とは言えない。このゲーム、まともに推理サスペンスとして読み進めていると、作品独自のSF設定やトンデモ理論によってありえない展開が訪れるのだ。もちろんそういう展開はこの手のジャンルでもよくあることであるし、そもそもこのゲームはSFサスペンスアドベンチャーゲームである。筆者としてもそれはわかっていたんだけど、それでもこのゲームは物語の根幹を動かす部分において、作品独自の設定を多用しすぎていると思った。この作品の設定やルールのもとでの伏線の回収やトリックが破綻していないので、完成度的な意味での難点にならないんだけど、もう少しSF的な展開を抑えてほしかったかな。こういう魔法や超能力がありますってルールをもう少し早い段階から事前に説明してくれていたら、テキストアドベンチャーゲーム史に残る神ゲーになれたと思う。ああ…もったいない。

 

というわけで、『ルートダブル -Before Crime * After Days-』の感想でした。 とっても面白かったし、もっと話題になるべきゲームである。というかこれだけのものを作ってこの知名度って、作り手さんはへこんだだろうな…。

XBOX360WindowsPS3PSvita(ダウンロードのみ)とたくさんのハードで発売されているので、ぜひお手持ちのハードでプレイしてほしい。クリア後にタイトルの意味が分かって鳥肌が立つよ! 

というわけで、読んでくれてありがとう。

 

ルートダブル~Before Crime After Days~Xtend edition (通常版)

ルートダブル~Before Crime After Days~Xtend edition (通常版)

 
ルートダブル Before Crime After Days(通常版)

ルートダブル Before Crime After Days(通常版)