オタクノ作る時間

主にノベルゲームについて取り上げてきた元学生のブログ

『EVE burst error R』ネタバレ抜きで感想を。

テキストアドベンチャーゲーム史にその名を刻んだ名作『EVE burst error』の高解像度移植版『EVE burst error R』をクリアしたので、その感想を書く。最初に書いておくが、筆者がプレイしたのはプレイステーションヴィータ版である。非常に人気があるゲームなので様々な機種で発売されているみたいだけど、筆者は他の機種版に関しては知らないので、そこんとこよろしく。では前置きを終えよう。

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もともと、『EVE burst error(イヴ バーストエラー)』はPC用に発売されたアダルトゲームだったらしい。人気が爆発したのは一般向けに移植されたセガサターン版で、その後も実に多様な機種に移植された大人気ゲームなんだそうだ(数が多いのでその辺はちょっと把握できてない 笑)。筆者は前々からプレイしてみたかったので、リマスターされたVITA版の発売が絶好の機会だと思い購入。そしてしばらく手を付けずにいたところ、ようやく重い腰を上げてプレイし、遂にクリアした次第だ。

プレイし始めて最初に驚いたのは、異常なまでのキャストの豪華さだ。筆者が知っている声優さんだけでも、子安武人さん・三石琴乃さん・水谷優子さん・野沢那智さん・大塚明夫さん・若本規夫さん・茶風林さん・飯塚昭三さん・うえだゆうじ さん・渕崎ゆり子さん・高乃麗さん・田中敦子さん・堀江由衣さん・かないみか さんといったベテランさんたちがその名を連ねている。今までプレイしたノベルゲームの中で、キャストの豪華さという意味ではぶっちぎりのトップである。シンプルに嬉しいよね。

しかしこのゲームの肝はキャストにではなく、なんといってもそのシナリオにある。イスラム絵画の捜索を任せられた私立探偵 天城小次郎と、エルディア国(架空)大使の娘の護衛を任せられた一級捜査官 法条まりな という2人の主人公、2人の視点、そして彼らが関わる2つの事件が交錯するシナリオは非常に完成度が高い。マルチサイトならではの仕掛けが楽しくて、特にハッキングのシーンは最高だ。さらに、プレイ中に目にする様々な点に一連の事件との繋がりを見い出し、それが線になったときの快感がたまらない。全体に流れるハードボイルドな空気も良く、また登場するキャラクターもそれを演じる声優さんの力もあって非常に魅力的だ。純粋に彼らの動向が気になる。

ビジュアル面に関してだが、もとが1995年のゲームであるため、今となってはやっぱり古い。リマスターの際に現在でも通用するようにかなり手を入れたみたいだけど、時代を超えられたとは言えないんじゃないかな。完全に90年代の絵柄だ。追加されたCGとオリジナルのものが全然違っていて、追加CGが浮いていたのが気になった。一方、音楽に関しては古さを感じさせず、緊迫感を盛り上げてくれる音楽から日常の平和を感じさせてくれる音楽、酒場のジャズまでなんでもござれだ。特に酒場の音楽は気に入っている。

 

と、ここまで書いて基本的には面白かったゲームなんだけど、気に入らないところも少なくない。実は筆者はノベルゲームが好きでありながらも18禁のアダルトゲーム、いわゆるエロゲーが好きではない。そのため基本的にはコンソール機に発売される全年齢版しかプレイしないのだ。で、この『EVE burst error』も元はアダルトゲームだったと上述したわけだけど、このゲーム、全年齢版でも全然エロゲー臭が抜けていない。というか行為自体は映してないにせよ、事前と事後をがっつり映しているから、もう全然エロゲーなんだよね。だからいちいち主人公がヒロイン達に発情してそういう関係になるのがなんか萎える。無理やり感がすごい。まあジャンルを考えると的外れな批判なんだけどね(笑)。誰も見てないのはわかってるけど、電車内でプレイするのはちょっと恥ずかしかったぜ!

そして操作性、つまりゲーム部分に関してだが、これもちょっと辛い。がっつり90年代のコマンド総当たり式アドベンチャーで、始めのうちはその懐かしさから楽しくプレイできたんだけど、しばらくプレイしていると、やっぱりちょっとめんどくさいと思った。何度も“あたりの様子”というコマンドを押させられるのがかなりダルい(とはいえ製作側もそれはわかっているようでリマスター版にはヒント機能がある。このヒント機能をオンにすると目的地や選ぶべきコマンドが一目瞭然になるため、迷わずにエンディングまで行けた。でもそれじゃコマンド選択式の意味もないよな…)。

それからこのゲームの肝だと書いたシナリオにも不満があって、完成度が高く推理しがいがある事件が描かれているがゆえに、推理不可能に思える超展開はどうかと思った。真面目に推理した時間を返せ!

