オタクノ作る時間

主にノベルゲームについて取り上げてきた元学生のブログ

『最果てのイマ』クリアしたので感想を。

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 ―――彼らはいつも7人だった。

特殊能力を持つ少年「貴宮 忍」。彼には、幼いころから心を許している友人が7人いた。
放課後、町外れの廃工場が彼らのたまり場。彼らにとってその場所は、誰にも邪魔されることのない空間。
家庭でも世間でもない安息の場所であり、《聖域》だった。
人と人は傷つけ合う。どんなに親密でも衝突は避けられない。
しかし、 たとえ接触が傷つけあいだとしても、それは相手が実在することの証拠となる。
だからこそ生身の絆はかけがえのないものとなるのだということを……
7人の間で繰り広げられる、理解と共感、反発と衝突。そして思春期の淡い恋愛感情。永遠に続く友情。
そんなまどろみのような幸せの中に、ずっといられる―――はずだった。

Amazonより)

 

最果てのイマ』は2005年にザウス【純米】よりPCゲームとして発売された18禁のアダルトゲームで、シナリオゲーの名作『CROSS†CHANNEL』で知られる田中ロミオさんがシナリオを手掛けている。筆者はこの度、『CROSS†CHANNEL』で楽しませてくれた田中ロミオ作品であることとパッケージの雰囲気、そして「ジュブナイルアドベンチャー」というジャンルに惹かれて購入してみた。なお、プレイしたのは全年齢向けに性描写がカットされたPSP版なので、PC版とは多少仕様が違うかもしれない。だからPC版の感想としてはこのページは機能しないと思うが、とにかくクリアした感想をここに書く。一応、ネタバレに関することは書かないつもりではいるが、このゲームについて語るには多少なりともその構造部分について触れなければならない。そのため、まったく新鮮な気持ちでプレイしたいと思っている人は、ここでこのページを去ってもらいたい。実際、筆者も前情報を入れてからプレイしていたら印象はかなり違ったものになっていたと思う。

 

それでは…

このゲーム、「難解」という一言に尽きる。筆者はこれまでいろいろなテキストアドベンチャーゲームをプレイしてきたが、このゲームの難解さはその中でも断トツで一番だった。というか、いまだにどういう話だったのかイマイチ理解できていない。だからある意味、以下に記述する筆者の感想は的外れなものなのかもしれないということをここで忠告しておく。というのも、このゲームは基本的には、とある廃工場に集まる男女八名の青春ものではあるのだが(そういうものを期待して購入したのだが)、実際それはごく一部の要素でしかない。だから筆者のようにジュブナイルアドベンチャー」という触れ込みに期待して購入した人たちは驚き、あるいは失望を味わうと思う。「難解」と上述したように、このゲームはそんな軽い気持ちで挑むべきゲームでは全くなかったのだ。

 

ジュブナイルアドベンチャー」としてプレイし始めた序盤の10時間、筆者は、典型的な青春ものの型どおりに魅力的なキャラクター達の掛け合いが続き、センスの良いやりとりやギャグに溢れるこのゲームを期待通りに楽しんでいた。豊富なイベントCGや声優さんたちによるフルボイス、そしてあくまで物語を支えるべく静かな存在感を発揮するBGMはなかなか魅力的だった。しかしその中で時折「…ん?」と引っかかる世界設定が垣間見える。何かがおかしいというか、何かの伏線であろうことをある程度察しながらプレイし続けると、少しずつダークな色を見せ始め、胸を締め付けられるような小学生のイジメシーンなど、読んでいてしんどい要素がでてくる。そして中盤以降はジャンルが変わったのかと思うほど鬱的・病的な雰囲気が強くなっていき、終盤・後半部分は序盤の常識という常識をことごとく覆していく展開のオンパレードだった。

この構成は同作者の『CROSS†CHANNEL』と似ており、あっちも「実は主人公たちは~~~だった」というある種のどんでん返しがあったわけだが、本作においてはそれがやり過ぎだったように思える。ちょっと序盤と終盤で物語上のギャップがあり過ぎる。だれがハードSFになると予想できたんだ? ある意味詐欺に近いだろう。序盤の物語に終盤の展開は必要ないように思えるし、終盤の物語において序盤は不必要に長い。要するに、地続きの物語としては無理があるように思えた。

また地の分が非常に硬く、不必要に硬い表現を多用しているのも読みづらくてしんどかった(これについては一応道義づけがされているものの、だからといって難点にならないわけではない)。過剰な蘊蓄や設定の解説は物語のテンポを致命的に悪くするし、真の意味で中二病といえるほどのシナリオ(これは良い点でもあるが)は筆者には合わなかった。なんというか、作者の自己満足でしかないように思えたのだ。個人的には『CROSS†CHANNEL』で感じた田中ロミオという作家性の悪い部分が非常に多く詰まったゲームであるなという認識でいる。

 

クリアまで約40時間、大ボリュームの壮大なSF物語だったけれど、筆者は苦手な部類だったようで、最初の20時間以降は苦痛だった。しかし快適なゲームシステムや豊富なイベントCG、設定が凝りに凝られた物語は、相性が合う人にはこの上なく楽しめるゲームになるとは思う。またゲームという媒体でしか成立しないエンターテインメントとして成立しており、よくこんなゲームを創ったな、と感嘆する。だから、「筆者には合わなかった」という一本だった。めちゃくちゃ濃い作品であることは間違いないので、楽しめなかったのは筆者の知識・認識不足が原因かもしれない。

 

なんどか笑ったシーンもあるし、序盤の掛け合いやキャラクターはかなり楽しめたので、筆者にとっても駄作ではないが、うむ…何とも言えないゲームだ。というか筆者がプレイしたのは全年齢版なのに、普通にどぎつい下ネタ(生理ネタには爆笑した)やディープキス(なんとチュパ音まであり)、ロリ的にアウトなシーンもあったんだけど、ちゃんと審査したのだろうか…? 『CROSS†CHANNEL』の時も思ったが、田中ロミオ作品は(良い意味で)本当に病的な感じがして凄いと思う。

というわけで、読んでくれてありがとうございます。

 

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