 

まとめ。

EVE burst error』は面白かったんだけど、筆者はあまり好きではないかな。特にラストはけっこう不満。そこまでの道程を楽しめたから良いっちゃ良いけどね。なんというか、操作性しかりキャラデザしかり、時代を超えるほどの名作とは思えなかった。ま、合わなかったんだろう。それと期待値が高すぎた。

というわけで『EVE burst error R』の私的な感想でした。読んでくれてありがとう!

 

↓オープニングがカッコよくて好き(^^)

EVE burst error R オープニング

EVE Burst error R

EVE Burst error R

 

 

『君の名は。』 ノベルゲー好きの感想。

日本映画史に残るほどの大ヒットをしている新海誠監督最新作『君の名は。』を観てきたので感想を書く。なお、既に公開から一か月以上たっているからネタバレしてもいいだろうということで、この記事は映画の核心部分といえるところまで触れる。もし未見の人がいたら、ここでお引き取りください。それでは。

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最初に簡潔に言うと、面白かった。数々の絶賛を耳にしてかなり高い期待値で観に行ったのだけど、期待以上の面白さでした。良い意味で期待を裏切られたよ。男女の身体が入れ替わる話、という前情報しか入れて行かなかったのが良かったのかもしれない。というのもこの映画、“入れ替わりもの”というある種のシチュエーションコメディとして見ると、実はそんなに斬新でもないし、特別面白いわけでもない。“男が女の身体に入って胸を揉む”とか、“女が男の身体でトイレに行くのに赤面する”なんてシーンは同じジャンルの他作品で飽きるくらい見たし、既視感の嵐である。しかし勘違いしないでほしい。斬新さがないからといって、つまらないと言ってるわけではない。言わばそれは王道であり、約束された確かな面白さがある。王道の良さと丁寧な作画・アニーメーションで描かれる新海誠作品ならではの映像美とが重なって、序盤からかなり良い。しかしそうは言っても、この辺まではそこまで絶賛するほどの出来でもない。筆者が気に入ったのはむしろ中盤以降のたたみかけるような物語展開だ。

 

この映画、途中からジャンルが変わる。入れ替わりコメディから、壮大な時間の流れを舞台とする時空超越ファンタジー(むしろSFか?)になる。これにたまげた。良い意味で予想を裏切られた。そして思った。これは俺が大好きなタイプの映画であると。思ったんだけどこの映画、なんかノベルゲームっぽくないだろうか? 別にオープニングがそれっぽいからとかそんなつもりで言っているわけではない。しかしこれらの要素を見てほしい。

  • 歴史ある神社が登場
  • 人里離れた田舎が舞台
  • 人格交換現象
  • 時空を超える祠
  • 時間軸を超越し、主人公が悲劇的な未来を変えて大団円に
  • 主人公が2人(マルチサイト)
  • トゥルーエンドっぽいあの感じ

2000年代くらいのノベルゲームっぽくない!? 『クロスチャンネル』とか『Never7』とか『シュタインズ・ゲート』っぽくない?ん?そうでもない?

そうですか…(´・ω・`) 

まあ自分で言っといてあまり似てない気もしてきたけども…。しかし!しかしだ!筆者は2000年代くらいのノベルゲームが好きだから、なんか似てるのが嬉しかったのだ!いや、もうぶっちゃけよう。infinityシリーズっぽいから好き!(笑)。別にパクリとか言ってるわけじゃなく、『Remember11』にそっくりなんだよ、この映画。んでもって筆者は『Remember11』が好きだから、そら『君の名は。』も好きだよねって話。なんならもう、『君の名は。』をノベルゲームにして、終盤の主人公たち頑張りラッシュを、選択肢に悩むことで自分も苦労したい。そして素晴らしい映像美の彗星を眺めるあの最高のシーンを、ゲームならではのカタルシスで味わいたかった。この中盤からの展開の、ノベルゲームのトゥルーエンドを見ているような爽快感は最高でした。特にヒロインのあの“走り慣れない女の子が全力疾走する感じ”は今敏監督の『千年女優』とか『パーフェクトブルー』っぽくて好きだ。あのシーン、絶対に濱洲英喜さんが原画やってると思うんだけど、違うかな?

 

その後、お互いの名前を忘れてしまってからの終盤の流れは少し長すぎたような気もしたけれど、それも許容範囲。ラストを盛り上げるためには良かったと思う。そしてこのラストが良かった。主人公たちが大人になってから突然、新海さんの過去作『秒速5センチメートル』っぽい雪の降る歩道橋とか、ジブリの『海がきこえる』みたいに駅ですれ違ったりする描写が出るから、ああ…やっぱ新海作品らしく切なく終わるのね…と思っていた。しかしなんとこの映画、ラストで2人は結ばれるんだよね。ああ、良かった。主人公の男の子がヒロインに話しかけようと勇気を振り絞るシーンで、新海さんの過去作でそれができなかったキャラクター達を見ていたから、もう思わず画面に向かって「がんばれ!」って声を出しそうになったよ(笑)。彼の作品を点ではなく線で追っている人にはたまらないラストでした。やっと前進したね。

 

まとめ。

というわけで凄く面白い映画でした。筆者はみんなが評価してるものを叩きたくなるキモい高二病の部分があるけど、今回はみんなと同じく絶賛です。今年は『シン・ゴジラ』といい『君の名は。』といい、東宝が凄いなあ…。なんか邦画の未来が明るい気がしてきた。そして年末のスターウォーズのスピンオフ『ローグ・ワン』も面白そうだし、2016年ベスト映画は決めるのが難しくなりそうだ。

というわけで、読んでくれてありがとう! あでぃおすぐらっしあ~。

『code_18』 クソゲーを紹介。

世の中にはクソゲーというものがある。悲しいことだが、どれだけ作り手側が情熱を持っていても、技術が志しに見合わなかったり、作り手側が面白いと思うことが世間の感性とズレているとクソゲーになってしまう。しかし許せないのは、作り手側が手を抜き、きちんと自分の仕事をこなさなかった結果に生まれるクソゲーだ。今回紹介するのはそんなどうしようもないクソゲー、『code_18(こーどえいてぃーん)』だ。

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『code_18』は2011年のクソゲーオブザイヤー据え置き部門次点という不名誉を持つ正真正銘のクソゲーだ。筆者はそういうゲームを遊んでみようとは全く思わない人間なのだが、このゲームは例外だった。このクソゲー、なんと筆者が大好きなテキストアドベンチャーゲームのシリーズ、infinityシリーズの最新作として発売されたのだ。

infinityシリーズとは打越鋼太郎さんと中澤工さんが手がけたテキストアドベンチャーゲーム群のことである。同じ時間を繰り返すループ世界を題材としたシリーズで、『Never7』『Ever17』『Remember11』という3作品がある。開発していたメーカーが倒産したことでこのシリーズは2005年に終焉を迎えるんだけど、それから6年の時間が経ち、とあるメーカーが版権を手に入れて続編を制作した。それが罪深き『code_18』である。

そういうわけで、このクソゲーにはシリーズを手掛けたメーカーや過去作のスタッフは関係していない(数名関わってるけどメインは関わってない)。生みの親のあずかり知らぬところで生まれ、シリーズを汚したのである。だから筆者もシリーズの作品だとは認めていないというか、そう思いたくない。

そもそもinfinityシリーズは伝統として、〜er 素数 〜 of infinity というタイトルがつけられていたのに(Never7 -the end of infinity- など)このゲームはこの法則を無視。タイトルからして作り手側のシリーズへの愛情のなさが露呈している。しかしシリーズのファンとしては、一応シリーズ最新作を騙っているからにはプレイしなければいけない気がした。このゲームはシリーズファンには避けては通れない いばらの道であり、凍てつく夜だったのである。クソゲーだと重々承知しながらもプレイする悲しさよ…。しかし懐には優しく、中古で250円でした(笑)。

 

で、このゲームの感想をつらつらと書こうと思う。クリアしたのは随分前なんだけどね(笑)。なお、このクソゲーのタイトルで検索してもらったら、面白おかしくそのクソさを紹介しているサイトはたくさんある。この記事は明らかにそれらに劣るし、恐ろしいことに筆者がプレイしたpsp版はXBOX360版よりはまだマシな出来なんだそうな。というわけで、クソさを笑いたい人は他のサイトをご覧ください。それでは…。

まずこのゲーム、何がダメって、システムがダメだ。音声とテキストが同期せず遅れて表示されるし、結構な頻度で処理落ち。また場面転換の際に曲と音声とテキストが止まる・誤字脱字の山など、基本からなってない。こんなの最後までプレイできねーよと頭を抱えていると、これらの不具合はメモリーカードへのメディアインストールで改善された。うん…まあ回避方法は用意されてるけどさ…pspのノベルゲームで処理落ちってどうよ。UMDが常に爆音を立てている。他のシリーズ作品はシステムがものすごく快適だしメディアインストールなんかしなくてよかったぞ…。

またこのゲーム、ヒロインが複数いるのに攻略の順番は最初から決まっている。つまり一本道、分岐なしである。まあ誰でもいいようなキャラしかいないから別にいいけど、選ぶことができないとは、もはやゲームですらない。ただ読むだけだ!

さらに、テキストを読んでいたら時系列が突然飛んだり、暗転なしで唐突に翌日になってたり、ボタンを押すと間髪入れずに場面転換してたり、なぜかキャラの視点が変わるときに画面全体がモザイクみたいな処理をされたりといろいろヤバい。マジでなんなんだよ…。

 

上述したように、基本的には笑えないタイプのクソさの宝庫。しかし、そこからさらに作り手側の手抜きは加速する。そして手を抜き過ぎた結果、爆笑シーンが生まれた。

厳格な家庭で育てられたヒロインが文化祭に家族を呼ぶシーンがある。シナリオではヒロインはメイド服を着てるはずなのに、なんと立ち絵は制服のまま。しかしシナリオはメイド服を着ている体裁のまま進む。いつもと同じ制服姿のヒロインに主人公が見惚れたりしてて、さすがに笑った。しかも立ち絵に留まらず、イベントCGでも制服のまま。なんでやねん…。立ち絵は百歩譲って許してやろう。ほんの少しの場面のために新しい立ち絵を用意するのは大変だしね(こんな擁護をさせるなバカ!)。しかしイベントCGくらいちゃんとメイド服姿にしてやれよ! そしてその制服姿のヒロインを見て、ハレンチな格好だと赤面するヒロインの祖父。全然ハレンチじゃねーよ。

また、ほんの少しの場面のために新しい立ち絵を用意するのは大変だと上述したけど、だからといってこのゲーム、汎用性の高い立ち絵をちゃんと用意しているわけでもない。何も考えずにメインヒロインの私服姿の立ち絵にバッグを持たせるから、メインヒロインは屋内にいても寝室にいてもずっとバッグを持っている。あのさあ…バカなの?

また、主人公がとあるヒロイン宅で夕食を食べるシーン。大家族に彼氏と勘違いされて居心地の悪い思いをするという定番のシーンなのだが、こちらも大家族なのに一人分しか立ち絵が用意されていないので、閑散とした食卓に大家族の声だけが響き渡る。軽いホラーだよ。あと、眼鏡を外してキスをするシーンで眼鏡が外れてなかった(笑)。

 

ここまで書いたことで、このゲームがどれだけヤバいか、どれだけ作り手にプロ意識がなかったのかがわかってもらえたと思う。しかしここで書いておきたいことは、ちゃんと仕事をした人もいるということ。クソゲーだったけど、声優さんの芝居は良かった。それに、筆者が知っている声優さんだけでも、石塚運昇さん、野中藍さん、小林沙苗さん、後藤邑子さんといった豪華なメンツが集まっている。こんなゲームに出演してくださったキャストたちに敬礼。それから音楽や主題歌もロックっぽくてカッコよかったかな。

あと肝心なシナリオに関してだけど、まあ面白くはないけど特別つまらなくもない。要はわざわざプレイすることもない感じだ。infinityシリーズは閉鎖空間からの脱出・プレイヤーを華麗に欺くトリックが売りのシリーズだったけど、この『code_18』は普通の(つまらない)ギャルゲーである。学園ものであり、シリーズのテーマであるループ要素も終盤まで絡んでこない。

読み終えて思ったことは、わざわざinfinityシリーズとして発売する必要はなかったんじゃないかということ。過去作のキャラとかが一切でてこないしね。しかしシナリオ以外のシステム面やグラフィックが相当に手抜きというか、ちゃんと仕事をしていないので、このゲームにおいてシナリオを叩く気にはなれない。まあ40点くらいのシナリオである。

 

というわけで『code_18』を紹介させていただきました。プレイするなよ?

このゲームの最も良かったところはプレイ時間が短かったことです。興味がわいた人は『Ever17』をプレイしましょう!

以上、読んでくれてありがとう。

 

つ~か、結局タイトルの意味がいまだに分からん…。